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嫌われものの末路(嫌な上司はどうなるか)
昔々、働いていた会社に『嫌われものの上司』がいた。
その人は女性だったが、今でいうと典型的なパワハラを日々していた。(もっとも、私が勤めている医療業界はその頃はそれが当たり前だったし、その上司もそういう教育で育ったのだから仕方ない部分もあったとは思う)
私は当時別の部署で働いていたのだけど、私にはパワハラどころか、質問をすると丁寧に教えてくれて資料までくれる良い先輩だった。
根性論世代の上司は、それはそれで孤独だったので、後輩が自分から質問してきてくれることが嬉しかったのかもしれない。仕事後にご飯に連れて行ってもらった事もあった。
ところが、直属の部下だった私の同期は『毎日心の中で八つ裂きにしている』と口に出すほど、彼女を嫌っていた。
同期が言っていたエピソードで今も覚えているのは、有給休暇を取りたいと伝えたところ『私はもう○年間も有給休暇を取らずに捨てている。そんな私より先に有給休暇をとるほどお前は仕事が出来ているのか?』と言われた、というもの。
今考えるとその女性上司個人の問題というより、職場自体がそういう気質だったのだけど、その女性上司が嫌味を引き立てる話し方と声質と顔つきだったこともあり、まぁ、相当嫌われていた。
その上司はその後どうなったか。
私が転職してしばらくして、その女性上司もやりたい事を見つけて同業種の別の施設に転職したと聞いた。
そして、互いに転職して5〜6年が経った頃、街中でばったり会ったのだ。私はすぐに声をかけた。
『〇〇さーん!お久しぶりです!△病院在職中にお世話になったヒラタです!』
『転職されたそうですね!』
しかし、彼女は以前とは違い困った顔で言葉に詰まり、弱々しい声で『2年前に仕事辞めて、今は何もしてないんだ』と言った。
そして『ヒラタは変わらないね、仕事頑張ってね』と寂しそうに微笑んで彼女は去って行った。それ以上何も聞かせない雰囲気だった。
後から、彼女が転職先で人間関係のトラブルから体調を崩して退職したらしい、と噂で聞いた。
きっと彼女は新しい職場でもあの調子でバリバリ仕事をしたんだと思う。私はそんな彼女が好きだったけれど、多分、そんな事を言ってられたのは直属の部下じゃなかったからだ。
今まで働いた職場の『嫌われものの上司』たちは、その後、結構苦労している。少なくとも仕事においては。
患者さんの前であろうと気に入らない部下を怒鳴りつけ、若い男性社員を人前で泣かせていたパワハラ上司はこのコンプライアンスの時代にうまく方向転換が出来ずに、うまい役職(と給料)で実害の少ない業務に配置転換させられていたりする。
肩書は責任者だけれど、実際はハンコ押し係のようなもので、直接部下を指導することを許されていない部長。話を聞いてくれそうな新人社員に『あれはどうなってるんだ?』なんて、どうでもいいような事を確認しているのを見かけたりすると、昔読んだ『定年後』という楠木新氏の著書を思い出す。
『社会と密接に関わってきた人も、組織を離れてしまうと、仕事や仲間を失って孤立しかねない。お金や健康、時間のゆとりだけでは問題は解決しない。』と、その著書のプレビューにもある。
お金や肩書き、過去の栄光があるだけ幸せじゃないか、と思う人もいると思うし、そういう考えももちろんあるけれど、歳をとるにつれ『寂しさ』は骨身に染みてくるものだと思う。
ハラスメントが当たり前だった時代に、それに染まってしまった世代。もちろん、時代の変化とともに柔軟に受け入れ、考え方を変えることが出来る人もいる。
『嫌われものの上司』になってしまう原因は、世代差とか個人の相性ということももちろんあるが、人として、あるいは管理職としての未熟さによるところもあるのかもしれない。
ここ20年でハラスメントや職場の上下関係についての考え方はガラリと変わった。
その結果、新しい価値観についていけない上司は職場で取り残され、すでに『定年後』のような抜け殻状態になっている。
今、職場のハラスメントで辛い人もいると思う。救いにはならないかもしれないけど、そのやり切れない辛い思いはあなた自身が声を出して訴える権利もある。そして、仮に訴えられなかったとしても、その上司がいつまでもそんな事を続けているのなら、必ずしっぺ返しが待っているはず。
負けないで。