【毎週ショートショートnote】お題:沈む寺~財宝の価値
江戸時代、幕府の財政を管理する重要な役割を担っていた村があった。その村には、満月の夜になると姿を現すという不思議な寺がある。
寺には「最も高価な財宝」が隠されているとの噂があったが、その寺に入ることは村の掟で固く禁じられていた。
寺は浜辺の干潟の上に建っており、年に1回の引き潮の時にしか姿を見せない。
村のある若者が、誘惑と好奇心を抑えられなくなり、満月の光に照らされた寺へと足を踏み入れる。
寺の中は薄暗く、湿気が漂っていた。宝物庫には、小さな箱が置かれていた。綺麗な彫刻の箱で、開けようとすると折り紙の様に形を変える。正しい手順を踏まないと開けられない様だ。
若者が箱の謎を解こうとしていると、いつのまにか海水が満ち始めた。
気付いた若者が助けを求める声も届かず、満月の光の下、寺と若者はゆっくりと水没していった。
帰ってこない若者の無事を祈る村人たちの前に、村長が現れ
「信用を失うと村には戻れない」と告げて去って行った。
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