#5 【論文要約】Making futures that matter -大切な未来の作り方-
Abstract
Future making (未来づくり?)とは起こりうる未来を理解し、評価や交渉を通じて好ましい未来を形成していく作業である。これまではFace-to-Faceでの交流によるところの多かったFuture makingの実践も、近年ではオンライン化されることが多くなっている。しかし、”オフライン”の未来を”オンライン”で組織化された場で議論することは「経験的な知識」の共有に欠けることが指摘される。「経験的知識」の欠如はオンラインでのFuture makingを困難にし、また関連する専門知識を除外しやすくしている。
本論文を通じて著者らはオンラインでのFuture makingを理論化し、そのダイナミクスと発生する課題を明らかにし、改善策を提示している。Future makingを「探究」の一形態として概念化し、3つの改善策(①Solicit feedback(フィードバックを求める) ②juxtapose alternatives(代替案の並列)③change medium (メディアの変更) )により、遠隔地の異質な参加者のオンライン参加を維持し、また関連するオフラインの場所や人々、材料などをオンラインのFuture makingに取り入れることで、経験的知識の欠如を補うことができるとしている。
3つの改善策 Remedial Actions
未来づくり=「探究」「問いかけ」と捉えたときに、3つの改善策が同定されるとしている。
1) Solicit Feedback フィードバックを求める
1つ目の改善策は、コンピューターの外の世界から意図的にフィードバックを求めること。
2) Juxtapose alternatives 代替案の提示
3) Change medium メディアの変更
感想
現代社会は地球温暖化、ウクライナ危機、パンデミックへの対応など依然として多くの課題を解決していかなければならない。またコロナ禍を経て、多くの企業がリモートワークを許可し、今後もこの変化は継続していくことだろう。
オンラインとオフライン(対面)の議論で「質」は変化するのか?という問いについては、多くの人がそれぞれの答えを持っていると思う。しかし、本論文で提示されているように、オンラインの議論は「経験的知識」が薄くなるという短所がある。やはり、オンラインでは対面ならではの伝わる熱量・感情・信頼などがどうしても希薄になってしまう。
それらを補う方法として3つの改善策を提示している。今後のオンラインでの議論が並列する中では、このように意識的にオンラインの短所を埋めるような取り組みがマネージャーや組織のメンバーひとりひとりに求められてくるように思える。
英語表現など
英単語
juxtapose [dʒˈʌkstəpòʊz]:to put things together, especially things that are not normally together, in order to compare them or to make something new.
The exhibition juxtaposes Goho's drawings with some works of other impressionists.
inward-looking: people who are more interested in themselves than in other people -used to show disapproval
A inward-looking society may be vulnerable to the current rapid changing world.
英語例文
このエッセイでは、経験的知識の欠如が、オンラインでの未来作りを難しくし、関連する専門知識を排除しやすいものにしていると論じています。
In this essay, we argue that the lack of experiential knowledge makes future making online difficult to organize and vulnerable to exclude relevant expertise.