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【本】史実、伝承を題材にした物語に思う、誠実さ|『女教皇ヨハンナ』『出口のない海』

司馬遼太郎氏、塩野七生氏、山崎豊子氏…などに育てられたように、史実や伝承を元にした物語というのは、昔から好きです。やはり、よく調べられた話が持つ特有の、隔たった時間や異国の空気が匂うお話というのは、面白いものです。

『女教皇ヨハンナ』は9世紀が舞台。女性に学問が許されなかった時代に、博学で高度な知性を身につけたひとりの女性が、男装し、教皇に上り詰めたのち、道端で死産し命を落としたとされる話です。その在任は公式の記録にはない一方で、伝承として語り継がれてきたが故に、その真偽は未だ定かではないとされています。

『出口のない海』は、一転、終戦期に潜水版特攻隊として編成された「回天」で命を散らした若い青年の話。甲子園で注目されるも怪我を負い、けれど大学野球で得意としていた速球を諦め、魔球を編み出したい…と願いつつも、一瞬の歯車のかけ違いで、死に向かって急激に歩を進めてしまう…。

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どちらも映画化されたようですが、映画で観るなら『女教皇ヨハンナ』、物語としては『出口のない海』だなと。

というのは、『女教皇ヨハンナ』の方は、ストーリー展開が劇的で映像で見るとさぞ美しいのだろうなと思うのですが、ちょっとできすぎの感があるから。。そんな都合よくいくかな?とか、本当にそこまで潔癖で崇高の人物だったのか、というような疑問、こういうのは本で読む物語をつまらなくさせますよね。

対して、『出口のない海』は、運命のかけ違いが主人公の性格の良さと弱さによって引き起こされているところがなんとも切なく、その辺りは、さすが『半落ち』の作者とうなってしまうほど。

結局、卑下したり誇張したりすることなく、弱さやだめさをさらけ出した人の魅力と真実味には、何も叶わない。それが見抜けないほど、みんな馬鹿じゃない。そんなことを思った読書でした。


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