音圧戦争の背景

一般的にラウドネス・ウォーと呼ばれる昨今の音楽媒体における音圧が大きくなっていることについて、私なりに考えを述べたいと思います。

【1】リスナーの環境
SONYウォークマンに始まる「音楽のポータブル化」によりヘッドフォン/インイヤーイヤホン等で「外で音楽を聞く」、という文化の成立により、環境ノイズに音楽が負けないようにした結果です。
これはカーステレオで聞くことを想定したモータウンの媒体にも同じことが言えます。

【2】音楽媒体のデジタル化
ご存知の通りCDは可聴域しかデータ化しておらず、「本来聞こえないはずなのだけれど、実は肌で感じていた」音域、いわゆるハイパーソニックを削りました。
上記の「耳で聞く」だけの音楽になった結果、ハイパーソニック・エフェクトの代わりとして音圧を高めたとも考えられます。

【3】DAWの影響
これまでも何度か書きましたが、DAWによるリズムのジャスト化、西寺郷太さんのおっしゃるところの「クォンタイズ絶対論」により、生演奏のリズムの揺らぎが媒体から消えました。
この揺らぎの心地良さを補充するための音圧なのかもしれない、と考えています。

上記理由により高い音圧で音楽を聞く文化は続くと思われます。
ステレオスピーカーの前で正座してレコード媒体の音楽を聞く文化が失われた今、サブスクで気軽にDAWで揃えられて圧縮されたデータで音楽を聞く時代には、それは必然なのでしょう。

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