お直し
人生のうち何回いや何十回いやいやいや何十万回、袖口をたくし上げてきたことだろう?
ただでさえ家事をする時、長袖の袖口が濡れないように腕の上まで捲り上げる。
私のような低身長……短足短腕だと既製品はズボンの裾も服の袖口も余って余りあるのだ。
ズボンはまさか松の廊下のように引きずって歩くわけにもいかないから、お金を払って裾上げを頼む。(ミシンは持っていないし技術もない)
問題は袖丈である。
ジャケット、コートといった上に着る物なら、そう安くないお金を払って身の丈に合わせて直してもらう。
もっと問題は下に着るものである。
Tシャツ、トレーナー……そんな物は、わざわざ金を払って直すことはない。
そう思うからいつも袖口を二つ折り、時には三つ折にまでして過ごしている。
手首モコモコである。
台所仕事をするとなれば、これが更に四つ折り五つ折となり動きにくいこと甚だしい。
だから適当にずり上げて作業をすると、忽ち落ちて袖口水浸し。
嗚呼……我が人生一体何度袖口を捲り上げしか……。
何度も何度も積み重なる薄いストレスはやがて分厚いブロック塀並みのストレスになるに違いない。
ならば数千円で直しに出した方がいかばかりましであることか。
そもそも私は出不精なのだ。ジャケットやコートなどを着て出かけるなど数える程である。
だが普段使いのTシャツトレーナーなどは365日万遍なく着ているのだ。毎回袖口を捲り上げつつ。
ならばどう考えても普段着こそ袖丈を詰めるべきだろう。
そう思いはするのだが、通販で数千円足らずの衣服が届けば忘れ果ててすぐさま袖口を捲り上げて着てしまう。
あああ……何だかもう思い切り無駄なことをしている人生に思える。
どっとはらい。