中学受験する?しない? 住居エリアで変わる中学受験率
ネットの掲示板に「通っている小学校の中学受験熱が過熱し過ぎて引っ越しをしたいと考えている」という悩み相談がありました。
子どもの数は減少しているにも関わらず、年々増加傾向が続く中学受験率。 特に首都圏の中学受験は、高額な塾費用を捻出し、小学6年生になれば子どもはほぼ毎日通塾して夜遅くまで勉強をするといった生活を中学受験生は送っています。
そのため、クラスで中学受験をすることが多数派か少数派かによって子どもや保護者の精神的な負担は大きく変わると思われます。 今回は、今や全国的にも高まりつつある中学受験を居住エリアによって左右されているのか、ご家庭の教育方針に沿って自由に選択できるツールについて見ていきたいと思います。
1.クラスで自分だけ「中学受験をする」「中学受験をしない」環境
中学受験をする生徒がクラスで自分だけという環境であれば、塾通いをしているというだけで「がり勉」と言われたり、毎日ゲームなどで遊ぶお友達と勉強に追われる自分の生活を比べて「なぜ自分だけが勉強しなければいけないのか」という疑問を子どもが感じることもあるようです。 また、受験直前期におこなわれる学校行事を受験への影響を考えて参加しなかったりすると、先生から否定的なことを言われたという話もあります。
中学受験をするご家庭では、周囲に流されないように親子で中学受験をする目的やメリットをしっかり確認し合い、クラスでは塾で先取りしている学習内容であっても大人しく授業を受けるといった気遣いをされているようです。
一方、中学受験率が高いクラスでは、小学校4・5年生になると塾に通っていない子ども達は少数派で、放課後に一緒に遊べるお友達が減っていき時間を持て余すことになります。 友達同士で通っている塾の先生の話題や模試の結果の話しで盛り上がり、通塾していない子ども達は会話に入っていけず疎外感を感じることもあるようです。多くの私立中学校の受験日である2月1日や2日に小学校に登校すると教室には数人の生徒しかいないという光景を目にすることになります。
中学受験をしないご家庭では、受験塾以外の習い事にたくさん通わせたり、高校受験を見据えた塾に通わせているようです。
どちらにしても、少数派の選択をすることは「孤独感」と闘いながら親子共に覚悟が必要です。 子どもが小学校に入学するタイミングでご家庭の教育方針に合った地域にわざわざ引っ越しをされる方もいることも納得できます。
2.都道府県別私立中学校の数
まずは全国の中学受験率についてみてみましょう。 「東京エリアでは中学受験をする家庭が多い」というイメージは実際はどうなのでしょうか。 下の図は、都道府県別私立中学校の数です。
東京都の私立中学校の数が2位の神奈川県の3倍近くあることが分かります。 東京に引っ越しが決まったら子どもの中学受験を意識する必要がありそうです。 3位が大阪府、4位が兵庫県、5位が埼玉県と続きます。
私立中学校の数が少ない県をみてみましょう。私立中学校の数が一校の秋田県。 秋田県といえば、文部科学省が公表する「全国学力・学習状況調査」の結果で、毎年トップクラスの成績を残しています。 小学校では基礎学力の向上と探求型授業に取り組み、家庭とも連携して子ども達の「生きる力」の育成に一丸となって取り組んでいます。
秋田県教育委員会の提唱する教育指針の一つに「早寝 早起き 朝ごはん 生活リズムは全ての基本」があります。小学生らしい生活だと思いませんか。 毎晩9時近くまで塾で勉強し、そこから帰宅して11時頃に就寝する首都圏の小学生とはまったく違った生活です。 『家庭学習を中心とした小学生らしい生活』と『ビジネスマン並みに目標を立てその実現に向かって塾で懸命に勉強する生活』 住んでいる都道府県によって中学受験率も変わり、小学生の生活も大きく異なることが伺えます。
3.東京都の中学受験率
上の子が小学校の低学年の時に教育熱心な地方都市から東京都内へ引っ越してきた我が家。 治安がよいことを最優先して選んだ学区でしたが、計算や漢字ドリルへの取り組みが少なく、小学校の教育全体が「緩い」ことに戸惑ったことを思い出します。 一方で、ママ達の教育への関心は高く、「中学受験をするかしないか」「中学受験にかかる費用」「公立中学校の内申事情」という話題でいつも賑わっていました。
そして、小学校の3年生の2月には約半数の生徒が、中学受験専門塾に入塾し受験勉強をスタート。小学校5年生になると近所の大手受験塾では新規生徒の受付は締め切っており、途中から入塾ができないという状況でした。 小学6年生になると、受験離脱組が数人いるものの、これまで塾に通っていなかった都立中高一貫校の受験組が一斉に塾に通い始めました。 公立中高一貫校も含め中学受験率は7割を超え、私立中学校への進学率は学年の50%程でした。
次の図は、東京23区の私立中学校への進学率です。
有名私立中学校や大学が多い文教地区である文京区や企業の経営者などが多く住む中央区や港区で私立中学校への進学率が高い結果になっていることは納得できるのではないでしょうか。
ここで注目したいのは中学受験率25%~35%のエリアです。 この割合は区全体の平均値なので、小学校によっては受験率が50%を超えていて、歩いて30分で隣の小学校に行けば、受験率が10%だったりするということです。 実際に我が家が住んでいる地域が上記のような状況です。
娘の小学校の先生によれば、中学受験率が高くなった背景には、今から15年前に学区内に周囲の平均販売価格よりかなり高額な大規模高級マンションができたことがあるそうです。それまではクラスでも受験する生徒は数人程度。マンションに住んでいる生徒の多くが受験し私立中学校に進学していく姿を見て受験を始める子ども達が徐々に増えてきているそうなのです。
ご家庭の教育方針に合った公立小学校を探すためには、引っ越しの前に気になる物件が所在する区の教育員会や小学校に直接問い合わせてみたり、先生との面談で卒業生の進路割合について教えていただけるようお願いしてみるとよいでしょう。
そして中学受験率についての情報を収集するのにオススメなのが、学校や地域のボランティア活動やサークル活動で知り合った保護者に話を聞くこと。 子どもと同学年の保護者同士の会話ではどうしても推測が多くなりますが、いくつか年上のお子さんがいらっしゃる保護者の方の話は実際に経験された感想ですので参考になる内容が多いと思います。
4.受験率の違いによって小学校の宿題量に差はある?
中学受験生がいらっしゃる家庭では、「小学校の宿題と塾の宿題の折り合い」について悩まれている方もいらっしゃるでしょう。 中学受験をする生徒が少数の小学校では、『学校が子どもの学力を育成する』という方針であることも多く「小学校の宿題を完全にこなすことができる生徒が中学受験をしてもよい」という雰囲気を感じる場合があります。
毎日の宿題も1~2時間以上かかったり、夏休みや冬休みの宿題も毎日コツコツと取り組まなければ終わらない量と内容が課されることもあるようです。適当に終わらせたり、提出をしなかったりすれば休み時間や放課後に補習に呼び出されたり、ご家庭に連絡が入ることもあります。
一方で、中学受験率が高い小学校では学校の役割は「勉強では得られないことを学ぶ場」の位置づけであることが多いようです。 宿題の量は少なく、学校から帰宅して塾に行くまでのスキマ時間にパッパと終わらせてしまったり学校の休み時間に宿題に取り組むことを許可してくれる先生もいます。 そんな負担の少ない宿題であっても、塾の勉強を最優先して学校の宿題に取り組まない生徒もいますが、学校の授業が理解できていれば、各家庭の教育方針が尊重されており学校から強要されることはないようです。
いかがでしょうか。 塾に通わずに基礎学力は小学校と家庭で身に付けたいと考えているご家庭にとっては宿題や課題は多い方がよいでしょうし、中学受験に専念したいご家庭にとっては小学校の宿題に費やす時間は少ない方が助かります。 でも、中学受験に専念したいのに宿題や課題が多く完成度の高いものを求められたりすればストレスとなり、塾に通っていないご家庭にとっては小学校の宿題や課題が少なければ通塾している生徒さんと比べて学力の差はどんどんと開いてしまいます。
小学校で中学受験をするのか、公立中学校に進んで高校受験をするのかは、早い段階から意識して情報を調査したり、途中で方針転換しても間に合うように基礎学力を身に付けておく必要があるでしょう。
5.公立中学校に進学したら高校受験で苦労するは本当?
近年の中学受験率増加の背景にあるのは、公立中学校では、子どもの頑張りに対して内申点が厳しく高校受験で子どもが苦労するという情報が広まっていることにあるようです。 定期テストで同じ点数であっても、内申点が取りやすい中学校と取りにくい中学校では内申点に差がでてきます。 中学受験経験者が多い学区では、中学校の理科や社会の内容について中学受験で勉強している場合が多く、入学時点でアドバンテージを持っています。 子ども自身が懸命に努力したと思っていても、クラスに優秀な子が多くいると「5」をとることは難しく内申点が取りにくいと感じることでしょう。
通っている中学校によって内申点に大きな差があるなんて、頑張りが公平に評価されていないようで悔しさを感じることも多いかもしれませんが、こういう厳しい環境でも諦めることなく真面目にコツコツと努力し続けた先輩の多くは、志望校に合格しているのが現状です。
大切なことは、自分で学習目標を設定し目標達成のためにやらなければいけない勉強をスケジュールに落とし込み、日々勉強をするという習慣を身に付けていくことです。 自分で勉強できる習慣が身に付いていれば、公立中学校に進学しても必要以上に不安にならなくても大丈夫でしょう。
6.居住エリアに左右されない学習環境が手に入る時代へ
新型コロナウィルスの影響を受け、教育環境においてもオンライン化が進みました。 日本全国どこに住んでいても自分に合った学習環境が手に入る時代になりつつあります。 対面集団授業が当たり前だった「中学受験勉強」では、早稲田アカデミーのオンライン「双方向Web授業」があり、四谷大塚の通信教育「進学くらぶ」で通塾生と同じ教材を使い同じ学習システムで学ぶことができます。 中学受験生の多くが幼児期から小学校低学年時にお世話になった公文教室にも「オンラインで自宅学習」という選択肢が加わっています。 そして、家庭教師にもラコモの「オンライン授業専門家庭教師」が登場しました! 自宅に来て教えてもらうことができる家庭教師の先生は限られてしまうかもしれませんが、オンラインであれば憧れの大学の大学生家庭教師や経験豊富なプロ家庭教師など多くの家庭教師の先生からご家庭の学習環境にピッタリの先生を選ぶことができます。
ぜひのぞいてみてください!
教育におけるオンライン化、テレワークが進めば、地方に移り住む人が増え東京一極集中も緩和されるのではと期待されています。 近い将来、地方の教育都市で勉強した子ども達がオンラインで東京の大学に進み、東京の企業や世界の企業にテレワークで働いているという時代がやってくるかもしれませんね。