見出し画像

偏愛フレグランス「ディプティック」。物語が導く香りの世界へ

私がディプティックに出会ったのは、今からかれこれ10年前。

その頃使っていたのは、高校生の時からずっと使っていたニナリッチのプルミエジュール。なんですが、ちょうど日本を撤退してしまった頃。高島屋のフレグランスコーナーでもう無いと言われてしまい(レールデュタンはあるのに)さてどうしようかとそのフロアを見回したところ、ちょうど目の前にあったのが世にも美しいディプティックの世界でした。

もうその時の衝撃たるや、忘れられません。

白い壁に描かれた「diptyque」の黒い文字、そしてまるで家紋のような楕円形の紋章。整然と並んだシンプルで水色が見える瓶の美しいこと。あの世界に引き込まれたのは、必然でしょう。まるで呪文のようなブランド名と、あんな小さなコーナーの、そのくせあの凛とした佇まいにはもう、言葉がありませんでした。


ちょうど高島屋でのブースもちょっと広くなったところで、これから日本でのシェアを広げるというところ。

私の担当をしてくださった方は、まだジャパンでは初期のメンバーだったようで、それはもう丁寧に説明をしてくださったのを覚えています。そこで私が選んだのは、「Doson(ドソン)」。いまだに使い続けている香りです。

私の香りに対するこだわりとか、どんなものが好きなのか事細かに聞いてくださった彼女は、もともとお花屋さんだったそう。花が好きで、ディプティックに入っただなんて、ちょっとロマンチックすぎますよね。


そんな彼女が私に似合うと選んでくれたのがいくつか。そのうちのひとつがドソン。その他に何を選んでくださったのか全く記憶にないほど、すぐにドソンの虜になってしまいました。

香りはメインとなるチュベローズの白い肉厚な花びらの香りから始まって、少しのスパイスや水を湛えた葉っぱの香り、そして密着した肌のようななまあたたかい温度を感じ、ゆったりとムスクが薫ります。全体的に華やかで、同時にひんやりとした感覚のある白いお花の香りなのですが、どこか辛みを感じます。なんだろうこれ、感じたことない。

画像1

その正体は、潮の香りでした。

ドソンの香りが生まれたのは、ベトナムのハロン湖に由来します。ディプティックには創業者が3人いるのですが、そのうちのひとり、イヴ・クロエンが幼少期を過ごした時の思い出の香りなのだとか。

夕暮れ時、涼んでいると潮の香りと共に流れてくる、チュベローズの甘く眠たくなるような官能的な香り。ベトナムに行ったことはありませんが、ちょっと行った気分になれちゃうようなエピソードと、なるほど!と思ってしまうところはコーヒーのそれと同じですね。

そうか、あれは潮の香りだったのか。

ちなみにチュベローズの畑からは濃厚この上ないかなり強い香りが漂ってくるようですが、その甘く甘く甘い香りは、官能的な感情を引き起こすと言われ、若い男女だけで近寄ることは禁じられていたと言います。なんだか、それだけで物語が見えてきますよね。

そんなドソンですが、私は真冬のめちゃくちゃ寒い時に付けることをおすすめいたします。きんと冷えた風に感じる、熱感のある甘い香り。ですが、さすがに夏に付けるにはちょっとあまったるorz


香りって、第一印象で決めてしまうのもいいのですが、その後ろに隠れた物語から決めるっていうのもいいものだと思いますよ。

あなたの感情を揺るがす香りが、見つかりますように。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?