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(27)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~家庭の雰囲気編~

 つづきですが、まとめです。
 

〈親子の緊急事態と、親の切なる願い〉

 
 私はこの「提案」で、5歳頃から…と具体的な年齢を書いています。
 その根拠は(2)あたりでもお話していますが、もちろんこれははっきりと「何歳がいい」と断言できるものではありません。
 人それぞれ、家庭それぞれだからです。
 それでも今リアルに子育てをしている親のひとりの実感として、
「就学前からほぼ動画中毒のような状態」「低学年から家ではずっとゲームをしている」「動画やゲームをめぐって親子ゲンカが絶えない」
 
という子やご家庭が身近にも少なくない数でいますし、新聞やニュース等の「子育て相談」でも、子どものデジタル漬けをなんとかしたい…というパパ・ママの悩みをよく目にします。
 
 これはもう、
 少なくない親子の「今そこにある危機」「切なる願い」「緊急事態」
 
…と言っても過言ではないのではないでしょうか。
 
 そうしてそれと同時に、
 「子どもに本好きになってほしい」「読解力や国語力をアップさせたい」
 …という声も、同じくらい聞くのです
 メディアを通しても聞こえますし、身近なパパ・ママ達のリアルな声としても日々感じています。
 
 ただの子育て中の本好き主婦の私ですが、本当に非力なことは重々承知のうえで、「デジタルに出会う前に本好きになれば、ちょっと変わるんじゃないかな?」…と、思わずにはいられません。

 なぜなら、我が家の娘2人は、特別優秀な子ではないからです。
 ごく普通の子どもです。
 これから先も、成績・学業という点ではどうなっていくかわかりません。
 それでも「デジタルの前に本を紹介した」というだけのことで、子どもが本を好きになり、親子のイライラが減りました。
 
 ただ、「順番を変えただけ」なんです。
 
 今現在、就学前の子どもを育てている方は、子どもの成長具合を見ながら継続的な図書館通いをお勧めしたいですし、小学1年生、2年生は今からでも図書館や書店を思う存分利用して「好きな本」を見つけてほしいと思います。
 
 

〈小学校低学年から始めれば、まだ可能性は十分〉

 
 少し前に、次女の友達の親…つまり低学年の子どもを持つママ友さんから、「既に動画やゲームに夢中になっている場合はどうしたらいいの?」と聞かれました。
 こうしたらいい、という正解はわかりません。
 でも、もし自分だったら…と真剣に考えました。
 
 例えば、まず子どもとしっかり話をします
  そして「ねえ、ゲームとか動画のおもしろさをあなたに伝えたのはパパやママでもあるんだけど、でも世の中には、本を読むっていう楽しさもあって、ゲームで『わ~おもしろい!』って感じるのとはまた違うおもしろさがあるんだ。それを一緒に見つけたいから、今度図書館に行ってみない?
 
 …みたいな感じでしょうか?
 
 子どもは感性と可能性のかたまりです。
 低学年なら、提案の仕方によってはまだまだスポンジのようにいろいろ吸収すると思います。
 
 もしもその時にすんなり「いいよ!」という反応がなくても、タイミングを見て図書館や古本屋でやっぱり10冊くらいは用意して、日常的に目につくところに置いておいたらいいと思います。
 最初は反応が薄くても、それはそれ。あきらめない。
 「家に選べるくらいたくさん本がある」という状況は、とにもかくにも必要不可欠です。
 
 私は、少なくとも小学校低学年までは、子ども向けのテレビ番組やアニメ、映画、読書で十分におうち時間を過ごせると思っています。
 
 ごく一般的な人気、評価のあるアニメ作品や映画は、それ単体で完成されたものですし、よほどチョイスを間違えなければデメリットもなく、楽しい時間が過ごせると思います(うまくいけば関連本にも興味を示してくれるかもしれません)。
 インターネットの動画を見ずとも十分に時間を過ごせますし、幼い年齢からネットにハマるデメリットを考えれば、親がそれらのソフト等を用意する手間やお金が多大なものだとは、私は思いません
 
 学校に通っている以上、「〇〇君はこんなゲームやってるんだって」「〇〇ちゃんはこんな動画を家で見てるんだって」という情報も得てくるでしょうが、低学年の場合はその影響は限定的。家庭の雰囲気や習慣のほうが本人に影響すると思います。
 
 産まれた時から本が嫌いな子はいません。目に入るもの、手に届くもので「いかに楽しむか」の天然の才能を持っているのが子ども。
 身近であることは、どんな大それたキッカケよりもそのもの(本)との縁結びになります。
 
 

〈思春期に入ると親のアドバイスを受け入れない可能性も…〉

 
 ただ、4年生くらいから高学年になってくると、問題の質が変わってくるかもしれません。
 
 現在6年生の長女の周辺状況にアンテナを張ってみると、ママ友さんの声として、「今までほとんど(漫画以外の)読書習慣がないけれど、今からでも本のおもしろさを伝えたい」「子どものテスト問題を見ていて、読解力や国語力の必要性を強く感じるようになった…」という話を聞きます。
 
 まだ幼児の雰囲気を引きずっている低学年とくらべて、この問題の難しいところは、小学5年生にもなると子ども本人が

(1)「思春期、反抗期の入口にあり、親のアドバイスを聞くことが面倒くさくなりはじめている」ことと、
(2)「自分なりの娯楽が確立されていて、ゲームや動画やSNSがおもしろいと既に知っている
 …という状況になっています。
 
 特に(2)の「既に知っている」という状況はかなりクセもので、本好きへのハードルをかなり上げていて親にいきなり「本(小説)も読んでみたら…」と言われても小言にしか聞こえないという可能性があります(このあたりは日ごろの親子関係に左右されるかもしれません)。
  

〈国語の成績アップならテスト対策のほうが早いと思ってしまう〉

 
 高学年になると、読書習慣がない子にとって「文章を読む」とは国語の授業の延長で、「面倒くさい」ことでしかなくなっている可能性も大いにあります。
 そうなってから読書を勧められても、子どもは自分に必要なものだという実感が湧きません。
 
 「国語の成績を上げるため」と言われても、それなら具体的なテスト対策をしたほうが早いですから、「読書を楽しむ」という習慣づけにはもう縁遠くなりつつあるのです。
 
 

〈どんな年齢でも〝家に本がある〟視覚的なアプローチは有効〉

 
 読書習慣のない高学年の子に対してどうアプローチしたらいいか…というテーマに関してはいずれまた詳しく書きたいと思いますが、確信を持って言えるのは「家に本がたくさんあること」がすべてのベースになる、ということ(クドくてすみません)。
 
 まず、我が子が興味を持ちそうな本を家にたくさん用意してみる、というのもひとつの手かもしれませんね。
 
 この年齢の子どもと、「ネットを控えて読書をしてみない?」「うん、わかった」とか、「この本おもしろいんだって、読んでみる?」「うん、わかった」というやりとりがあってから本を用意する…というやりとりは、ほぼファンタジーだと私は思います。
 
 まず、家にあるからこそふっと心に隙間が空いた時に手にとってみる。疲れて帰宅してソファに座った時、スマホやテレビのリモコンより先に何冊かの本が手に触れる(もしくは目に入る)…こういうシチュエーションの積み重ねが、「本との縁」だと私は思います。
 
 ちなみ電子書籍は、読書の筋力を育てている段階では、私はお勧めしません。
 デジタル図書館の普及によって本を読む子が増えた、というデータもあるようですが、いちばん大切なのは目の前に「紙の本」があること。このことは子どもを「読む気」にさせます
 
 なぜなら特に幼児期の子どもは「雑多な動きをする生き物」だからです。
 
 さっきまでカードゲームをしていたと思ったら、疲れてごろんと寝転がり、目についた本をパラパラとめくり始めたり、「お部屋のオモチャを片付けなさい!」と親に言われて、最初はやってみるけれど、面倒くさくなって本棚から絵本を取り出して読んでしまったり…。
 そんなふうにして、子どもは本になじんでいくものだと思います。
 
 ―いえ、子どもだけじゃないかもしれませんね。
 
 人間にとって視覚情報が大きいことは周知の事実ですが、「見える」ということは脳を刺激し、触れたい、知りたいという欲につながります。
 
 インターネットでの情報収集や電子書籍は、タイトルがわかっていたり、目的があって検索するには便利です。
 でも、実際に読むとしても実態としてそこにあるのは端末ですから、「本が好き」という心を育てる可能性に関しては未知数かなと思います。
 
 それに端末は、別のことに利用する時には本が読めません。それでもまだ「購入」した場合は便利なのかもしれませんが、デジタル図書館の場合、貸出期間が過ぎれば手元には残りません(これは一般貸出と同じですね)。
 
 ただ、電子書籍で「この本いいな」と思ったら、今度は紙の本を購入する…という使い方はいいかもしれませんね。
 
 

〈第二子以降はもともとの家庭の雰囲気に左右されるかも…〉

 
 さて、今「読書を勧めたい子」が第一子なのか、第二子以降なのか…という問題について。

 これは、だ~いぶ違うと思います。

 我が家の場合は長女が小学1年生の頃には読書習慣ができていて、ある程度の冊数が家にありましたから、4学年下の次女にとっては「物心ついたころにはお姉ちゃんがいつも本を読んでいた」という環境でした。ゲームをしたり動画を見る習慣が親にありませんから、自然と読書の筋力が鍛えられたという状況です(きょうだいでも性別や好みが違う場合は、新たに本を揃える必要はあると思います)。
 
 ただ、ご家庭によっては「下の子が5歳になり、本好きにさせたいのに上の子がゲームばかりやって困っている…」という場合もあると思います。
 また「夫が帰宅後、テレビでゲームをしたりスマホの動画をずっと見ていて子どもが一緒に見てしまう…」という悩みも聞くことがあります。
  
 何がダメとか、どちらが正しいとか言うつもりはありません。
 ただ、もし我が家だったら…と思うと、私なら「ゲームや動画を楽しみたい人」に「隣の部屋でやってくれる?」とお願いするかもしれません
 
 具体的には、
「この子にゲームや動画はまだ早いと思っている。でも、見れば興味をひかれて夢中になってしまうかもしれない。今は読書を好きになってほしくて真剣に取り組んでいる。読書のほうが優れているということではなく、順番として、ゲームや動画に夢中になってから読書の楽しさを教えるのは難しいので、協力してもらえないか」
 
 ―もし私なら、こう言うかもしれません。
 家族みんなの嗜好を尊重して仲良く過ごすのなら、あくまで丁寧な説明と、お願いが大事だと思います。
 
  つづきます。
 
 

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