静岡の編集系フリーランスに聞く #02/DTPデザイナー髙橋まり子さん
静岡の編集系フリーランスってどんなふうに仕事をしてるんだろう? 営業はどうやって? 子育ては? 地域との関わりは?
コロナで地方移住やリモートワークに注目が集まる中、気になる地方のフリーランス生活をお伝えするために立ち上がったこの企画。静岡県内の編集系フリーランスが集うグループ「えでぃしず」がメンバーにいろいろと聞いてみました。
第2回は、DTPデザイナーの髙橋まり子さん。
●仕事のこと
━━仕事内容を教えてください。
(全体を5とすると)自営の「marico DESIGN」としてやっているのが3、アルバイトとして、不動産屋が経営している飲食店のチラシやポスターが1、デザイン事務所からの外注が1くらいの割合で仕事をしています。個人で受けているのは自営業者や個人経営の方、ときどき行政(藤枝市)の女性起業家講座から派生したその参加者さんが出店するチャレンジマルシェのポスターを作ったりしています。
━━仕事はどのようなつながりからですか?
7年前くらいに受講した女性起業家講座の同期の女性たちからとか、あとは住んでいる地域や参加したイベントで出会った方々、商工会さんからの紹介が多いですね。
━━営業はどのように?
営業は苦手で、ポスターを制作した「浜名湖おんぱく」というイベントに携わっていて、その準備で知り合った方からお仕事に繋がったり。行政の仕事は、藤枝市の女性起業講座の講師の先生から声をかけていただいたり。この起業講座がご縁で声をかけてくださる方もあります。
●フリーランスのこと
━━フリーランスになった経緯は?
浜松にある小さな印刷会社で6年くらい働いてましたが、妊娠・結婚して退社、浜松から湖西に引っ越しました。それから子供が産まれて、すぐに働きたかったのですが、デザイナーの求人がなかなかなくてモヤモヤしているとき、託児付きの女性起業家講座を知って。それならと受講しました。
あと、浜松にある会社でも就職を目指すママさんたちを応援するセミナーを開催していて、そこの後押しもあって起業しようかなと。「私はこれをやりたいんだ!」という勢いよりは、仕事がないから自分でやってみよう、という流れでスタートした感じです。
━━勤務先の印刷会社でもデザイナー職でしたか?
そうです。デザイナーとは別に企画担当がいて、私は作り込み専門のデザイナーでした。なので自分で考えて提案するというのはやってきてないんです。その前の会社もイラストレーター(注:Adobeのソフト)を使う職場だったのですが、朝の8、9時から夜の10時までとか、下手したら日付変わるまで仕事して。そこで技術を身に付けた感じです。
━━フリーランスになって苦労した点は?
苦労というか、失敗というか、わりと人を見る目がなくて(笑)。「やってもらえますか?」と相談があると、だいたい「やります」と言うのですけど、自分とお客さんが合う合わないの見極めができなくて。あれ?と思った時にはもう最終的にお断りできなくないくらいになっていて。それで(請求できずに)未払い…という方もいらっしゃりたり。40歳を過ぎてからそれがようやく分かってきました(笑)。
━━フリーランスで断るのはやはり難しい?
会社員時代は他にデザイナーさんが何人もいたので、得意不得意によって振り分けしてもらいながら任されたデザインをやっていけばよかったのですけど、そういうわけにもいかないので。依頼のあったお客様の専門を調べたり、詳しくお話しを聞いて、やったことのない分野でも受けるようにしています。
でも、難しければ、断っても良いと思います! 納期が間に合わなくて、迷惑を掛けてしまう方が、信頼を失いますから……。
━━フリーランスのいいところは?
自由なのがやっぱり一番ですよね。今回インタビューしてもらうので考えたんですけど、人と接するのが得意ではないので、フリーランスは対人関係や対面のストレスがないし、一人で気兼ねなく仕事できているのはすごくいいかなと。子どもの用事にも合わせやすいですしね。
不動産会社の(デザインの)仕事は、週3で出勤して仕事をしていたんです。でも「辞めます」と言ったらリモートでもいいからやってほしいと言われて。リモートワークを勝ち取ったこともありました(笑)。
● デザイナーとして
━━デザイナーとして大事にしていることや悩みは?
お客さんのサービスなり商品に対して私がユーザー目線で見ること。その先にいるお客さんの立場でどういうデザインだったり、どういう言葉が入ってたら買いたくなる、行きたくなるか、という目線で作ることを大事にしています。
悩みというか、私の得意なのはこのテイストです!と決まっていないので、今の様にいろいろなジャンルの仕事ができることが楽しいなと思っています。
━━デザイナーとしてのアイデアはどこから?
新聞の折込チラシを見たり(笑)。外出中にいいなって思うチラシを見かけたら持ってきて、集めて参考にしたりしてます。そのストックが床に山積みになってます(笑)。
━━紙の案件は減りつつありますか?
あると思います。実際に言われたのは、以前に作ったチラシを直したいと言われていて、「そろそろ直しましょうか」と連絡を取ったら、チラシを配りに行くのもコロナでできなくて、インスタグラムやウェブを強化して行く方にシフトしたので、チラシはやっぱりやめます、というお客さんもいたので、コロナの影響もあって減っているなと思います。
● 日常のこと
━━1日のスケジュールは?
朝が苦手なんですよ(笑)。朝4時とか5時には起きられないので日中頑張る感じです。以前は作業が大変なときは夜もやってたんです。子どもが寝てからとか。でも最近は夜も眠くなっちゃうので、急ぎの案件があると、子どもが学校に行ってからすぐに作業したり。洗濯機を回してから急いで仕事を始めて、午後になって洗濯物を干してないことに気づいて、慌てて干すということもありました(笑)。
━━仕事はどこで?
基本的には家でしてます。仕事部屋というのはなくて、寝室の一角に作業スペースを作っています。
━━コロナによる仕事や生活の変化は?
印刷物の案件が減ったり、イベント関係のお仕事は減りました。関わっている飲食店も閉店したり。打ち合わせをリモートでするようになりましたけど、その分、移動時間がないので、良い面もありましたね。あと、今まではお客さんは近隣で対面できる方に限定してたんですけど、リモートOKにしたので、地域縛りをはずしました。
━━育児をかなり頑張っていると感じますが、家での家事の分担などは?
育児は結構ほったらかしで(笑)。分担もないですね。仕事してもいいけどこれだけはやってね、ということも特に言われたことなくて。やれてないからだめじゃんと言われたことがないので、旦那さんにもっと感謝しないといけないですね(笑)。
● これからのこと
━━今後チャレンジしたいことは?
お客さんにプラスになるような、アドバイスができるようになっていきたいです。日々これに向かってがんばるということはしてこなかったんですけど、40代はまだまだ勉強していきたい。人を雇うことを目標にしていた時期もあったんですけど、教えたり人と接するのは苦手なので(笑)。だからこれからも、今まで通り全力でお客さんに真摯に向き合って。それをコツコツと積み重ねていって、50代からは誰かに技術を伝えていくような、そんなステージに立てたらいいなと、ぼんやりと思っています。
━━静岡でフリーランスを目指す人に一言
ずーっと静岡、というか浜松に生まれて、ずっと県内に住んでいます。だからほかを知らないので、違いがよく分からないのですけれど、静岡の人はのんびりしていると思います。競争心もあまりなくて、ガツガツしていないというか。逆にのんびりしすぎちゃうところはあるかもしれないですが、暮らし環境はいいので、おすすめです。
あと、フリーランス7年目なんですけど、パソコンのスキルが学べますという講座がよくありますが、これを学べばすぐに稼げる、というのはなかなか難しいのではと思ってしまいます。コツコツと積み上げてきた認知度や信頼があって今の私があると思うので。私は第二子出産と同時に起業だったのですが、子育てをしながら準備をして、少しずつスタートしていくのもおすすめですよ(笑) 。
[えでぃしずとは]
静岡県内で活動する同年代(20~40代)の編集系フリーランスが集うグループです! ライター、エディター、カメラマン、編集系デザイナーなど、メディアですでにお仕事をしているメンバーで定期的に交流会を開いています。ご興味のある方は下記をご覧ください。
https://edishizu.hp.peraichi.com/