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今読みたい『二つの祖国』|最近のアメリカにおけるアジア人差別に思うこと


足元、新型コロナウイルスに端を発して、アメリカで横行しているアジア人への差別行為や暴動。あまりの理不尽さに強い憤りを感じます。

と同時に、これだけ多岐にわたるルーツの移民を抱えながら、「アメリカ人になりきること」がこれほど求められる国って珍しいのかなと(時代或いは政権毎に濃淡はあっても)…今まさに読んでいる本に照らして思ったのでした。

『二つの祖国』は、山崎豊子氏らしい史実を絡めた小説構成が圧倒的な、真珠湾攻撃に始まる日系一世、二世の物語。

この時代の一世は、アメリカに住めど英語も満足に話せないケースが多く、日本の天皇へ信仰に似た思いを持つ。一方、二世の多くがアメリカ人になりきりたいと願い、兵隊を志願し過酷な部隊に編成され命を賭して、アメリカへの忠誠を示そうとする。戦争という、どちらかにしか組みできない究極の選択を迫られ、また家族でも違う選択肢を選ばなければならない葛藤…

そして血を飲む思いでどちらかを選んでも、常に別の半分が付きまとい、認められないやるせなさ。

これを読んでいてそこはかとなく感じたのは、アメリカという国の中毒的な魅力でした。

「高校で、アジア人として初めて生徒会長になった」/30代

「できるだけ英語で、アメリカ人的に生活したいと子供が願った」/50代

「アメリカから香港にきて、英語以外の他言語を学ぶのが苦痛」/10代以下

戦争とは全然別にして、私の知り合いだけでも、こういう話はきく機会があります。今もなお「アジア人でありながらアメリカで認められること」の難しさと、それがために際立つ栄光の眩さ。

その是非を外で過ごしている私が論じることはできないですし、するつもりもないのですが、私は今香港に外国人として住んでいるので、香港のカルチャーの違いを考えると興味深いものがあるなと思います。

香港に来た当初、当たり前にトリリンガル以上(広東語、中国語、英語+ルーツとなる言葉)を学ぶ環境に驚きました。しかし、それは、それだけ異なる文化を受け入れる懐があるということでもあります。特に情勢不安時に「よそ者を排除したい」というのは、どの国でも起こりうる問題で、だからこそ「誰かをよそ者にしない」というのは、とても大事なことだと思うのです。

そして考えるのは娘たちのこと。「まず英語、次に日本語」と思ったとしたら、バイリンガル育児なんて言っていますが、私は支えてあげられるのかな。その住む国に尊敬の念を抱き、その文化を吸収することは海外で生活することの醍醐味だと思います。けれど、それがルーツを脅かす可能性だってあるということに、今ようやく本当に思い当たったたのかもしれません。






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