(基本的な話)発信者情報開示命令申立てを検討する場合のメモ①

新法に基づく発信者情報開示で利用可能な条文は以下の3つであり、おおまかな訴訟物は3つ考えられる。

①法5条1項に基づく「特定発信者情報以外の発信者情報」の開示請求

②法5条1項に基づく「特定発信者情報」の開示請求

③法5条2項に基づく「侵害関連通信に係る発信者情報」の開示請求

Q1.「特定発信者情報」とは何か?
A1.施行規則2条9号から13号に掲げる情報だが、条文が難解すぎるので、ひとまず、以下を「特定発信者情報」と理解するべき。
ログイン時のアイ・ピー・アドレス+ポート番号(9号)
・ログイン日時(13号)
※10号~12号は一旦無視。MVNO等が絡んでくる場合には使うかも

Q2.「特定発信者情報以外の発信者情報」とは何か?
A2.施行規則2条1号から8号、14号に掲げる情報だが、ひとまず以下を「特定発信者情報以外の発信者情報」と理解するべき。
・氏名又は名称(1号)
・住所(2号)
・電話番号(3号)
・メールアドレス(4号)
投稿時のアイ・ピー・アドレス+ポート番号(5号)
・投稿日時(8号)

Q3.相手方が、投稿時のアイ・ピー・アドレスを持っているのか、ログイン時のアイ・ピー・アドレスを持っているのかが分からないと訴訟物が決められないが、どうやって判断するのか?
A3.基本的には、これはサイトごとがどのような情報を持っているかの知識で判断するしかない。そのため、本で調べるか、開示請求を扱ったことのある人に確認した方が良い。
ログイン型であることが有名なのは、
海外法人ならTwitter、Instagram、Facebook、Tiktok
日本法人ならnote
※Googleは、ログイン時のアイ・ピー・アドレスを持っているときと、投稿時のアイ・ピー・アドレスを持っているときがある。

Q4.法5条1項と5条2項の使い分けは? 手続の第1段階で「1項」を使って、第2段階で「2項」を使うわけではないの?
A4.手続段階ではなく、「ログイン型か否か」で利用条文が異なる。
5条2項は、
(1)「侵害関連通信」、すなわち、ログイン時アイ・ピー・アドレスとタイムスタンプをもとに、
(2)接続プロバイダに契約者情報を求めるとき
に利用される。
そのため、ログイン時アイ・ピー・アドレスではなく、投稿時アイ・ピー・アドレスをもとに開示を求めるなら、第2段階でも根拠条文は法5条1項である。

Q5.TwitterやInstagramの海外法人に対する開示請求は、これで便利になったのか?
A5.訴訟を行わなくて良いので手続の進行は早くなる。しかし、ログイン型について開示対象となるアイ・ピー・アドレスが侵害情報の直前に限られてしまうという情報が複数観測できており、むしろ不便になったともいえ、現状の評価はなんともいえない。
今のところ、TwitterやInstagramについて、ログイン時アイ・ピー・アドレスに基づく開示請求はかなり困難な感じになってきており、こういった海外法人については、「アカウントの電話番号開示」が最優先ルートになる可能性がある(アイ・ピー・アドレスによる特定は補助的に用いるイメージ)。

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