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にんじんくんとまちのよる
まだまだ寒い冬のまち。
路地裏ににんじんくんが住んでいました。
ある日、にんじんくんが道ばたで空を見上げていると、
トコトコと猫さんが近づいてきました。
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「わぁ!食べられちゃう!」
にんじんくんは、びっくりして逃げ出してしまいました。
だって、にんじんは猫さんに
とても美味しそうに見えるはずだもの。
その夜、コンビニの明かりの下で、
にんじんくんは考えました。
「あの時、逃げ出しちゃったけど、
もしかしたら猫さんは、
ぼくの香りが好きで、
仲良くなりたかっただけかもしれないな...」
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静かな夜のコンビニに、
にんじんくんは入っていきました。
キラキラ光るペットボトルの並ぶ棚の前で立ち止まります。
「今日は水にしようかな、お茶にしようかな...」
悩みながら、にんじんくんはふと考えこみました。
「ぼくたちにんじんって、
いつも土からお水をもらうって決まってるわけじゃないのかな。
このまちには、このまちなりの
新しい生き方があるのかもしれない...」
レジに並ぶと、
目の前でOLさんがサラダを買っていきました。
「あ、あのサラダの中にも、
ぼくの仲間がいるかもしれないな。
まちで生きるにんじんの
新しいカタチなんだ...」
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その夜、にんじんくんは
少し優しい気持ちで眠りについたのでした。
おしまい
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