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発信者情報開示命令手続の機能不全?

以前、発信者情報開示命令が始まった頃、下記の記事を書いた。 (基本的な話)発信者情報開示命令申立てを検討する場合のメモ① (基本的な話)発信者情報開示命令申立てを検討する場合のメモ② その後、発信者情報開示命令は弁護士・裁判所の絶え間ない工夫により、訴訟を提起するしかない時代よりも、はるかに使い勝手が上がっているのは事実である。 (IPアドレスを入手した後に発信者情報開示請求訴訟を提起していた時代からすれば、開示命令手続のトラックに載せればひとまず開示まで進んでいくのは

    • 訴訟費用額確定処分のTIPS

      弁護士が依頼者からよく聞かれる質問第6位くらいに「訴訟して、弁護士費用を相手に負担させることはできますか?」というものがある(第1位から第5位は各自で決めてほしい)。 多くの弁護士は弁護士費用を敗訴者負担とする制度が日本にはないことを説明した上で、「でも訴状には「訴訟費用は被告の負担とする。」って書いてありますよ?」と問われると、「一応、訴訟費用についてはそうやって書くんですけど、これには弁護士費用は含まれないんです。あと、訴訟費用自体実際に請求したりされたりことはまずなく

      • 訴訟をしてもお金が回収できない?――財産開示手続の活用

        1.はじめに 弁護士として法律相談を受けていると、「それで、この訴訟は勝てますか」という相談を受けることは日常茶飯事である。 しかし、訴訟に勝てるか勝てないかという見通し自体も重要ではあるが、本当に相談者が知りたいのは、要は、訴訟した際に相手から金がとれるのかという点であることがほとんどだろう。お金の回収可能性は、売掛金、貸金、養育費、不貞慰謝料、残業代請求、インターネットの誹謗中傷事件などなど、あらゆる場面で問題となる。 民事訴訟を提起して「被告は原告に対し、金●●万円

        • (基本的な話)発信者情報開示命令申立てを検討する場合のメモ②

          ※令和5年4月29日改稿 ※令和5年8月23日追記 新法が令和4年10月に施行され約7か月が経過する。 開示命令制度によって、今まで発信者情報開示請求訴訟によって行っていた作業がだいぶ短縮されたため、投稿者の特定までの日数がかなり短くなった例も多い。 もっとも、代理人目線では、正直なところ業務負担はあまり軽減されておらず(作業量は従前と変わらず、回転量だけが上がっているというのが率直な感想である)、インターネットの誹謗中傷案件の処理が劇的にやりやすくなった…というわけでも

        • 発信者情報開示命令手続の機能不全?

        • 訴訟費用額確定処分のTIPS

        • 訴訟をしてもお金が回収できない?――財産開示手続の活用

        • (基本的な話)発信者情報開示命令申立てを検討する場合のメモ②

          (基本的な話)発信者情報開示命令申立てを検討する場合のメモ①

          新法に基づく発信者情報開示で利用可能な条文は以下の3つであり、おおまかな訴訟物は3つ考えられる。 ①法5条1項に基づく「特定発信者情報以外の発信者情報」の開示請求 ②法5条1項に基づく「特定発信者情報」の開示請求 ③法5条2項に基づく「侵害関連通信に係る発信者情報」の開示請求 Q1.「特定発信者情報」とは何か? A1.施行規則2条9号から13号に掲げる情報だが、条文が難解すぎるので、ひとまず、以下を「特定発信者情報」と理解するべき。 ・ログイン時のアイ・ピー・アドレス

          (基本的な話)発信者情報開示命令申立てを検討する場合のメモ①

          プロ責法改正による地殻変動についての覚書―Twitter社に対する開示請求/開示命令を念頭に―

          ※開示請求を行う立場からの検討になる。なお、令和4年9月29日時点における予想のため、実務の進行がどのようになるかは現状不明である。  改正プロバイダ責任制限法が本年10月1日から施行される。  条文の適用関係や、想定されている制度運用については、NBL No.1226「発信者情報開示命令事件に関する裁判手続の運用について」等が詳しいが、それらの論稿を読んでも解決しない疑問点を以下に示しておく。 ①現在進行中の発信者情報開示請求訴訟について、10月1日からは当然に新法が適

          プロ責法改正による地殻変動についての覚書―Twitter社に対する開示請求/開示命令を念頭に―

          賃貸に関する誤解を解く──管理会社や大家からの請求は間違っていることが大半、である事実

          はじめに自分が借りている物件に関するトラブルは、身近でありつつ、普段生活をしているときにはほとんど意識することがない。たいていの場合は、入居時の資料に求められるがまま適当にサインし、退去の際に言われるがまま金銭を払っておしまい、である。 しかし、実際のところ、顕在化しているトラブルはそこまで多くなくとも、法律上必要のない支払いをしているケースは、(ほとんどの人が気づいていないだけで)相当数にのぼっていると思われる。 この種の金銭のやり取りは、せいぜいが数万円~数十万円であ

          賃貸に関する誤解を解く──管理会社や大家からの請求は間違っていることが大半、である事実

          「「死ねばいいのに」という投稿では発信者情報開示が認められない」、とは言えないよというお話

          1.はじめに令和3年6月某日、『100日後に死ぬワニ』の作者を原告とする発信者情報開示についての判決が出された。当該判決は、令和2年4月15日の「(作者)も一緒に死ねばいいのに」というツイッター上の投稿に関し、経由プロバイダが発信者の情報を開示すべきか否かを判断したものである。 なお、ツイッターに対する発信者情報開示は、 ①Twitter社への仮処分(債権者:侵害を受けたと主張する者、債務者:Twitter) ②仮処分によって判明した経由プロバイダ(本件では株式会社倉敷

          「「死ねばいいのに」という投稿では発信者情報開示が認められない」、とは言えないよというお話

          敷金・修繕費に関する覚書

          最近、敷金返還請求の裁判例を読んでいるので、自分の勉強メモとして残しておく。ついでに、年度末で引越しが増えていると思われるので、だれかの役に立てばいいなとは思っている。 (なお、今働いている事務所では不動産関係の案件が一切ないため、このメモが業務上で日の目を見る機会はおそらくない。) 【最高裁平成17年12月16日第二小法廷判決の存在】 建物の通常損耗は、原則貸主の負担である。借主が負担するのは、通常の使い方を超えて汚損した部分(特別損耗)だけである。 ただし、通常損耗で

          敷金・修繕費に関する覚書

          量刑メモ

          [検討プロセス] ①社会的類型の決定 ②犯情(行為態様・結果・動機) → a)犯罪の客観的な重さ  b)被告人の意思決定に対する非難の程度 という2つの視点をもとに検討する。 ③一般情状 [注意点] ア 社会的類型や事実の存否(ex.3回殴ったのか、それとも1回殴ったのかにすぎないのか)を争うなら、否認事件と同様に証拠を引用し議論するというステップを踏む。 イ 犯情事実に争いがない場合にその評価を争う場合、単に「この行為は悪質である」「この行為は悪質でない」と議論し

          量刑メモ