第31話 一般条項(2)ー両当事者に等しく適用されるべきでしょうか?
ある一般条項が必要である、ということになったとして、ほかに検討のポイントはないでしょうか?
(3)一般条項の検討基準―自分に有利に書かれているか?
一般条項は「両当事者に等しく適用されるべきだ」と思い込んでいませんか?
確かに、「契約事項の修正は、両当事者の署名した書面による」という「修正条項(Amendment Clause)」なら、同じ内容が当事者の別なく適用されるべきでしょう。そのような条項は、たしかに少なからずあります。
しかし、中には「誰に有利に書かれるべきか」を検討すべき条項があります。
「解除条項」はその好例です。「一方当事者が本契約の何らかの違反(any breach)をしたときは、相手方は契約を解除することが出来る」という、一見そのままでよさそうな条項を例にとってみましょう。
どちらが多くの義務を負うか?
売買契約であれ、役務提供契約であれ、何かを提供する側の当事者は、単に対価を支払う側よりも、「数多くの」かつ「大小さまざまな」義務を負います。ということは「違反をしてしまう機会(?)」が多いのです。一所懸命やったけれども、小さなことの履行がちょっと遅れてしまう、といったことが起こり得るのです。
提供する側からいうと、そんなことで契約を解除されては困ります。
作成者に不利には作らない
つまり、見たところ両者に公平だからいいじゃないかと思える「何らかの違反(any breach)」を理由に解除を規定した条項は、現実には提供者に不利になり得るのです。
そこで提供者側に立って契約書を書くときは、解除可能な違反を「重大な義務(material obligation)」の違反に限定するとか、「重要な条項(material provision)」の違反に限って解除を認めるなどとします。
ときには一方的な解除権だけを規定したり、当事者ごとに異なる2通りの解除条項を作る、といったことも行われます。上の写真の条項は役務の提供を依頼した当事者の視点で書かれています。
一般条項とはいえ、自分に有利に書かれているかどうかを、常に確認しておくことが肝要です。(☚これがポイント)
第32話から第34話では契約書の作成を念頭に、一般条項を考えてみます。