発信者情報開示命令手続の機能不全?

以前、発信者情報開示命令が始まった頃、下記の記事を書いた。

(基本的な話)発信者情報開示命令申立てを検討する場合のメモ①

(基本的な話)発信者情報開示命令申立てを検討する場合のメモ②

その後、発信者情報開示命令は弁護士・裁判所の絶え間ない工夫により、訴訟を提起するしかない時代よりも、はるかに使い勝手が上がっているのは事実である。
(IPアドレスを入手した後に発信者情報開示請求訴訟を提起していた時代からすれば、開示命令手続のトラックに載せればひとまず開示まで進んでいくのは隔世の感がある・・・。)

しかし、発信者情報開示手続が広まり手続数も激増したことから、一部のコンテンツプロバイダがパンク気味となっており、手続遂行に支障が生じているのが現状である。このような事態を重く見たのか、第二東京弁護士会も下記のようなアンケートを開始したようである。

※アンケートの締め切りは10月25日なので、まだ回答していない方がいればぜひ。(回し者のような発言)

ただ、誤解を恐れずに言えば、一部のコンテンツプロバイダが手続の進行に非協力的なのは今に始まったことではないし、プロ責法が正当に運用されていたかもモニョモニョと言いたくなるのが正直なところである。
発信者情報開示手続については以前から『条文を適切に運用したらこうなるはずであるが、そうすると先に進まないのでやむを得ずこうしている』みたいな運用がなされていた時期もある(特に、コロナ禍で国際郵便の送付がままならなかった時期には、かなり異例な運用がなされていた。令和2年頃に発信者情報開示を取り扱っていた人は知っている運用であろうが、今は闇に葬り去られているし、特に話題にする弁護士もいなくなった)。取り扱う弁護士が増えたからこそ、「これは明らかにおかしいのでは」という声も増えたのだと思われる。

個人的な意見としては、「現在の運用」は明白に問題を抱えている部分があり、是正されるべきだとは思うのだが、それはそれとして、「現在の運用」の中で最も効率よく開示を受けられる方法は活用すべきであろう。

発信者情報開示を初めて取り扱う場合、相手方や裁判所から、きわめて不可解な指示を受けることがある(一例が、Xに対して開示を申し立てたときに指示される「上申書」の提出である。初めて聞いたら何の上申書を出すか意味不明であろうし、現に同期の弁護士等から毎回質問を受ける。)。それにどう対応すればよいかは、文章化しにくい部分があり、開示案件を多く取り扱っている弁護士に聞くしかない。この事態は非常に憂慮すべきだと思われるが、現状がそうなっているので何ともし難いのである。

発信者情報開示命令/仮処分の手続で謎の指示を受けた同業者がいたら、DM等で質問をいただければ、必要な範囲で回答しております(ちなみに、上記の「運用」についての説明は行うものの、その「運用」に追従するかは各自ご判断いただきたいと思っています)。なお、権利侵害の有無等にまで質問の範囲を広げるとキリがなくなるため、一応は、同業者からの手続に関する質問に限定させていただきます。

弁護士間ですら情報の非対称性が生じている現状は、いったい何なのだろうか・・・。


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