第37話 英文契約書を実際に書くー文章にする(2)
義務を負う者を主語にする―売主
第35回で、英文契約書を書くときは、「相手の義務」という視点からといいました。具体的には、前回も書いたように義務を負う当事者を文章の主語にし、義務を表す助動詞 ’shall’ を用います。
では早速、箇条書きの Sales Contract(第35回)を文章にしていきましょう。まず最初は商品です。
1.Product: Printing Machine RP-02
この条項の趣旨は「売主はこれこれの機械を買主に引き渡す義務を負う」ということです。
文章の主語は売主にするのですが、まず比較のために、買主を主語にして「権利」の側面に光を宛てて書いてみましょう。
The Buyer has the right to demand delivery of the Product.
次に「義務」から見て書いてみます。
The Seller shall deliver the Product.
こうして並べてみると、どっちがよいかは一目瞭然ですね。義務として書いた方がずっと単刀直入、かつ明確です。売主が義務を履行しなかったら、「約束したのに不履行をした」とすぐに言うことができます。(☚これがポイント)
次に進みましょう。
2.Quantity: One (1) set
「売主は商品1台を引き渡す義務を負う」ということですね。
The Seller shall deliver one (1) set of the Product.
3.Shipment: No later than 30 March 2024
引き渡し時期に関する売主の義務が書いてあります。
The Seller shall deliver the Product no later than 30 March 2024.
これで売主のすべきことがそれぞれ文章になりました。
義務を負う者を主語にする―買主
買主の義務は商品代金を払うことです。そのことについて、売主の場合と同じ要領で、それぞれの項目を文章にしてみましょう。
4.Price: Japanese Yen Five million (JPY 5,000,000) CFR Kobe (Incoterms 2020)
買主を主語にして、「支払う」という動詞に ’shall’ をつければできます。
The Buyer shall pay Japanese Yen Five million (JPY 5,000,000) CFR Kobe (Incoterms 2020).
次に支払いの方法は TT Remittance(電信送金)と書いてあります。
5.Payment: TT Remittance
The Buyer shall pay the price by TT remittance.
そして支払期日です。
6.Payment date: Within 10 days after the date of this Sales Contract
The Buyer shall pay the price within 10 days after the date of this Sales Contract.
これで箇条書きの契約が文章になりました。誰の義務なのか、どんな義務なのかということを見定めれば、文章にすることができます。(☚これがポイント)