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桂離宮 《2》

桂離宮は、亭主が客人を招いて、風雅の遊びに興じるために造られた場だ。
その意味では、何ら特別な意味づけ(例えば、宗教上の儀式であるとか)を与えられた施設ではない。
ただし、庭園と建築物の設えに発注者が籠めた美意識が尋常でなく、また、施工に当たって、美意識の具現化の徹底ぶりが常軌を逸するレベルまで高められているせいで、他とは一線を画する存在になり得ている。
桂離宮の美を貫く中心的な趣味は、佗茶である。
これには時代の影響が色濃く反映されていると思う。
庭園のあちらこちらに点在する茶屋は、遠目にはまるで寂れた田舎家であり、宮殿や城郭が持つ豪華さとは正反対の風情を醸し出している。

御幸門(ヘッダー写真はその屋根)を過ぎ、最初に現れる建物は外腰掛
「茶会が始まるまで、ここで少しお休みください」
と促されて座る、肩肘張らないスペースだ。
吹きさらしのため、薩摩藩から寄進されたという蘇鉄の緑が、目に鮮やかに跳び込んでくる。
それでいて、これから向かおうとする庭園や茶屋への視界は、木々の枝葉や地面の起伏によって巧妙に遮られ、客人の期待感を密やかに盛り上げる。
茅葺き屋根の仕上げは、ご覧のとおり、寸分の隙もない美しさ。

そして、桂離宮の魅力は、何にも増して足元にある。

手間と時間を費やして収集したに違いない、さまざまな形・色・模様・サイズの敷石が、完璧に組み合わされたパズルのピースのように、この大規模な回遊式庭園を始まりから終わりまで彩っている。

要所要所に配置された燈籠や蹲(つくばい)の造形にも、心くすぐられる。

(訪問日:2022年10月2日)


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