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商業出版を目指す人が避けるべき、Kindle出版のNG 5選

最近、「Kindle出版をステップに商業出版を目指したい」という相談を多くいただくようになりました。出版社の編集者からすれば、Kindle出版での実績は、その人の執筆力や専門性を判断する重要な指標となるので、実績を積むためにKindle出版に、どんどんトライしていただければと思っています。

ただし、注意していただきたいのが、「どのように」Kindle出版をするかです。

今日は、日本で唯一のNPOとして商業出版を支援をする〈ほんたま〉※にて、年間300本を超える書籍企画書をチェックし、アドバイスをする経験から、商業出版を目指す人ならば、Kindle出版では“やってはいけない5つのこと"を解説します。

1. 量産することに走りすぎる

「とにかくたくさん出版すれば注目されるはず!」

残念ながら、この考え方で編集者の心をつかむことはできません。むしろ逆効果になることがあるのです…。

例えば、こんなテーマの本を立て続けに出版するケース:

  • 1月:「副業で月収10万円を稼ぐ方法」

  • 2月:「SNSフォロワー1万人獲得術」

  • 3月:「占い師になって独立する方法」

仮に上記のようなラインナップがKindle出版で並んでいたら、一見、幅広い知見を持って執筆活動をしているように見えますが、編集者の目には「専門性のない人が、その時々の流行りものを追いかけている」と映ります。

商業出版では、その人の「専門性」と「独自の視点」が重視されます。1つのテーマを掘り下げて、独自の知見を積み重ねていく方が、はるかに価値があります。

2. 時流に便乗しすぎる

「今、〇〇が流行っているから、すぐに本を出さなきゃ!」

確かに、タイムリーな話題は読者の関心を引きます。インターネットの世界では特に流行に乗ってバズることをめざす動きがありますしね。

しかし、時流に便乗しすぎると、あなたの専門性が薄まってしまうので、注意してください。出版社の企画会議では、著者の実績が重要視されます。出版企画書のテーマとかけ離れた内容のKindle出版は、まったく実績になりません。

商業出版で初めて本を出したい場合には、

  • ○○分野で10年以上の実務経験

  • 年間50回以上の企業研修実績

  • 大手企業での導入実績○社
    など、具体的な数字や実績が求められます。

時流に乗ることは否定しませんが、それはあくまでもあなたの専門分野に関連する範囲内にとどめることをお勧めします。

3. 経験談を安易にまとめる

「自分の経験を書けばいい本になる」

これは半分は正しく、半分は間違っています。ご自身の経験は、同じ悩みや目標を持つ人にとっては、大きな価値となります。

確かに経験は貴重です。書籍は先達の叡智です。著者の経験やノウハウを広く社会に広める「本」に私は救われたので、書籍編集者になりました。

しかし、商業出版を目指すのであれば、その経験が「どれだけの読者に価値を提供できるか」を冷静に考える必要があります。

例えば:

  • 100万人に1人の難病の闘病記

  • 多くの人が悩む肩こり改善法

どちらも重要な内容ですが、出版社が書籍化を検討する際は、より多くの読者に届く後者のようなテーマを選ぶ傾向があります。ターゲットにはどんなに「役に立つ」内容であっても、残念ながら、商業出版の世界の中ではマーケットが重要視されてしまいます。

そのためには、ご自身の経験を「どう伝えれば、より多くの読者に響くのか?」という視点で、内容をブラッシュアップすると良いでしょう。

4. AIに丸投げする

ChatGPTなどの生成AIの登場で、執筆のハードルは確実に下がりました。しかし、AIに任せっきりの原稿ではあなたの「強み」は伝わりません。私は、AI活用を推奨する立場です。ただし、それは「下書き」や「アイデア出し」としての活用です。

ご自身の「強み」や「個性」を伝えたいのであれば、ご自身がテーマだけを決めて、あとはすべてをAI任せで書いてもらうケースは避けるようにしてください。例えば、集客力アップをテーマにして、AIに以下のようなプロンプトを投げた場合です。

プロンプト例

①「集客力アップをテーマにKindle出版します。原稿の構成を考えてください」
    ↓
②「その構成で執筆してください」

①と②の間に、構成に対してのやり取りが発生した場合、創作的寄与が発生するため、生成された文章はご自身の著作となります。しかし、②のみの指示で生成された文章には、特徴がありません。あえて言えるならば「AI的文章」の特徴が目立ちます。

編集者は文章のプロです。AIで執筆した文章は、ほぼ間違いなく分かります。とはいえ、個人的にはAIで執筆することは推奨派です

AIに任せっぱなしにせず、下書きをAIに任せて、その下書きに、ご自身の特徴を盛り込めばよいでしょう。

編集者が読んで「この人に書いてもらいたい!」と思わせる内容をぜひ、盛り込んでください。

5. プロフィールを軽視する

最後に、多くの方が見落としがちなのが「プロフィール」の重要性です。商業出版では、プロフィールは単なる経歴紹介ではありません。あなたの専門性を端的に示す重要な要素です。

〈ほんたま〉に応募される出版企画書で見かける、「残念な」プロフィール例を少しだけ、紹介します。

避けるべきプロフィールの例

①文章量が少なすぎるケース

東京都在住。マーケティングコンサルタント。

→ これでは専門性が全く伝わりません。実績や強み、具体的な専門領域が不明確です。

②学歴だけを詳しく書くケース

□□高校卒業
○○大学経済学部卒業
在学中は経営学を専攻し、□□ゼミに所属
大学院△△研究科修了

→ 履歴書のような書き方では、実務での専門性が読み取れません。
学歴は専門性を補強する要素として使うべきです。

望ましいプロフィールの書き方

代わりに、以下の要素を含めて書き換えてみましょう。

  1. 現在の専門性を示す肩書き

  2. 実績(具体的な数字)

  3. 専門分野での経験

  4. 学歴(専門性を補強する場合のみ)

WEBマーケティングコンサルタント。
大手IT企業で10年間、SEOコンサルティングに従事し、年間100社以上の支援実績を持つ。
特に、ECサイトのコンバージョン改善を得意とし、支援企業の平均売上改善率は150%。
○○大学経営学部マーケティング専攻卒業後、Google認定プロフェッショナルの資格を取得。
現在は独立し、中小企業のDX支援を専門としている。
著書に『ECサイト改善の実践手法』(Kindle)がある。

プロフィールは、あなたの専門性を伝えるための「戦略的な自己紹介」です。出版社の編集者は、このプロフィールを見て、あなたの本の価値を判断します。

ちなみに「学歴がない」と悩む必要はありません。実務経験や具体的な成果のほうが、はるかに重要です(なので、よりいっそう、学歴のみのプロフィールの出版企画書はもったいないと感じています!)。

まとめ

Kindle出版は、商業出版へのステップとして非常に有効な手段です。以下の点に気をつけながら、戦略的に活用していきましょう!

  1. 量より質を重視する

  2. 自分の専門分野に焦点を当てる

  3. 読者にとっての価値を常に考える

  4. AIは支援ツールとして活用する

  5. プロフィールを軽視しない

Postscript

この記事を書くきっかけは、「たくさんKindle出版しているのに、なぜか商業出版の話が来ない」というご相談でした。Kindle出版のラインナップを見ると、ご自身の専門性が「伝わりづらい」タイトルになっていました。

こういったケースが本当に多いんです。もったいない!

本稿が商業出版をめざす方のお役に立てば幸いです。冒頭で紹介していた〈ほんたま〉へのご応募、お待ちしております(^^)

※〈ほんたま〉は、 無名でも力のある著者候補と日本中の出版社をつなぐマッチングサービスです。毎朝、本の企画を出版社の1400人以上の編集者に届けており、本を出したい人と出版社の出会いの場を提供しています。企画をお持ちの方は、初期費用を支払うことなく商業出版に挑戦できます(自費出版は扱っておりません)。ぜひ、ご利用ください。

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