【20代フリーター】拒食・過活動。卒業1年半後のお話
みなさんこんにちは。摂食障害オンライン相談室を運営する、元摂食障害の心理士、渡邉茜(わたなべ・あかね)です。
この企画は、当カウンセリングの卒業後を追う企画。
今回ご紹介する卒業生は、現在20代フリーターのアンさん(仮名)。
2021年5月に卒業し、約1年半ぶりの近況報告インタビューを行いました。
課題/回復のアプローチ
■過活動の緩和
とにかく過活動の緩和が課題でした。1日の予定が分単位で決まっていたので、それを崩すという大きな壁がありました。
■社会復帰
初回で、回復したい理由を「早く仕事をして収入を得て、母の負担を減らしたい」とお話しされていたことが印象的でした。そのためには、1日のルーティンを崩し、その空いた時間で働けるような仕事を見つける必要がありました。
■食事内容の改善
食事も1日1000kcal以下で、オルトレキシア気味。食べられるものも決まっていました。しかし、「過活動が緩和できれば、食事のこだわりの緩和はあとからついてくるだろう」と考え、積極的に食事のアドバイスはしませんでした。(結果的に、途中でお母様と外食を楽しんだり、食事の幅を広げることができました)
■お母様との関係改善
良くも悪くも、お母様と共依存関係にあるように感じました。しかし、お互いがお互いを思いやるあまり本音で会話ができていない課題がありました。お母様との関係改善が、摂食障害回復の一助になると考えました。
卒業1年後のインタビュー
【1】カウンセリングをうけようと思った理由
【2】実際に受けてみて、カウンセラーあかねの感想
当時、私には実績がほとんどない中で頼ってくださいました。私は「傾聴だけでは摂食障害の回復につながらない」と考え、割と図星になるようなことをズバッと指摘したり、具体的なアドバイスをするようにしています。しかし、それらの指摘や助言は信頼されないと受け取ってもらえないので、とにかく初めは信頼されるために、心の苦しみを共有したいと思いました。
【3】実際に受けてみて、症状・生活・価値観の変化
彼女にお話を聞いてみると、一人遊びが上手だったんですよね。これって、実はとても大切で、「一人が苦手だから、常に誰かと一緒にいたい」タイプだと、なかなか「自分で自分に心地よい時間をあたえる」という癒しをつくりづらかったりする。だから、他者に依存して、他者の機嫌をうかがって、結果的に疲れて摂食障害の症状が出る、という人が多いです。
もちろん他者との関わりは絶対大切です。私自身も、周りの人の存在で回復できました。ただ、相手ありきだけでは、息切れしてしまうことがあるんですよね。そういう意味で、「自分のコントロールの範囲内で、自分を癒せる方法をもつ」ことは、回復する上でとても大切です。
彼女にそのような「本当は好きなこと」を思い出してもらい、その時間を作るために週に1回30分だけでもいいから運動をやめてみよう、という提案をしました。また、お母様の休みの日は運動をしない日に設定し、その時間を満喫することから始めました。
【4】実際に受けてみて、苦しかったこと
うんうん、お母さんと本当によく向き合いましたよね。アンさんがえらかったのは、私が「摂食障害の本をもって、お母さんに読んでもらうように伝えてみて」と、水島先生の摂食障害の本を買わせて、それをお母さんに実際に読んでもらったことです。これ、けっこうアドバイスしても実行でいない方もいるなかで、すぐに実行に移せたアンさんは素晴らしかったです。
それがきっかけで、徐々にお母さんと本音を話せるようになりましたよね。
母娘の関係のほとんどの場合、お互いが「本音を言わない方が、相手を傷つけなくて済む」と思い込み、一方で、言わないでいることで自分も、結果的に相手も傷つけているんですよね。
本当に大切な人だからこそ、自分のことを理解してもらう。そして、相手のことも理解する。それってものすごく面倒くさいことだけど、乗り越えた先は、「どんなことがあっても大丈夫」という安心感に変わります。それを体現しておしえてくれたのがアンさんでした。
【5】卒業を決めた理由
いいですね。そうなんですよね。いろんなところに書いているけど、カウンセリングの卒業の定義は完治ではありません。「症状が多少ありながらも、望む行動ができること」が、その人なりの卒業だと思っています。
【6】卒業後の症状、体重、生活など
ひゃ〜。かなり変化しましたね。めっちゃ頑張りましたね(感涙)
きっとまだまだこだわりがゼロになったわけではないと思う。でも、痩せていることよりも、もっと大切な心地よさに気づくことができるようになり、それを優先できるようになった印象です。
何より、仕事ができるようになったことで、自信もついたんじゃないかな。本当によく頑張ったね(涙)
【7】カウンセリングを受けようと迷っている方に一言
そうだね、カウンセリングは治る希望でもあるし、絶対治るわけでもない。かけのようなものだよね。
でも、何かしらの気づきが得られる場にしたいと考えています。そして、自分で選んだ選択を正解にできるよう、一緒に歩んでいきたいです。
アンさん、今回はインタビューに協力してくれてありがとう。私もカウンセリングにおいて大切なことを振り返ることができました。
また、季節のお便りでもおくりあいましょう。これからもずっと応援しています。
摂食障害専門カウンセラー あかねより
■毎週月水金17:00〜YouTube
■著書「摂食障害のしおり〜ダイエット依存を卒業する5ステップ〜」
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