映えだけじゃない。人と向き合うということ_映画『EMMA エマ』
「インスタ映え」人生で100回は聞いた言葉だ。
インスタグラムでは統一感のある投稿がどれも魅力的で、
多くの人々が映える写真を撮影し、投稿している。
その行為に対して否定的な人もいるが、そんな人は実際に写真を撮ってみてほしい。
いかに「映え」が難しく、高度な技術を要するかがわかるはずだ。
今回は、そんな「映え」をぎゅっと詰め込んだ映画『EMMA エマ』の感想である。
世界観はもちろん必見だが、その裏で大切なことを教えてくれた。
※ネタバレを含んでいるのでご注意ください。
※冒頭の画像はこちら
あらすじ
舞台は19世紀イギリス。身分が高く、才色兼備なお嬢様・エマは、周囲の人々の恋心に関わらず縁結びをすることが大好き。ただし、結婚はしたくないため自分の恋は除く。
そんな自尊心高めのエマは、周囲の人の縁結びに奮闘する中で自分の視野の狭さを経験し、相手を思いやる大切さを知り、自分の気持ちと向き合っていく。
これはエマが本気で人とぶつかり合い、本当の恋を見つけるまでをユーモラスに描いた物語である。
どの瞬間を切り取っても絵画のような世界観
動画を一時停止した際、ちょっと残念なシーンで止まったことは誰しも経験があることだろう。
(私も友人から送ってもらった動画で自分が半目になったシーンで停止し、なんとも言えない感情になったことは数知れない。)
一時停止の残念なシーンとは少し意味合いは異なるが、この映画の大きな魅力は「どこで一時停止をしても映画の世界観が崩れないこと」である。衣装から小物の細部に至るまでのこだわりがある。
例えば衣装では、華奢なレースのカーディガン、淡くてカラフルな色合いのスカート、控えめながらも確実に存在感を放つレトロな模様。小物では、アンティーク調の装飾がついた陶器、お屋敷に飾られている豪華な装飾の絵画、一部屋一部屋に色の異なる壁紙など・・・あげればキリがない。
小物だけではなく、シーンの要所要所に花や草木がある点や、建物の外観、作品全体のエフェクトのかけ方など、作品を取り巻く全てのものが作品全体を華やかに演出している。
作品の世界観にとことん拘ったからこそ、どのシーンを見ても絵のように美しいのだろう。
少なくともこの作品を見ている間は、現実世界の味気ない我が家を忘れさせる。
不意にクスッとなるシリアスな笑い
本作品はラブコメディということもあり、要所要所へユーモアが散りばめられている。
そして本作のユーモアの特徴は、見ている人間から大笑いを誘うような種類ではなく、
不意に「クスッ」と微笑んでしまうような笑いだ。
私はこの笑いの種類を漫画『バクマン。(※1)』に出てきた表現を借りて「シリアスな笑い」として書き換えていく。
「シリアスな笑い」とは『バクマン。』の中で、本来は真面目なシーンであるはずなのに、
思わず笑ってしまうという意味も含んでいる。
本作もその「シリアスな笑い」が至る所にある。
個人的に一番面白かったシーンは、一番最後のエマとナイトリーが結ばれた後である。
お互いに思い合っている二人がリビングでキスをしている時、たまたまそれを見ていた執事たちが顔を見合わせてそっと後ろを向いたシーンだ。
執事たちは二人の時間を邪魔しないよう至って真面目に仕事をしていたはずだが、それを視聴者の立場で見ていると噴き出さずにいられなかった。
※1:『バクマン。』大場つぐみ・小畑健/集英社/2008~2012
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何気ない一言が人を傷つけることもある
これは私がこの作品を見て何よりも強く印象に残ったことだ。
誰しも自分にとっては何気ない一言が、人を傷つけてしまったことがあるのではないだろうか。
私自身にもその経験が何度もある。
本作で、エマがみんなとお茶会をしている時、幼少の頃よりお世話になっていたベイツさんに、「あなたの話はつまらない」という意味のセリフを言ったシーンがある。
エマは場の空気を盛り上げようとして軽い気持ちで言っただけだが、ベイツさんはひどく傷ついてしまった。
私はこのシーンのエマに痛いほど共感をした。私にも経験があるからだ。
言った後でどうしてあんなことを言ってしまったのだろうと後悔と罪悪感に苛まれる。
映画でナイトリーが言った「他人を笑い者にしようとした。」というセリフは自分自身の学びにもなった。
きっと他者を傷つけてしまった時の私は、人を下げることでしか笑いが取れない弱い人間だったのだ。他人とはいえ、一人の人間であるというのに。
そんなことを言ってしまった時はきちんと他者と向き合い、謝り、誠意を見せることが必要なのだ。作品の中でエマや、エマを取り巻く人々が教えてくれた。
人と向き合うということはきっと、他者を尊敬したうえで自分の気持ちを素直に伝えることであろう。
映画『EMMA』はユーモアの中にも、大切なことを気づかせてくれる。
最後に
美しい世界観、シリアスな笑いなど作品に対するこだわりをひしひしと感じた。
さらに自分の気持ちを伝えることの大切さ、難しさを教えてくれる作品でもあった。
ユーモアの中に、学びになるテーマがあるエマの物語に出会えて幸せだ。
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