「ちょっと気になる医療と介護」

ちょっと気になる

この背のタイトルが気になりました。棚から抜いて表紙を見るとへのへのもへじ、ますます気になります。

冒頭の文章「増補版について」で、「でっ、」とか「小選挙区制、内閣人事局」、「給付先行型福祉国家」とかいう言葉が出て来て、これはなんだろう、と興味を惹かれ、読むことにしました。

生産性には二つある

アダム・スミスの生産的労働と非生産的労働(サービス産業)の対比が述べられています。供給が需要を産み出すのか、需要が供給を産み出すのか、という話です(マルサスも出てきます、懐かしいですね)。この部分を読んでいて、「勤勉革命」という本を思い出しました。

そこから、過剰供給・過少消費の世界に入ります。モノをいっぱい作っていくとある時点で買える人が少なくなり、製造業が雇用を維持していくのが困難になり、人々はサービス産業に流れ、そこで所得を得てモノを買い始める、という世界です(限界消費性向という言葉も出てきますね)。

その文脈で、医療福祉就業者の割合が増えている、という数字が出てきて、物的生産性と付加価値生産性の話に繋がります。「医療・介護の労働生産性の推移」というグラフを出してみせて、確かに低くなっているが、これは「付加価値生産性」のグラフであり、医療・介護の費用は公定価格で抑えられているから、就業者が増えている状況で低くなるのは当たり前、例えば医師一人当たりが診る患者数という「物的生産性」でみたら、日本は上位だ、と言っています。

生産性がどうとか言う人に会ったら、どちらで議論しているか気をつけなくてはいけませんね。

所得税と消費税

所得税の最高税率を1%上げるよりも、最低税率を1%上げた方が税収が大きい、でも、消費税を1%上げた税収はもっと大きい、という話がありました。

う~ん、そうなのか。

キャッチアップは高度経済成長できるが・・・

ピケティの話が出てきます。キャッチアップは模倣であり、高度経済成長を達成できるが、ひとたび追いついてしまうと、そこからは創造という地道な活動になって、安定成長(1%程度)になる、というものです。

創造、イノベーションは派手なものではない、ということでしょうか。

経産省は人余り?

キャッチアップしている間は仕事があった経産省は、それが無くなって人が余ったため、自分たちのための新たな仕事を作り始めているのではないか、と言っています。

経産省がヘルスケア分野に進出し始めているのはその現れ?

健康増進すると医療費が増える?

健康寿命を延ばすことで医療・介護費が節約できる、というエビデンスは無いそうです。健康で長生きするとむしろ医療費がかかるので、その人の生涯医療費を考えると、どんどんタバコを吸ってもらったほうが医療費節約になるということです。

これに近い話は従業員の健康増進施策と医療費を比較した研究でも聞いたことがあります。

とはいえ、不健康で行こう、とはならないので、今後も医療費は増えそうですね。

医師の偏在と不況

医学部の偏差値が高い理由について書かれています。不況になると、手に職を、ということで医学部を受験する学生が増える、そして都会の学生が地方の医学部に行って、卒業したら都会に戻るので、医師の偏在が起こるそうです。著者の地元枠を作る等の提案は、医師確保計画に反映されているようです。

診療報酬と不況

医師と同様、診療報酬も不況に左右されるようです。ある期間の経済成長率は、4~5年後の診療報酬の改定率との相関が高いそうです。

次の改定が2022年度ですから、次の次は、ぐっと下がるのでしょうか。

知識補給

この本には、脚注にするような内容を「知識補給」として末尾にまとめて、本文からジャンプ、知識補給から元の本文の頁に戻る、というWebコンテンツみたいな構造があります。

知識補給から読んでいって本文に戻ることもできます。これって結構便利ですね。

日本記者クラブの会見

次の動画が紹介されていました。

この時に使われたのは次の資料だそうです。

他の著作も読んでみようと思います。

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