世界の教養:ドストエフスキー ー 罪と罰
今回紹介するのは、ドストエフスキー(1821〜1881)です。罪と罰の小説で有名ですね。
彼は、誰もが認める心理小説の巨匠とされており、とりわけ罪の意識、絶望、死への執着など精神状態を巧みに描きました。
彼は、モスクワで厳格なロシア正教徒の家で生まれました。父の勧めに従い、工兵学校に行って卒業したものの、工兵の仕事が気に入らず、そこで作家になる決心をしたそうです。1846年(25歳頃)、処女小説「貧しき人々」で批評家から大絶賛されましたが、極左の出版業に携わっていたとして、逮捕。その後、死刑執行直前に皇帝の特赦で許され、シベリアの強制収容所に送られて、そこで4年間過ごしたそうです。この時の体験が衝撃的だったそうで、彼の作品に影響を与えました。
1860年代に作品を次々と発表し、その中に「罪と罰」(1866年、46歳頃)もありました。罪と罰は、老婆を殺害した青年の罪悪感と苦悩を詳細に描かれた作品で、罪を犯した後で犯人の心に生じる自己非難こそ、社会が与えることのできるどんな罰よりもはるかに厳しい、という結論で知られています。
彼の文体は、特に犯罪者や精神的に不安定な人など社会の周縁に押しやられた人たちの心を探るのに長けていて、こうした性格描写は、ニーチェやカミュなどの哲学者にも影響を与えました。
参考文献
デイヴィッド・S・キダー, ノア・D・オッペンハイム, 小林朋則 訳, 文響社, 1日1ページ読むだけで身につく世界の教養365, 2018年, 267p