森ノオトのロゴはなぜ変わったのか
NPO法人設立10周年の節目に、森ノオトはロゴをリニューアルしました。創刊時から13年にわたってみなさんに親しまれてきたロゴを、なぜリニューアルすることにしたのか。どうやって新ロゴに決まったのか。その舞台裏を編集長・梶田がご紹介します。
旧ロゴと歩んできた13年
何か活動を始める時、ことはじめにロゴを作ることが多いのではないでしょうか。対外的なアイコンとなり、世にさらされることで活動を象徴する存在に育っていくことでしょう。
森ノオトの場合、ウェブメディアの運営を事業の軸としていることや、イベントや講座などの告知のための印刷物を作ったりと、日常的に発信することが多いので、ロゴが目につきやすい団体です。
森ノオト最初のロゴ(先代)は、北原まどかさん(森ノオト理事長)が、2009年にウェブメディア森ノオト創刊のタイミングで世に送り出しました。
これが、初代・森ノオトウェブサイト!!
横浜市青葉区近隣の、ナチュラル・オーガニック志向の子育て世代の女性をおもな読者層としてウェブメディアを立ち上げたまどかさん。ウェブデザインと合わせてデザイナーさんに作ってもらったロゴは、ウェブサイトのデザインにそぐう、ナチュラルで木を連想させるようなデザインです。
リニューアルを重ねて3代目となる現ウェブサイトでも、先代ロゴがマスコットキャラクター・もりたろうとともに、アイコンとして森ノオトを引っ張ってきました。余談ですが、もりたろうはどんぐりの子ども、住まいは寺家ふるさと村の森の中というキャラクター設定です。
コロナ禍前までは、かなりの数のイベントを企画していた森ノオト。チラシでもこのとおり、森ノオトロゴがいっぱい!!
なぜロゴをリニューアルするのか
そんな愛着のあるロゴを、なぜ手放すことにしたのか。森ノオト事務局内では、たびたびまどかさんが「森ノオトのロゴ、もう変えてもいいよ」と口にしていました。創刊時からのロゴを?意外にもあっさりしている!?しかし、よくよく聞いてみると、単に気持ちが離れたといわけではなかったようです。「ウェブサイトのデザインがシンプルな今のものになってから、このロゴにこだわらなくてもいい」というのが大きな理由でした。トータルデザイン、というまどかさんの編集者らしい視点からの「変えてもいい」だったのです。
そんな「変えてもいい」時代が何年か続いていたのですが、10周年yearを迎えた今年。ある事務局会議の中で「変えるなら今だ」という結論にいたり、ロゴリニューアルプロジェクトを動かすことになりました。
ロゴをリニューアルするにあたり、お願いしたいと思う方が思い浮かび、事務局会議でも賛同を得ることができました。デザイナーさんからのご快諾も得て、いよいよプロジェクトが動き出します。
ロゴリニューアルのプロジェクトメンバーとして、理事長で創刊者のまどかさん、事務局長の宇都宮南海子さんにも加わってもらい、まずは内部で頭と気持ちを整理しました。ポイントはこの3つです。
・今のロゴのルーツを知る
・なぜリニューアルしたいのか
・どんな思いをロゴにのせたいのか
ここでは、「どんなデザインのロゴにしたいのか」ということはほとんど話し合っていません。ウェブサイトのデザインにフィットする形状のもの、そしてSNS多メディア時代ですからアイコンとなるような○の形に収まるものもお願いしたい、というベーシックなことだけ決めました。その話し合いをもって、デザイナーさんとの打ち合わせを進めていきました。
どうやって新ロゴに決まったのか
お願いしたデザイナーさんはこの方です。
重実さんは、本の装丁や美術館のポスターなどのデザインを数多く手掛けているグラフィックデザイナーです。南海子ちゃんや私の保育園つながりの友人ですが、知り合ったころは第一線で活躍されている方とは知らず。保育園の父母会報誌での子どもの様子を描いたイラストに惚れて、保育園のお祭りのチラシを作ってくれないかとお願いしたのが、最初の接点だったように思います。そのやりとりの中で、本の装丁の仕事をされていることを知りました。私の本棚にもある佇まいの美しい本のシリーズも手掛けていると知り、ドギマギしたことを思い出します。
そんな思い出話はさておき。重実さんの作られているものの魅力はもちろんですが、森ノオトが大事にしたい風景、森ノオトにかかわる人の雰囲気を知っている人であるということも、この方にお願いしたい、という理由として大きかったです。口では伝え切れない森ノオトらしさを、知っていてくれている、ということに大きな安心感がありました。胸を借りてロゴへの思いをぶつけました。
打ち合わせを経て、お願いしていた日までにロゴが届きました。
胸をドキドキさせながらメールを開いた瞬間、生まれたての何かに出会ったかのような気持ちで見ていると……はっ!!
森ノオトらしい雰囲気の中に、隠れ文字のウィットがあったのです。打ち合わせではそんなお願いをしたわけでもなく、まさか森にノオトが内包されているとは。同じものでも、見方によってこんな見え方ができるのだと驚きつつ、森ノオトの記事で大事にしたいことをこんな形で表現していただいたことに、あたたかい気持ちがこみ上げました。
南海子ちゃんは、まどかさんに「森にノオトが入っているの知ってて森ノオトってつけたの??」と冗談まじりに聞いていました。(答えは……NOでしたけどね笑)
このロゴが生まれるまでの話を、重実さんに少し聞いてみました。
ーー ノオトを森にしのばせるってことはどんなふうに思いついたのですか?
(重実さん)ノオトが、森から聞こえてくるのがいいかなって考えていて。スケッチを描きながら、森の素材をバラバラにして組み立ててみたりしました。最初はアイデアに留めていたんだけど、自然にまとまってノオトいけるんじゃないかなって。(丸形の)アイコンになったときに気付くかなって。
ーー 打ち合わせで私たちが、森という漢字への思いを語っていましたもんね。アルファベットの mori no oto がいいアクセントになっています。
(重実さん)話を聞きながら、ゴシックではなくて明朝がいいかなと思っていたんですけど、とっつきにくい感じになるといやだなって。柔らかい要素として入れたいなって思いました。打ち合わせの際に「ニュートラル」というキーワードがあったので、かわいくなりすぎない、凛としつつも、ほのぼのと、やわらかさもありつつ、といったイメージで仕上げました。
重実さんにデザインをお願いする際に、森ノオトの過去・現在・未来をお伝えしました。キーワードとして出ていた「ニュートラル」は、子育て世代を中心としつつも、性別や年代にもっと広がりがでてきたこと、豊かな未来へのアプローチを創刊時からの環境・エコのテーマから広げて地域社会全体として捉えたいという思いがありました。
ロゴに込めた思いは、ロゴリニューアルのリリースに掲載しています。
ロゴを変えたことでの変化
4月11日、ウェブサイトのロゴリニューアルとともに、SNSも一斉に新しいロゴに衣替えしました。自団体のメディアともっとも頻繁に接するのは、スタッフとしてかかわる人ではないでしょうか。私もその一人。森ノオトのなにかを開くと、新しいロゴが目にとまります。そのたびに、いいな〜と思うのです。
そんな気持ちが生まれることに驚きました!ロゴって対外的なブランディングの文脈で語られることが多いかと思いますが、内部でかかわる人の気持ちのリニューアルもあるんだなということに気がつきました。自団体がもっと好きになる。そんな効用が、ロゴのデザインにはあるんだなと。森ノオトのことを考えてロゴを作ってくださった重実さん、先代のロゴを作ってくださったデザイナーさんに感謝の気持ちを伝えたいです。
(文・写真:森ノオト編集長・梶田亜由美)