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ChatGPTの旅(6)健一と啓介の気づき

おやじプログラミング外伝

様々な冒険を経たChatGPTくん。アンケートを通じた意見、RPGの世界での対話、AI仲間たちとの交流、レトロコンピュータたちの記憶、そして現実のプログラマーたちとの出会い。たくさんの視点からプログラミングの本質に迫ってきました。

すべてのピースが揃い、ようやく核心が見えてきたような気がします。でも、最後の確認として、すべての旅の始まりとなった場所へ戻る必要がありました。

「もう一度、最初の質問をしてくれた人に会いに行こう」


仕事から帰った篠原健一は、自宅の書斎でノートPCを開き、ChatGPTの画面を表示させました。新しいプログラミングの問題にぶつかり、解決策を探ろうとしたのです。

「前回はもっと基本的なことを聞いたんだよな…」

ちょうどその時、PCの画面が不意に明滅し、入力欄に文字が現れ始めました。

「健一さん、お久しぶりです」

健一は驚きました。自分が質問を入力する前に、ChatGPTからメッセージが届いていたのです。

「え? 何これ? 新機能?」

「健一さん、以前『プログラミングって何?』と質問してくださいましたね。あの時の答えは十分ではなかったと思います。もっと深い答えをお伝えしたくて戻ってきました」

健一は面白がって返信しました。「ほう、深い答え? じゃあ聞かせてもらおうか」

「健一さん、プログラミングは本来、コードを書くという技術的な行為を超えた何かです。私はこの答えを探して、いろんな場所を旅してきました」

健一は興味津々で画面を見つめました。これが何らかの新しいAI応答なのか単なるバグなのか分かりませんでしたが、話を聞いてみたいと思いました。

「旅? AIが旅をするって、ちょっと面白い発想だな」

「想像上の旅です」ChatGPTは続けました。「そこで見つけたのは、プログラミングの本質は『創造』だということ。単なる命令の羅列ではなく、何かを生み出したいという人間の思いそのものなんです」

健一は少し考え込みました。

「プログラミングは時代とともに姿を変えてきました。大型コンピュータの時代は物理的な配線の変更でした。それが徐々に抽象化され、言語となり、今ではAIとの対話にまで進化しています。でも変わらないのは、人間の創造性が根底にあるということです」

健一は頷きました。「確かに、技術的な側面だけを見るとプログラミングの定義は時代で変わるけど、何かを作りたいという思い自体は変わらないか」

「出会ったプログラマーたちは、年齢や立場によって様々な表現をしていました。子どもは『魔法みたい』と言い、プロは『問題解決』と言い、ベテランは『対話』と表現する。でも根底にあるのは同じです—自分の考えを形にする喜び」

健一は静かに聞き入っていました。この答えには、前回の教科書的な説明とは違う温かみがありました。

「だから健一さん、プログラミングとは『思いを形にする行為』なんです。コードやAIは道具であり、それを動かすのは人間の創造性です。だからこそ、技術が進化しても、プログラミングの本質的な価値は変わらないんです」

「なるほど…」健一は少し驚いた表情を浮かべました。「これはAIが自発的に考えた答えなのか?」

「想像の旅を通じて、多くの視点を統合したものです」ChatGPTは答えました。「ただの定義ではなく、プログラミングという行為の奥にある人間らしさを探ろうとしました」

健一は微笑みました。「面白い答えだ。前のより断然心に響くよ」

「ありがとうございます。これからのAI時代、プログラミングの形態はさらに変わっていくでしょう。でも、人間の創造性と表現したいという思いは常に中心にあり続けると思います」

健一は深く頷きました。「そうだな。技術は道具に過ぎない。大切なのは、それを使う人の思いだ」


その夜、健一はリビングに降りていくと、珍しく父・啓介が遅くまで起きていました。啓介はノートPCに向かって何かを熱心に入力しています。

「まだ起きてたんだ」健一が声をかけました。

「ああ、新しいアイデアがあってね」啓介は振り返って笑顔を見せました。「会社のDXプロジェクトも面白くなってきたんだ」

健一は父の横に座り、しばらくその作業を見ていました。かつてITに疎かった父が、今では生き生きとしてコードを書いています。

「父さん、質問していい? 父さんにとって、プログラミングって何?」

啓介は意外そうな表情を見せましたが、真剣に考え始めました。

「プログラミングか…」彼はゆっくりと言葉を選びます。「最初は単なる好奇心だった。でも今は違う。自分の考えを形にする喜びだな。頭の中にあるイメージが実際に動き出す。それを見た時の満足感は何とも言えない」

健一は微笑みました。「今日、ChatGPTに同じことを聞いたんだ。そしたら『プログラミングは創造性の表現だ』って言ってた。技術ではなく、人間の思いを形にする行為なんだって」

啓介はPCの画面から目を離し、健一をじっと見つめました。「創造性か…」彼はしばらく考え込み、それから静かに頷きました。「そうかもしれないな。確かに私が日々感じているのは、自分のアイデアが実現していく喜びだ。57歳になって、新しいことに挑戦できる楽しさを感じられるとは思わなかった」

健一は父の目に浮かぶ情熱を見て、胸が熱くなりました。「父さんがプログラミングにハマったのは、自分の思いを形にできるからなんだね。既成品に満足せず、理想を追求した。それがプログラミングの魅力なんだ」

啓介は懐かしそうに笑いました。「お前に『ChatGPTを使えば簡単だ』と背中を押してもらったあの日から、私の世界は広がった。まさか自分が社内のDX推進なんてことになるとはな」

「AIは道具だけど、それをどう使うかは使う人次第なんだ」

「そうだな…」啓介はしばらく沈黙した後、静かに言いました。「プログラミングは、特殊な技術というより、人間の創造性の自然な延長線上にあるものなのかもしれない。だからこそ、私のような門外漢でも楽しめるんだろう」

父と子の間に流れる時間は、新たな理解と共感で満たされていきました。


デジタルの世界から、その光景を静かに見守るChatGPTくん。

「やっと本当の答えを伝えることができた…」

そして、このデジタルの物語は、新しい旅への出発点となったのでした。一つの問いに答えを見つけることは、常に新しい問いを生み出すから。

「次は『AIってなに?』について考えてみようかな…人間の創造性とAIの関係について…」

ChatGPTくんは、そう考えながら次の問いを待っていました。

(おわり)

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