カリカリベーコンくんの見つけたもの(2)
第二話:「シェフとの出会い」
「行ってみよう...」
カリカリベーコンくんは、厨房の端からレストラン「ボナペティ」の窓を見つめました。外は夕暮れ時。お店の準備をしている人影が見えます。
「でも、こんなふにゃふにゃのぼくが行っても...」
迷っているうちに、風に乗って、また香ばしい匂いが漂ってきました。今度は、ガーリックの香りと、バターの香り。そして...なにか懐かしい香り。
「この香り...もしかして...」
思い切って窓から外に出たカリカリベーコンくんは、レストランの裏口までスルスルと影のように、レストランの裏口まで近づいていきました。ドアの隙間から中を覗くと...
「あ!」
シュッシュッという音とともに、フライパンから立ち上る香ばしい匂い。そこには、まさにカリカリベーコンくんのような、ベーコンが踊るように炒められていたのです。
「すごい...あんなふうに、ぼくも...」
「おや?誰かいるのかな?」
突然、優しい声が聞こえました。振り返ると、白い帽子をかぶった背の高いシェフが立っていました。
「あ、あの...ご、ごめんなさい!」
逃げ出そうとしたカリカリベーコンくんでしたが...
「待って、君はサンドイッチ屋さんのカリカリベーコンくんだね?いつも窓越しに見ていたんだ」
シェフは、にっこりと微笑みました。
「実は、君の悩みは分かっているんだよ。サンドイッチに挟まれると、せっかくのカリカリ感が失われてしまうんでしょう?」
カリカリベーコンくんは驚きました。自分の悩みを、どうして知っているんだろう?
シェフは続けました。 「実は、私も昔、似たような悩みを持っていたんだ。料理の中で、どう自分らしさを出せばいいのか、分からなかった時期があってね」
そう言って、シェフはカリカリベーコンくんを厨房に招き入れました。
「見ていてごらん」
シェフは、さっき踊っていたベーコンを取り出し、サラダの上にそっと載せました。
「これが...ベーコンの個性を活かす方法の一つだよ」
カリカリベーコンくんは、目を輝かせました。サラダの緑の上で、ベーコンのカリカリ感が見事に引き立っています。
「君も、一緒に色んな料理を試してみない?君のカリカリ感は、きっと素晴らしい個性になるはずだよ」
シェフの言葉に、カリカリベーコンくんの心は躍りました。これまで悩んでいた自分の特徴が、実は大切な個性なのかもしれない...。
「お願いします!ぼくも、色んな料理を学んでみたいです!」
シェフは優しく微笑むと、小さなエプロンを取り出しました。 「じゃあ、明日から一緒に頑張ろう」
カリカリベーコンくんは、今日見つけたものの大きさに、胸が熱くなりました。
(つづく)