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なぜロゴが必要なのか?

こんにちは、デザイン事務所サンポノの江口です。

突然ですが、皆さんはロゴやWebサイトが、なぜ必要なのかを説明できますか?
当たり前に存在しているので、デザイナーやディレクターでも説明ができない人は多いのではないでしょうか。
まぁ、それはまずいのですが、インハウスデザイナーがいる事業会社ではビジネスサイドの方々がディレクション(方向性を決めて、指示を出すこと)をしていることが多いのに、彼らも説明できないままディレクションをしているケースが多いです。

サンポノではブランディングのご依頼をいただくときに、デザインの認識を共通のものにするために、デザインセミナーを受けていただくことがあるのですが、制作物の存在理由もこの時に説明しています。
今回はその内容を記事にしようと思いました。


【第一回目:ロゴ】
初回は事業デザインの基本になる「ロゴ」について書きます(続けるかは不明ですが、とりあえず初回としました)。

なぜロゴを作るのか?

当たり前に存在しすぎて、考えたことがない人が多いかもしれません。
もしくは、「ブランドイメージを訴求するため」と考えている人がいるかもしれません。
けれど、それは妥当なのでしょうか?
仮に、商品が売れたとして、それはロゴだけの成果と呼ぶことは難しいでしょう。
ロゴを作ったとして、ブランドイメージを訴求できているのかも怪しいですし、そうかと言って、アンケートを取って制作していては品質の低いロゴが出来上がってしまいます。
事実、世の中にあるロゴを見ていると、事業内容とロゴデザインが噛み合っていないものも多く、さらに、使い勝手の悪いロゴや耐用年数の短い強度の弱いロゴが溢れています。
一方で、何年もの使用に耐えられる強さを持っていたり、展開がしやすく、求心力の高いロゴもあります。
サンポノで作るロゴは、こういったことを考えて制作しています。

【デザインは投資する価値があるのか?】
ちなみに、2018年に経済産業省から発表された「デザイン経営宣言」でも言われているように、デザインへの投資利益は4倍であったり、デザインを重視している会社とそうでない会社の株価の成長率は、10年間で約2倍も差が生まれてしまうことが報告されています。
そういう意味でも、デザインを重視せずに安価でロゴを手に入れるのは避けた方がいいでしょう。
ロゴがどういうものかを理解した上で制作すれば、ちゃんと投資するだけの意味がある強力なツールになります。
前置きが長くなりましたが、それではロゴについて説明いたします。

経済産業省『「デザイン経営」宣言』より引用。

【ロゴの呼び方】
まず、呼び方ですが、ロゴの絵柄の部分はシンボルマーク(Symbol)と呼び、文字の部分をロゴタイプ(Logotype)と呼びます。そして、これらを合わせたものをロゴ(Logo)と呼びます。
英語では、これらを区別せずにすべて「Logo」と呼ぶこともあります。

【なぜロゴが必要なのか?】
ロゴを作る理由。それは、会社や事業が継続していく中で、当初の理念を思い出しやすくし、枝分かれしても散漫にならずに、求心力のある強大な集合体となることができるからです。

しっかりと考え抜いてロゴを作ることで、将来的に事業や商品が増えたり、会社がグループ会社に枝分かれしたとしても、印象がバラバラにならずに済みます。むしろ、長期的に印象のコントロールができるので、それぞれが相乗効果を発揮して、求心力が強大になります。
これが分からずに、目先のテーマやコンセプトに囚われてロゴを作ったり、技術力がないデザイナーがロゴを作ると、耐用年数が短く、使い勝手も悪いロゴが出来上がってしまいます。
いいロゴというのは、ブランドの認知度が上がり、長い年月を経ても廃れることはありません。例えば、コカコーラやロールスロイスのように、時代が移り変わっていく中で、少しずつ手直しをすることで、今まで積み重ねてきたブランドイメージを損なわずに、さらに高い次元に押し上げることもできるのです。

次節では手前味噌ですが、独立前や独立後に私が制作したロゴを例に、ロゴを制作するときの考え方や展開例を説明します(独立前に制作したものは、私以外の人も制作に加わっています)。


【ロゴの事例紹介】
1:小さな組織が集まって1つの大きな組織を作っている場合。
以下のロゴは自然栽培をしている(もしくはこれから始めようとしている)障害者福祉施設が集まって事業をしている「自然栽培パーティ」という社団法人のロゴです。

全国の障害者福祉施設が集まっているので、それぞれの理念や活動は基本的にバラバラです。共通しているのは「自然栽培を障害者の収益にしたい」です。この活動は行政や企業にも、その理念に共感して協力してもらう必要があります。加えて、野菜を購入するユーザーにも安心感をもってもらう必要があります。つまり、バラバラのものを散漫にならないようにまとめ上げ、堅苦しくならずに真面目さと安心感を伝えるデザイン力が求められます。

そこで、シンボルマークは家紋をイメージしながら、中に入る絵柄を各施設によって替えられる仕組みをデザインしました。全体を表す自然栽培パーティのシンボルマークを空洞にすることで、ロゴタイプをシンボルの中に入れるパターンも可能にしています。
こうすることで、自分の施設・他の施設・これらが集まって運営されている組織に親和性が生まれ、実際に集まってイベントを開催した時などには、強い求心力が生まれてユーザーを惹きつけてくれます。
事実、当初は5施設で始まった組織が、一年間で50を超える大所帯となりました。その後、私は独立してしまったのでこの案件からは離れましたが、今ではさらに参加施設は増えていることでしょう。


2:1つの大きな事業体が複数の事業をしている場合。
次の事例は「里山まるごとホテル」です。これは株式会社百笑の暮らしが運営している事業です。茅葺き屋根のレストランを中心として、地域の施設と連携して提供するサービスを、ひとつのホテルとして見立てて事業をしています。

各施設の場所が離れていたり、他の施設との連携もあるので「里山まるごとホテル」のロゴだけでは、その場所が何の施設なのか判別できなかったり、誤解を生じさせる可能性があります。
そこで、事業の種類を四つに分け、各事業にまつわる漢字一文字をシンボルの中に入れました。こうすると、施設同士が離れ離れでも、そこが何の施設か判別しやすくなるとともに、里山まるごとホテルのイメージを脳裏に焼き付かせやすくなります。もちろん、小売商品のパッケージにもこの作用は効果的にはたらきます。
また、この事例では、連携をとっている施設を里山まるごとホテルのホームページや、彼らが発行している観光マップに掲載して、連携企業のPRもしています。地方創生では地域同士の摩擦が生まれやすいのですが、こういうところもケアしており、ロゴの仕組みでも大切にしています。
そして、この事例は私の代表作ともなったように、世界三代デザイン賞のRed Dot Awardを受賞したり、新規事業を開始してもユーザーからの評価は高く、コロナ禍でも営業を続けられています。


3:一つの事業が、複数の派生した商品を提供している場合。
最後にお見せする事例は「Pollet」です。既に事業内容自体が変わってしまっていますが、当時を振り返り、書かせていただきます。
私が関わった当時は、一種類のプリペイドカードを発行できる事業としてサービスを提供しており、種類を増やして二種類のプリペイドカードを発行できるように事業を進めている最中でした。まだ起業してから間もない会社でしたので、認知度もあまりありません。さらに、これから事業がどのように変化するかも定かではありませんでした。

そこで、認知度を高めるため、イメージを刷り込ませやすくするように、シンプルで汎用性のあるロゴをデザインしました。シンプルなのですが、既存のフォントではなく、ロゴとして洗練さもありながら、使いやすくなるように、全ての文字を私がイチから制作しています(MILLIONの文字は既存フォントを調整しながら制作しています)。
数年後に事業自体に若干の変更がありましたが、当時制作したロゴで違和感なく使用できているのは、この時にしっかりとロゴをデザインしたためです。


【最後に】
いかがでしょうか?
少し駆け足になってしまいましたが、一口にロゴと言っても、前提となる事業やデザインされる過程が違えば、ロゴに求められる内容も異なってくることがお分かりいただけたでしょうか。
そして、これらを可能にするのが、ディレクターやデザイナーの知識と技量なのです。
安価にデザインを作ることもできるサービスが世の中にはありますが、残念ながら、それらのサービスを使って高品質なロゴは提供されないでしょう。
最初に低品質なロゴを作ってしまって事業が経過してしまえば、刷り込まれたイメージを刷新していくのにも、コストが増えてしまいます。
無駄なコストを減らす一方で、使いやすく、求心力のあるロゴを早い段階で作ることは、事業発展に大きく貢献します。
もしも、お困りごとがあれば、サンポノまでご相談ください。

それでは、また次回にお会いしましょう。


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