グレゴリオ聖歌学講習 (Folkwang Univ. d. Künste, Essen) 修了試験の記録 (1) はじめに

 かつてゴーデハルト・ヨッピヒ (Godehard Joppich) 教授が教え,そのもとで学んだシュテファン・クレックナー (Stefan Klöckner) 教授がいま定年退職前最後の学期を務めているエッセン・フォルクヴァング芸術大学 (Folkwang Universität der Künste, Essen) では,グレゴリオ聖歌学を深く学びたい人のための3年制の冬期講習プログラムが今年2024年まで提供されてきた。少なくとも私が初めて参加した2014年以降,講師は常にクレックナー教授とフランコ・アッカーマンス (Franco Ackermans) 氏の2人だった。

 全3年のうち第1年は古写本学 (Paläographie),第2年は旋法論 (Modologie),第3年はセミオロジー (Semiologie) に充てられており,この順序での履修が理想ではあるが絶対ではなく,どの年から始めることも許されていた。私自身,最初の年はセミオロジーだった。

 講習会は,SARS-CoV-2感染対策のせいで中止になった2021年・初夏に延期となった2022年を除き,私の知る限りでは毎年1月2日から5日までの集中講義形式で行われていた。1回あたりの合計授業時間はちょうど大学の1セメスター分 (週1回90分授業するとして) くらいで,その意味でもまさに集中講義だったといえる。

 事前に読んで準備しておく課題 (前年11月初頭ごろに送られてきた),授業への出席,授業後5月くらいまでに提出する課題の3つで1年分の課程が成り立っており,すべて果たすと6単位 (ECTS) が与えられ,提出課題に基づく成績評価が行われた。これを3年分行い,さらに最後の年に修了試験に合格することで全課程修了となっていた (修了試験は6単位扱いなので,全部で24単位となる)。

 標準的には3年連続で受講して修了するものだが,それができなくともとにかく上記3つの分野すべてを履修すればよいことになっており,私自身,11年もかけてようやく先月 (2024年10月22日) 修了することができた。
 11年もかかったのは,ほかの用事で忙しくて受講に行けない年が複数あったせいでもあるが,最初のころはそもそも授業が半分も理解できなかったためでもある。そういうわけでセミオロジーは2回 (2014年と2020年) 授業を受けてから課題を提出し,旋法論は1回受講 (2016年) で課題提出こそしたものの十分分からなかったのでもう一度聴講した (2023年)。古写本学だけは1回聴く (2018年) だけで済んだが,その年にはほかのことに熱中していて提出課題に見向きもせず,4年後 (2022年) にようやく課題だけ出して単位取得した。

 そのうちこの各年に出された課題や授業内容の概要も書くかもしれないが,今回報告するのは,今年の修了試験の内容とそれに取り組んだときの私の様子である。

 なお, 「……行われた」,「……なっていた」などと,普通現在形で書きそうなところを過去形で書いてきたが,これは,クレックナー教授の定年退職に伴い今年をもってこの講習プログラムが終了となったためである。
 
 当初は1記事にまとめるつもりだったが,それだと画面で読むにはあまりに長くなりそうなので,いくつかの記事に分けることにする。試験の時系列に従い,次の順序で書いてゆく予定である (実際に記事を書いたらここからリンクを張る)。

  • 修了試験第1部:古写本学 (Paläographie)

  • 修了試験第2部の1:ネウマ譜復元 (Retroversion)

  • 修了試験第2部の2:旋法論的・セミオロジー的聖歌分析 (Modologische und semiologische Analyse)

    1. 入祭唱 "Exaudi Domine … tibi dixit"

    2. アンティフォナ "Cibavit eum"

    3. アンティフォナ "Spiritu sapientiae"

    4. アンティフォナ "Dum sacrum mysterium"

    5. アンティフォナ "Stetit angelus"
       



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