興聖寺
興聖寺(コウショウジ)
京阪電車の宇治駅を降りるとすぐ目の前に
流れているのが宇治川、淀川水系濠川分流の
一級河川であり、私の住むエリアでは淀川と
名称が変わる琵琶湖を源とする河川となる。
この宇治川に掛かる宇治橋を渡ると平等院へ
通ずる参道があり、この道には常に茶の香り
が辺りに漂い気持ちが良いのである。
今回はこの宇治橋を渡らずに宇治川を右手に
してそのまま道を突き進んでいく。その先に
『興聖寺』と掘られた大きな石碑が現れる。
横には『曹洞宗高祖道元禅師初開之道場』の
文字が彫られた石柱が見える。
十年程前に宇治のメインストリートを外れて
街を散策していた時に参拝した事があるのが
今回紹介させて頂く『興聖寺』である。
その時、いつかまた訪れたいと思っていて、
二度目の参拝となる。
琴坂(コトザカ)
宇治川へと流れ込む山の水が集まり、この坂では
川のせせらぎの音がずっと止まない事から、琴坂
の名称で呼ばれている。冷んやりとしたこの参道
は、なだらかな坂道になっており、左右の側溝を
大雨がもたらした流れが水音を響かせて、清涼感
もあり、とても気持ちがよい。
山門 (サンモン)
この山門を初めて見た時に何処かで見た様な
懐かしい様な気がしたのであるが、この一見
変わった山門は、龍宮造(リュウグウヅクリ)
と呼ばれるものとなる。この姿を過去に見た
と思ったのは浦島太郎の竜宮城の本の中の絵
だったのである。
法堂 (ハットウ)
堂内には本尊釈迦牟尼仏を中心に両側に文殊菩薩、普賢菩薩、達磨大師、大権修理菩薩、十六羅漢が
それぞれに祀られている。天井からは絢爛豪華な
飾りが吊られている。
廊下は鶯張(ウグイスバリ)がなされ、歩くと音
が鳴る仕組みで、外部からの侵入者対策となる。
一般に寺社仏閣は撮影禁止の表示がそこここにと
貼られていたりするものだが、このお寺はそんな
ものは一切なく有難く撮影させていただいた。
宝物殿(ホウモツデン)
展示のされ方が、この空間はモダンな雰囲気に
仕上がっている。古き良きものは残されながら
新たな空間も取り入れられていて良い。
中心にある観音像は、源氏物語の宇治十帖の
『手習』の古跡に祀られた事から『手習観音』
(テナライカンノン)と呼ばれているもの。
三面大黒天(サンメンダイコクテン)
興聖寺に祀られている『三面大黒天』は中央には
大黒天、左右に毘沙門天、弁才天の三面を備えた
他では見られない大黒天となっている。
往昔、伝教大師最澄様が比叡山を開かれたおりに
大黒天が出現して守護を誓われましたが、最澄は
比叡山三千坊の修行者を供養したいと更に祈った
ところ、三天合体の姿でその願いを満たそうとし
三面の姿に変化されたと伝えられているもの。
この興聖寺でも同じく修行者の福徳を守護する神
として憎堂の近くに祀られているもの。
僧堂 (ソウドウ)
修行僧が坐禅をするほか、寝起きと食事をする
生活の基本となる場所がこの空間となる。
この興聖寺は、道元禅師が中国から帰朝した後
道場として開いた禅宗寺院となる。現在日本に
曹洞宗の道場は14,000以上もある中、最古
の道場がこことなる。
このお寺の中ですれ違う人は本当にまばらであり
海外からの観光客10人程であった。日本人の姿
はなかった。以前にもこの僧堂の中を巡りながら
ここの情景に感動したのを思い出したのだった。
丸座布団が可愛い。ちなみにこの床はツルツルで
何回も滑ってズッこけそうになった。
中庭
大書院と庭園
こんな広い空間を独占状態でき、贅沢な時間。
釘隠の紋がとても面白く、白壁にも薄っすらと
パール仕立てのものが見られた。色々と調べて
みたが、紋様の正体は分からずである。
開梆(カイパン)
魚板(ギョバン)
見たままに木魚の原型と云われるものである。
昼夜目を閉じる事のない魚は、不眠不休を表し
『魚のように昼夜の別なく寝る間を惜しんで、
日夜修行に励むように』という修行僧への戒め
とし、開梆(カイパン)を打つというのが由来。
ただ、この魚型のこれは食事の時間を示す時に
鳴らされるものも多く、これが鳴ると修行僧の
目が輝くものでもある。叩かれすぎてこの魚は
お腹が凹んでしまっている。ちと、可哀想。
境内
このお寺は左右対称のシンメトリーに作られて
おり、そのせいかとても気持ちが落ち着く。
鐘楼(ショウロウ)
慶安4年(1651年)に建立されたもので
『興聖寺の晩鐘』と呼ばれ『宇治十二景』の
ひとつに数えられる。宇治市指定有形文化財。
瓦と鬼瓦
名称 佛德山興聖寶林禪寺
(ブットクサンコウショウホウリンゼンジ)
興聖寺(コウショウジ)
所在 〒611-0021
京都府宇治市宇治山田27-1
山号 佛德山(ブットクサン)
宗派 曹洞宗(ソウトウシュウ)
本尊 釈迦三尊
創建 天福元年(1233年)
開山 道元
中興 慶安2年(1649年)
文財 絹本著色釈迦三尊十六善神像 1幅
絹本著色釈迦三尊十六羅漢像 1幅
絹本著色十六羅漢像
賓度羅跋羅惰闍尊者 1幅
(府指定有形文化財)
淀藩主永井家墓所(府指定史跡)
興聖寺庭園及び琴坂(府指定名勝)
備考 京都府宇治市宇治山田の曹洞宗の寺院
日本曹洞宗最初の寺院
道元の興聖宝林寺を建立に始まる
参道は「琴坂」と称され、紅葉の名所
宇治十二景「春岸の山吹」「興聖の晩鐘」
京都府興聖寺文化財環境保全地区
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