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あるクラスの『学び合い』の様子

みなさん、学校の授業は好きでしたか?
『もうここわかってるのに説明聞かないといけないのかー』
『先生の説明長い!眠い!腹減った!』
こんな経験ありませんか?笑

そんな授業とは180度無縁な『学び合い』ってご存知ですか?

『学び合い』についてはこちらがよくまとまっているので紹介します。

今回は『学び合い』を初任者から7年間実践している私が、第三者目線でクラスの『学び合い』の様子を書いていきたいと思います。

全てノンフィクションです!

では、どうぞ!!

今日の4年○組の算数の様子をお伝えします。
どうやらこの日は3,4時間目が算数のようです。
2時間続きの算数とは、かなり大変そうですね。

このクラスは『学び合い』という考え方で算数の授業をしているようです。
→『』が大事らしいですよ。
学び合い とは違うのです。
『学び合い』です!笑

1.『学び合い』① 授業前


今は授業前の中休みです。
担任の先生は中休み中に黒板へ何かを書いています。


どうやら、算数の授業の板書を事前にしているようです。
しかし、算数の板書なのに、ほとんど数字や説明はありません。めあてや目標も書いていません。
書いたのは手書きの枠です。とても算数の板書には見えません。

板書を見て、中休み中に予習する子もいます。

2.『学び合い』② 授業始め


10時50分、3時間目スタートの時間の数分前には、算数の教科書やノートを出して問題に取り組む子が数人います。そして、AさんやBさんは、
『時間だよー!』と声をかけてくれています。

そんな子達の声かけもあり、10時50分ちょうどには8割ほどの子が勝手に問題を解き始めています。

そこまでの間に先生はいっさい話していません。
なぜやる事がわかるのかというと、事前にこのようなプリントを渡しているからです。



これが単元表です。
今日の授業は小数と整数のかけ算わり算という単元の2.3時間目なのです。
昨日の1時間目の時点で単元表の説明と、簡単な10分程度のミニレッスンをすることで、やる事や計算の仕方がなんとなくわかっているようです。
そのため、自分達で時間通りに進める事ができるのですね。

とはいえ、数人の子は時間になっても始められずにいます。
中休みが中遊びの日だったので、パソコンに夢中で、片付けられていないようです。
→担任はあえて声をかけません。

そんなCさんですが、数分経つと自分でノートを開き、問題を解き始めました。
これは4月からの大きな成長です。


3.『学び合い』③ 授業中


先ほどの単元表、かなり難しい問題が含まれていることにお気づきでしょうか?
大人でも少し考えてしまうような問題ですよね。

1.24✖️8を筆算した時、なぜ、答えの小数点が1.24と同じ位置に来るのかを説明する。



四則演算の単元は、ただ計算の仕方を形式的に教えて終わり、ということも多くあると思います。
その場で計算はできても、これからの算数、数学で理屈がわかっていなければ必ずつまづいてしまいます。

今回でいえば、小数点を右にずらすとは、どういう意味なのか、小数の足し算引き算の筆算は位を揃えるのに、かけ算はなぜ揃えないのか、1.24とは0.01が何個分なのか、など。

これを理解する事が今回の2時間の算数における最大の目標です。

今日の授業の目標は単元表にある通り、

『小数✖️整数の仕方を知り、筆算の意味を理解する』です。

その目標達成には問題演習だけでは不十分だと担任の先生は思ったのでしょう。

しかし自分のノートにこの説明を書いて、なおかつクラスメイト3人に説明するとは、なかなかの難易度ですよね。

しかし、担任の先生は全体に教える気配はいっさいありません。

では、授業中、担任は何をしているのかというと…

1.クラス全体を俯瞰し、いいところを褒める。

2.質問に来た子への対応

3.遊んでいる子、手が止まっている子への対応

のようなことをしています。

3.1 クラス全体を俯瞰し、褒める


例えば、この日はこんな場面が見られました。

算数が苦手なDさんと得意なBさんが一緒に学習しています。

Bさんが別の子に教えに行った際、机を覗いてみると、次のような紙が置いてあったのです。



手書きの九九表です。
Bさんともう1人Eさんが算数苦手なDさんのために計算の手助けになるよう九九表を作り、置いていったのです!

このことは、担任はこの場面を見るまで、一切のことを知りませんでした。

この九九表を作る、という単純なことの中にはたくさんの要素が詰まっています。

1.Dさんは九九が苦手、ということをクラスの子に知られていて、公表する事ができる。

2.BさんとEさんは、Dさんのつまづきポイントが九九であることに気づき、自力でできるようにするために、手助けとして九九表を作った。

つまり、
できないことを恥ずかしいと思わず、馬鹿にされず、受け入れてもらえる
という心理的安全性が高い環境がそこにあるということなんですね。

また、教員ですら大変な
どこでつまづいているかの把握と支援方法
を適切に周りの子が認識しているのもポイントです。

こういうことを見逃さず、見かけたその時か、授業後の語りで全員に共有する、それが大きな教員の役目です。

また、よい説明や解き方、教え方をしている子を褒め、全体に共有するのも大切な役割です。

この日はAさんとEさん、Fさんの説明が上手でそれを褒めました。全体へ向けて。

『Eさんのノートわかりやすいなー!説明上手!』

とね。




そうすると、説明がうまくできない子は
『みせてー!』
と来るわけです。

そこでまた、
『Gさん、Hさん、すぐにいい説明の人に聞きに来るの、素晴らしいね』
とすぐに行動した子も褒めるのです。

そうすると、教員が一斉に教えなくとも、いわゆる模範解答と呼ばれる解答がクラス全体に広がっていくのです。

3.2 質問へくる子への対応


こういう授業をしていると、
『先生は教えないんですか?』
なんて声をよく聞きます。
結論から言うと、

必要があれば教えます!

ただ、一斉に同じことを教えるというのは、時に非効率だと思うこともあるのです。

すでにその問題を理解している子はその時間はあまり必要がありません。
逆に教員の短い説明だけでは全然理解できない子も、その時間はあまり効果がありません。
教員の説明でわかるようになるのは、実はクラスの3分の1程度なのでは無いでしょうか。

だったら、本当に必要最低限なことだけを伝えて、あとは自分で学べる方がはるかに効率が良いはずです。

その時に大事なことは、できるようになるためにはいろんな手段があり、迷惑をかけてなければ、どんな手段を使ってもいいということです。

友達と相談する、教室の前に置いてある答えを一度見に行く、教科書を読む、先生に質問する、いろんな手段があります。

こんな感じで解答を置いておきます。


それを選べるようにするのが、大切であると感じます。

そのうちの一つ、質問に来る子への対応が、授業中における大きな教員の役割の一つだと思います。

この日も5人くらいの子が自ら担任に
『この説明でいいか見てください。』
『説明の仕方がわからなくて…』
と聞きに来ました。

その中の1人Iさんは担任に小数点をずらすとはどういうことなのかを聞きに来ました。

担任の説明がその子に伝わるとは限らず、他の子の説明の方が伝わることも多々あります。

幸いこの時は2分ほど説明すると、
『わかった!』と言いながら机に戻っていきました。

そのあと5分ほど経った後、説明を読んでみると、これはまたとてもわかりやすい説明になっているんですよ。

例のごとく
『Iさんの説明わかりやすいよ!』
と全体に伝えるのです。

その後、Jさんもおなじところでつまずいて、担任に聞きに来たので、今度は
『Iさん、今度はJさんに説明してみて!わからなければ先生が教えるよ』
のように伝えました。

そして、無事Iさんの説明でJさんも無事できたのです。

これは担任が教えるよりもIさんもJさんも成長していることにお気づきでしょうか?

このように子供同士をつなげてあげるのも教員の役割かと思います。

また、教員が質問に答えることで、より高いレベルの子の満足度も高めることができます。

このように教員個人と、本当に教員の力を欲している子に時間を使えるのも『学び合い』のメリットかと思います。

ただし、『学び合い』初期のうちにあまりにも質問に答えすぎると、みんな教員に質問に来てしまうので、そこは注意が必要です。

3.3手が止まっている子、遊んでいる子への対応


2時間続きの算数。集中力が続かず、遊んでしまう子もいます。

遊ぶまで行かなくても、算数とは関係のない話をしてしまったり、机に突っ伏してしまったり。

この日もKさんとLさんは関係ない話をしていたんですね。
そこで担任は注意をするわけでもなく、すっと近づいて様子を見ているんですね。

そうすると、2人とも気づいてやり始めます。

こんな声かけもクラス全体に向かってありました。

『授業中一緒に勉強するベストな相手と、中休みや放課後一緒に楽しく遊べる相手は=じゃないよね?授業中に関係ない話をしてしまうなら、それは授業中に一緒に取り組むベストな相手と言えるのかな?』

はじめは遊んでいたり、関係ない話をしてしまっていた子たちも、このような担任の行動で多くの子が自ら気づいて学び方を修正していきました。

自ら修正できない子も、この声かけを聞いた周りの子たちが、
『一緒にやろうよ!今何番?』
のように、
『やりなよ!』
ではなく、提案する形で声かけしていました。

担任が
『やりなさい!』
と叱責すれば、その場はやるかもしれません。
しかしそれは、成長と言えるのでしょうか?

自ら気づき、修正していくこと。
自分の弱さに気づき、乗り越えようとすること。

これが大事なのではないでしょうか。

4.『学び合い』④ 授業後の語り


黒板に書いてある12時10分が近づきます。
そうすると、AさんとBさんが
『そろそろ12時10分だよー!座ろう!』
と声をかけました。

そうすると、集中して時間を見ていなかった子たちも座り始めます。

12時10分になると、担任が全体の前に立ち、話し始めました。
授業中にあったよかった場面をクラス全体に向けて語っています。
しかし、目標である単元表①②③の部分は残念ながら全員できませんでした。
そのことについて、
『次の割り算こそは、全員達成しよう!今日できなかった人も、単元はまだまだ続くから、最後にできればいいんだよ。できている人が大事ですね。』
と話していました。

最後に本当に今日の部分が定着しているのか、できたの部分に貼ってある子の中からランダムで問題を解いてもらいます。
当たったのはMさんとNさん。黒板に書きます。周りのみんなも静かに見守ります。

2人とも緊張しながらも、無事正解!
拍手が巻き起こりました。

最後に単元表の一言振り返りを書き、ノートを提出して、授業が終わります。

ちなみに次の振り返りの子は、算数が苦手で、本人と担任の相談の結果、説明問題をやらなくて良いことにしたようです。
振り返りには『自分でできた!』という、達成感が感じられますよね。


5.最後に

今回は『学び合い』の授業を第三者目線で語ってみました。
書き方が多少美化されている気もしますが…笑
全てノンフィクションです。

AさんからNさんまで、全て別の子です。
つまり、ここで書いた子たちだけでも2時間の授業中で担任は14人の行動について詳しく見とっていると言えます。一言振り返りの3人も別の子です。17人もの見取りを、なかなか算数の授業ではできないのではないでしょうか。

これが完璧な授業、とは一切思っていません。
まだまだ発展途上。

しかし、この辺りで『学び合い』をしっかり言語化しておきたい、そのように思い、今回書かせていただきました。

『学び合い』について少しでもイメージが伝われば、こんなに嬉しいことはありません。

お読みいただき、ありがとうございました!

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