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【20代フリーター】拒食・過活動。卒業1年半後のお話

みなさんこんにちは。摂食障害オンライン相談室を運営する、元摂食障害の心理士、渡邉茜(わたなべ・あかね)です。

この企画は、当カウンセリングの卒業後を追う企画。

今回ご紹介する卒業生は、現在20代フリーターのアンさん(仮名)。
2021年5月に卒業し、約1年半ぶりの近況報告インタビューを行いました。

課題/回復のアプローチ

【アンさんカルテ】
■症状:拒食・オルトレキシア・過活動
■カウンセリング期間:2020年4月〜2021年5月(1年1ヶ月)
■サポート内容
2週間に1度の通話カウンセリング

■プロフィール
2020年開始時、22歳。1日のルーティン、過活動の日課により、社会生活が送れなかった。お母様と仲が悪いわけではないが、本音で話せなかったが、回復の過程で本音がスッと言える関係になった。バイトに挑戦し、現在も続いている。

※当時の初回カルテ
元々太っていたこともあってダイエットを始めて、やめられなくなりました。5ヶ月ほどで体重が半分くらいになって、何度か倒れてしまったことがあります。2018年12月から今まで病院に通っていましたが、なかなか思うように治療が進まないので、カウンセリングを受けてみることになりました。病院では、血液検査の結果、低血糖や貧血があると言われました。生理は1年半ほど止まっています。摂食障害と直接関係があるかはわからないのですが、4年ほど前に社会不安障害と診断されたことがあります。

※1日のルーティーン
朝8時に起きて、洗濯をする。昼11時から12時まで昼食。そのあと部屋の掃除をする。13時から17時までウォーキングに行く。18時から19時まで夕飯。20時過ぎからお風呂。23時から24時の間に就寝する。

■過活動の緩和
とにかく過活動の緩和が課題でした。1日の予定が分単位で決まっていたので、それを崩すという大きな壁がありました。

■社会復帰
初回で、回復したい理由を「早く仕事をして収入を得て、母の負担を減らしたい」とお話しされていたことが印象的でした。そのためには、1日のルーティンを崩し、その空いた時間で働けるような仕事を見つける必要がありました。

■食事内容の改善
食事も1日1000kcal以下で、オルトレキシア気味。食べられるものも決まっていました。しかし、「過活動が緩和できれば、食事のこだわりの緩和はあとからついてくるだろう」と考え、積極的に食事のアドバイスはしませんでした。(結果的に、途中でお母様と外食を楽しんだり、食事の幅を広げることができました)

■お母様との関係改善
良くも悪くも、お母様と共依存関係にあるように感じました。しかし、お互いがお互いを思いやるあまり本音で会話ができていない課題がありました。お母様との関係改善が、摂食障害回復の一助になると考えました。

卒業1年後のインタビュー

【1】カウンセリングをうけようと思った理由

1日4時間以上のウォーキング、水泳、その他の運動、食事制限などで生活が縛られていて、とても生き辛かった。仕事をすることも出来ず、情緒不安定で母に当たってしまったり、罪悪感で死にたくなる毎日を変えなければいけないと思ったから。(カウンセリングを受けるうちに、変えなければが変えたい、変わりたいになっていった)

【2】実際に受けてみて、カウンセラーあかねの感想

1番最初にお試しで受けてみた時に、うんうんって頷きながら聞いてくれるのがとても心地良かった。私の話を最後まで聞いてからアドバイスもくれるし、意見も言ってくれる。何より、実際に経験した方だから理解してくれるのが嬉しかった。

当時、私には実績がほとんどない中で頼ってくださいました。私は「傾聴だけでは摂食障害の回復につながらない」と考え、割と図星になるようなことをズバッと指摘したり、具体的なアドバイスをするようにしています。しかし、それらの指摘や助言は信頼されないと受け取ってもらえないので、とにかく初めは信頼されるために、心の苦しみを共有したいと思いました。

【3】実際に受けてみて、症状・生活・価値観の変化

運動を少しずつ減らして、その時間を好きなことをする時間に変えることが出来た。読書をしたり、音楽を聴いたり、母と出掛けたり。仕事も少しだけど出来るようになった。母と一緒に食事が出来るようになった。
以前は人の目や意見ばかり気にしていたけど、私の人生にそんなに関係ない人だ、と思うとあまり気にならなくなった。

彼女にお話を聞いてみると、一人遊びが上手だったんですよね。これって、実はとても大切で、「一人が苦手だから、常に誰かと一緒にいたい」タイプだと、なかなか「自分で自分に心地よい時間をあたえる」という癒しをつくりづらかったりする。だから、他者に依存して、他者の機嫌をうかがって、結果的に疲れて摂食障害の症状が出る、という人が多いです。

もちろん他者との関わりは絶対大切です。私自身も、周りの人の存在で回復できました。ただ、相手ありきだけでは、息切れしてしまうことがあるんですよね。そういう意味で、「自分のコントロールの範囲内で、自分を癒せる方法をもつ」ことは、回復する上でとても大切です。

彼女にそのような「本当は好きなこと」を思い出してもらい、その時間を作るために週に1回30分だけでもいいから運動をやめてみよう、という提案をしました。また、お母様の休みの日は運動をしない日に設定し、その時間を満喫することから始めました。

【4】実際に受けてみて、苦しかったこと

1番辛かったのは、母に今まで思っていたことを打ち明けたこと。小さな頃からのモヤモヤを全て話すということで、母を傷つける、悲しませるんじゃないかと思った。実際、母も私も泣いてしまったけど、お互いに気持ちを伝え合うことですっきりした。伝えるまでは緊張してドキドキしたけど、これを逃したらもう機会がない、言わなければずっとこのままだ、と思うと踏み出せた。
運動を減らすのもかなりしんどかった。1秒でも少ないと不安でイライラしたりしたけど、そういう時はいつも「母を悲しませてまで私は痩せていたいのか」と考えるようにしたら、徐々に減らすことが出来た。

うんうん、お母さんと本当によく向き合いましたよね。アンさんがえらかったのは、私が「摂食障害の本をもって、お母さんに読んでもらうように伝えてみて」と、水島先生の摂食障害の本を買わせて、それをお母さんに実際に読んでもらったことです。これ、けっこうアドバイスしても実行でいない方もいるなかで、すぐに実行に移せたアンさんは素晴らしかったです。
それがきっかけで、徐々にお母さんと本音を話せるようになりましたよね。

母娘の関係のほとんどの場合、お互いが「本音を言わない方が、相手を傷つけなくて済む」と思い込み、一方で、言わないでいることで自分も、結果的に相手も傷つけているんですよね。

本当に大切な人だからこそ、自分のことを理解してもらう。そして、相手のことも理解する。それってものすごく面倒くさいことだけど、乗り越えた先は、「どんなことがあっても大丈夫」という安心感に変わります。それを体現しておしえてくれたのがアンさんでした。

【5】卒業を決めた理由

治ったから卒業しよう!と決心したというよりも、何となく、もう大丈夫かなぁと思った。完治したとは言い切れないけど、以前のような息苦しさは感じなくなったし、何かあっても対処できそうだなと思った。

いいですね。そうなんですよね。いろんなところに書いているけど、カウンセリングの卒業の定義は完治ではありません。「症状が多少ありながらも、望む行動ができること」が、その人なりの卒業だと思っています。

【6】卒業後の症状、体重、生活など

体重に関しては、一時期のように1日何十回も体重計に乗るということは無いし、そもそも体重計に乗らなくなった。体重をそこまで気にしなくなった。体型に関しては気にする部分もあるけど、それによって生活を脅かされたり、気分が不安定になるということはなくなった。
食事もある程度好きなものを食べられるようになった。母の手料理を一緒に食べたり、外食も出来るようになった。お腹がいっぱいになることに罪悪感を覚えなくなった。
仕事の時間も少し増やせてきたし、運動ばかりに費やしていた時間を無くして、本当に自分の過ごしたい時間を過ごせるようになった。
昔は母に思ったことを上手く伝えられなかったりしたけど、今では思ったことはきちんと言える。遠慮しなくなった。母からも雰囲気が変わったと言われた。

ひゃ〜。かなり変化しましたね。めっちゃ頑張りましたね(感涙)
きっとまだまだこだわりがゼロになったわけではないと思う。でも、痩せていることよりも、もっと大切な心地よさに気づくことができるようになり、それを優先できるようになった印象です。

何より、仕事ができるようになったことで、自信もついたんじゃないかな。本当によく頑張ったね(涙)

【7】カウンセリングを受けようと迷っている方に一言

受けようかなと心に浮かんだのなら、受けてみたらいいんじゃないかなと思います。私自身、治したいとも思えない時期があったので、受けるかどうか悩む所まで来ているのなら受けてみて欲しいです。少しでも良くなって欲しいです。

そうだね、カウンセリングは治る希望でもあるし、絶対治るわけでもない。かけのようなものだよね。
でも、何かしらの気づきが得られる場にしたいと考えています。そして、自分で選んだ選択を正解にできるよう、一緒に歩んでいきたいです。

アンさん、今回はインタビューに協力してくれてありがとう。私もカウンセリングにおいて大切なことを振り返ることができました。

また、季節のお便りでもおくりあいましょう。これからもずっと応援しています。

摂食障害専門カウンセラー あかねより


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■著書「摂食障害のしおり〜ダイエット依存を卒業する5ステップ〜

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