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やさいたちのきぶん

冷蔵庫の中で、
ジャガイモくんは少し困った顔をしていました。
「実は、今日はカレーの気分じゃないんだ...」

すると横で、
タマネギさんが大きなため息をつきました。
「私なんて、今日こそカレーになりたいのに、
サラダ用に取り分けられちゃったのよ」

その言葉を聞いていたにんじんちゃんは、
嬉しそうに踊りながら言いました。
「私ね、今日はすっごくカレーの気分なの!
スパイスの香りに包まれて、
トロトロになりたいな♪」

ジャガイモくんとタマネギさんは顔を見合わせました。
「ねえ、僕たち...入れ替わってみない?」
「まあ!それ、いいアイディアね!」

お母さんが電話に出ているすきに、
ジャガイモくんはこっそりとサラダの材料の方へ、
タマネギさんはカレーの具材の方へ転がっていきました。

その日の夕方、
六歳のケンタくんは不思議な気持ちでカレーを見つめていました。
「あれ?なんか今日のカレー、タマネギがいっぱいだな...」

最初は「ジャガイモがよかったな」と
お母さんに言おうと思ったケンタですが、
なぜかふと立ち止まりました。
カレーから立ち上る湯気の向こうで、
タマネギがとても幸せそうに
溶けているような気がしたのです。

サラダボウルの中では、
ジャガイモが新鮮なレタスやトマトと一緒に、
さっぱりとした表情を見せていました。
にんじんちゃんは約束通りカレーの中で、
スパイスたちと楽しそうに踊っています。

「ねえ、お母さん」とケンタは言いました。
「今日のカレーとサラダ、なんかすっごく美味しそう!
野菜たち、みんな楽しそうだね」

お母さんは不思議そうな顔をしましたが、
ケンタの言葉を聞いて嬉しそうに微笑みました。

その日の夕食は、いつもより少し特別な味がしました。
それは、みんながそれぞれの「ちょうどいい場所」で
輝いていたからかもしれません。

おしまい


いかがでしたでしょうか?

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