2024シーズンの目標
愛媛FCがJ2リーグを戦い抜く上での正しい目標設定とは?
1月9日(火)のトップチームスタッフが集まってのスタートミーティングに、今年は社長と私も出席させてもらった。例年は強化部、監督、スタッフで今シーズンの方向性をすり合わせるスタートミーティング。今年に限って、経営をスタートミーティングに参加させてもらったのは、「目標設定」の目線合わせをしたかったからだ。
というのも、J2での目標設定はJ3の頃よりも難易度が高いと感じていた。私は前職で組織マネジメントのコンサルタントをしていたので、『目標』というものを理論的に、そしてビジネスの現場で実践的に、理解を深めてきた。『目標』とは「人を通じて成果を出すための『道具』」であり、その妙というのは「頑張れば達成できそうな水準に設定する」というのが『教科書的』な答えである。
昨年末、強化部が2024シーズンの目標として出してきたのは「10位以上」。その根拠として提示したのは、愛媛FCと同じくらいの予算規模のJ2のチームが、2023シーズンに11位~14位くらいにいたので、10位であれば「頑張れば届く順位」であるというものだ。セオリー通りだけれども、私には何か違和感があった。
昨年末に開催頂いた祝勝会で、ある方から「来シーズンの目標は何位に設定するんですか?」と聞かれた。上述の理由と共に「10位です」と答えた。ある方はそれを聞いて少し黙り、「それをサポーターに言わないでください。せめてプレーオフ以上、そうみんなに言ってください」と言った。正直「ドキッ」とした。
そうか、私が感じていた「10位」の違和感の正体は「全然ワクワクしない」だ。では、「頑張れば届く順位」でかつ「ワクワクする」目標というのは、何なのか。確かに多くの人が納得する妥当な目標設定は「プレーオフ以上」だったかもしれない。なぜなら過去に一度だけその世界を見たことがあるからだ。
不可能を可能にする
私たち愛媛FCファミリー共通の願いは何か?それは「6位以上」という数字的順位ではなく、未だ見ぬ世界に行きたい、つまり「J1に行きたい」ということではないか?
人間の予測というのは『前例』であったり、『固定観念』に無意識的に基づいてしまうものだ。クラブスローガンで掲げた『己道』は『固定観念』に縛られることなく、我々愛媛FCファミリーの歩むべき道を歩むという「人間の性に反する」ことの実現を願って表現した。
年末の番組やSNSで、選手たちは「J2優勝」を目標だと言っている。愛媛FCをよく知る人たちは「現実的に戦っていかないかん。J1なんてそんなに簡単にいけんのやからそれを皆に分かってもらわな」とアドバイスをくれる。J3リーグの時よりも、みんなの考え、価値観の違いが表れ、それぞれが描く『正しい目標』がバラバラだ。ファミリーを一つにまとめ上げる『正解』は何なのか……全く分からん。。。けれども、未だ見ぬ世界に行きたいというのは(今年の目標として掲げるかは別として)共通の願いとしてあるのではないか。
手の届かなさそうな大きな夢を掲げるのは、バカで無知な奴が言うことかもしれない。冷静に現実を分析し、データや根拠に基づいて、それらしい目標設定をするのはクールでカッコいい。でも、、、私はJ1に行きたい。なんだったら、昨年のあの感動を、もっと大きな感動を、経験したい。一番私がワクワクする今シーズンのビジョンは、間違いなく、再びもっと大きな喜び、すなわち『J2優勝』を皆で分かち合うことだ。これを発表することで皆に笑われるだろう。バカにされるだろう。でも、、、バカでいいやん。いろんな知識と経験を積んでカシコぶるよりも、無知で可能性が無限大にあると信じるピュアなマインドでいたい。そして不可能を可能にしたい。
昨シーズンのあの感動を迎えた日。忠さんは「来年の目標はJ2優勝やけん」そう宣言した。そして年が明けたスタートアップミーティングでも、「誰が何と言っても目標は優勝やけん。現場は現場で考えてくれたらいいけど僕には優勝しかない。皆が困るんやったら社長がまた夢見とるって、僕のせいにしてくれたらいい。まだ始まってもないのに、可能性が消えてもないのに、なんで一番上を目指さんの? 1mmでも可能性があるんやったら、てっぺんを目指し続けるべきやろ」。忠さんは私と違って全く迷いがなかった。
話は大きく飛躍するが、飛行機(鉄の塊)はなぜ今日空を飛んでいるのか? 大変興味深いことに、ライト兄弟が初飛行に成功したにもかかわらず、当時の人びとは信用しようとせず、サイエンティフィック・アメリカン、ニューヨークチューンズ、ニューヨーク・ヘラルド、アメリカ合衆国陸軍、ジョン・ホプキンス大学の数学と天文学の教授サイモン・ニューカムなど各大学の教授、その他アメリカの科学者がこぞって新聞等で「機械が飛ぶことは科学的に不可能」との記事やコメントを発表していたと言う。愛媛FCが『J2優勝』するのは今の予算規模やこれまでの実績(個人・チーム)からすると「不可能」だと言われる。
飛行機が当たり前のように飛ぶのも、宇宙旅行ができるようになったのも、これからは火星に移住するのかもしれないが、何かを成し遂げる時の始まりはいつも、誰かの「ものすごくやりたい」という想い、誰が何と言おうともやりたいという、止むに止まれぬ熱情ではないか。周囲がいくら反対しようとも、いや反対されればされるほど、何としてでもやりたい。そんな自分の意志がかえって明確になってくる、そんな想いが常に起点となると思う。不可能を可能とする熱意、もう少し実態を正確に描写すると、誰が不可能と言おうとも私には不可能とは思えない、という確信がいつでも始まりだ。愛媛FCがJ1に行くのもきっとそうに違いない。
J2優勝という目標を発表してみて
ある元プロ選手に「今年の目標は何にしたん?」と聞かれ、「J2優勝です」と答えた。案の定フッと笑われ、「もっと現実を見た方がええな。そんなんじゃ達成できん。俺愛媛FC何位予想したんやっけ? あった、あった、19位や」と言われ、「降格するやん!」と即時に突っ込みをいれながら、「見とけよ」と心の中で呟いた。
とはいえ、ここ2試合、先制しておきながら追いつかれるという嫌な引き分けが続いており、誠に申し訳ありません。特に鹿児島戦は相手が10人と、うちが数的優位にありながらの2失点、アディショナルタイムにいらないファウルをいらない場所でもらっての失点と、「ワクワクする」試合から遠ざかっていること、「1点取ったらまた1点、さらにもう1点」というゴールを目指し続ける『ノンストップフットボール』を具現化できなかったこと、申し訳なく思います。特に岡山戦の流れから、勝てば大きな推進力が生まれると期待された大事な一戦でした。サポーターの応援はそれはそれは素晴らしいものでした。
私も試合を見ながら、いちサポーターとしてバックパスが増え、ゴールを目指せていないピッチ上にイライラしながら、正直選手たちを責めたい気持ちになりました。でも、とも思います。ピッチ上の選手たちって私の『写し鏡』なんじゃないかと。「先週からの流れがあるんやから今日は絶対勝たないかんよ」と焦っている自分がいました。相手10人で2-0になった時にはどこかで「今日は楽勝で勝てるかもな」そう驕った自分がいました。このような焦りと気の緩んだ”空気”を創り上げてしまったのではないかと。こんな時だからこそ、敢えて『自責』で己に問いかけたい。「私には何ができるのか」と。
愛媛FCファミリーが、今起こっているこの苦しい現実の原因を『己以外の誰か』に設定し、『怒り』と『非難』と『攻撃』に支配されてしまうと、間違いなくチームは崩壊します。成し得るかもしれない『J2優勝』も『J1昇格』も、それによって遠のく可能性があります。まだサッカービジネスに携わって3年の若輩者ですが、この3年で『チーム』は生き物であり、一瞬で、簡単に壊れてしまうということを、まざまざと経験しました。
すごく嬉しかったのは、このような試合をした後にも関わらず、既に己に矢印を向け、「J1に行くために自分に何ができるか?」とまだ見ぬ景色を現実するための発信がたくさんあること。チームに前向きな言葉を投げかけてくれていること。この苦しい時に、子供のようにピュアな気持ちで、「一番になりたい」という夢を一緒に追いかけてくれている人たちがこれだけいることは愛媛FCの強さだと思いました。もしかすると、長く応援頂いているサポーターの中には「そう言って何度も裏切られてきたんだよ」と、私が想像しえない程に信じることが怖くなっている人もいるかもしれません。そうだとしても、そうだとしても、そのようなしこりも一旦忘れて、「愛媛FCがもしJ2優勝できるとしたら、そのために私は今何をしたら良いだろう?」と敢えて己自身に『前向きな』問いかけをしてもらえませんか? その一人一人の思考と行動が、私たちのニンスタに、まだ夢のまた夢である柔いものを、現実として手繰り寄せる”空気”と”運”をもっともっと作り出すと思います。
まだ「J2優勝」が愛媛FCファミリーの目指す目標となっていないのだとすると、間違いなく「誰が不可能と言おうとも私には不可能とは思えない、という確信」が私に足りないことが原因です。私が「できたらいいな」レベルで「確信」までいけていない。でも、「ひょっとしたら行けてしまうかも?」という期待している私がいます。選手たちの頑張りを、成長していく様を、もっと目の前で目撃し続け、「愛媛FCがJ2優勝できるとしたら、そのために私は今何をしたら良いだろう?」と己に問い続け、もっと行動に移すことで、「確信」まで昇華させたいと思います。
10節を終えて4勝3分3負の勝点15、昨年は5勝4分1負の勝点19、Gapは▲4です。嫌な引き分けは続きましたが、5試合負けなしです。目標と現実のGapを見るのか、予測と現実のGapを見るのか、はたまた過去と今年のGapを見るのか、何と比較するのかによって今の戦績の評価は分かれます。ただ、まだシーズンは前半で、結果が出るのはまだまだ先なのだから、第三者として評価・評論・討議をするためにGap分析を使うのではなく、掲げた目標を私たちの『正解』にするための、『現実』にするための『材料』として使って自らの行動に転化させることで、目標達成の確度をあげたい。
昨年比▲4のGapをまずは目の前の山形戦にて近づけるための行動を取っていきたいと思います。今シーズン、史上最大の笑顔で幕を閉じられるように!まだまだ私たちは成長できる!強くなれる!そうすれば自ずと道は開ける!
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
愛媛FC 取締役 村上茉利江
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