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誰の役目?
社会絵本というジャンルがあります。"戦争"、”事故”、"災害"など、語り継いでいくために必要な絵本です。
「けんちゃんのもみの木」(美谷島邦子/いせひでこ、BL出版)もその1冊で、「日航機墜落事故」から35年を振り返って、お母さま(美谷島さん)の気持ちを具現化した絵本です。
保育園や幼稚園、小学校で読み聞かせ会などがありますが、その際この社会絵本は外されることが多いです。
戦争などショッキングな出来事に深く傷つく子どもたちが少なからずおり、そばにケアしてあげるべき大人が必要だからです。
となると、この社会絵本は家庭で読み聞かせがいいですね!となりますが、それもまたどうなんだろうと思うところがあります。
そもそも普段から読み聞かせをしている家庭がどの程度あるのかが疑問ですし、伝えなければならないと感じている親御さんたちがどの程度いるのかも分かりません。
図書館にもありますが、いざ目の前にして、借りるかどうかも分かりません・・。
その状態が延々と続いたら・・・、社会絵本で語り継がれる必要がある事実がいつか風化してしまうような危険な予感がしてなりません。
共働き世帯がどんどん増えている状況で、家庭での読み聞かせが危うい状況だとしたら・・・読み聞かせ会でも社会絵本を取り上げていかなければいけないのかもしれません。
ただ、本来読み聞かせ会の趣旨は「子どもに絵本の楽しさを伝えたい」が源流でしょうから。絵本の楽しさを伝えられる絵本もセットでなければならないでしょう。
読み聞かせ会の選書って難しいですね・・。
もう1点危惧していることがあります。
親御さんが良質な絵本や勉強環境を積極的に整えている家庭と、子どもの日々の生活環境に無関心な家庭では子どもの育ちに大きな差が生まれてしまうということです。
これについては、「教育格差」(松岡亮二、ちくま新書)をご参照していただければと思います。
小学校就学以前から格差は存在するというかなりショッキングな内容です。しかし、それを事実として受け止めなければ、何も解決しないというのも事実。
「けんちゃんのもみの木」を読み聞かせで取り上げるかどうか悩み始めたら、教育格差にたどり着いてしまいました・・・笑
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