Carly Simon の "You're So Vain"(92WPM)=英語教材のお話(その51)=

第二段階(100WPM)のスピードの歌

 エルヴィスとビートルズ以外のスピードを意識した歌の紹介シリーズで、第一段階の "Will You Still Love Me Tomorrow" に続いて、今回は第二段階に近い92WPMの歌、カーリー・サイモンのヒット曲 "You're So Vain" になります。

vain という形容詞

 伝説のブルーズマンのロバート・ジョンソンに "Love in Vain" という歌があって、これをローリング・ストーンズがカヴァーしました。

 この love in vain の vainは、「むなしい」という意味です。この歌では、報われない愛や叶わない恋愛に対する嘆きが歌われています。
 「うつろな愛」と邦訳されたカーリー・サイモンのヒット曲。70年代のシンガーソングライターであれば、キャロル・キング、さらにはジョニ・ミッチェルのほうが個人的にはよく聞きましたが、高校時代にリアルタイムで聞いた1972年の "You're So Vain"。

カーリー・サイモンの「うつろな愛」

 vain という形容詞をなんとなくロバート・ジョンソンやローリング・ストーンズのブルーズから、「うつろな」満たされないというイメージを持っていたので、この vain が「うぬぼれた」「自己中心的な」という意味と知って驚きました。
 このヒット曲のメッセージは、相手男性の自己中心的でナルシストである性格を皮肉っているもので、「この歌はあんたのことを歌っていると思ってるんでしょ」("You probably think this song is about you")、「そうなんでしょ」("Don't you?")が決めゼリフになっています。
 この歌のモデルについては長年論議がありました。カーリー・サイモンは、近年、少なくとも相手の一人が 俳優のウォーレン・ベイティ であることを明らかにしました。

世の中嫌な男性が少なくない中で女子にとって"You're So Vain"はぐっと溜飲を下げてくれる歌なのでしょう

 嫌な男子も嫌な女子もいるというのが世の中というもの。しかし権力的には男社会だから、相対的にはろくでもない男性のほうが多いでしょうね。"You're So Vain"は、女子にとっては、ぐっと溜飲を下げてくれる歌だから大ヒットしたのでしょう。最近の音楽業界には詳しくありませんが、人気アーティストのテイラー・スウィフトが、カーリー・サイモンと一緒に歌っている動画もあります。

少し解説してみると

 冒頭、カーリー・サイモンは大声で発話していませんが、"Son of a gun"と言っています。これは、SOB同様、通常使うべきでない表現で、ろくでもない奴ということ。あるいは間投詞的に「くそったれ」ということ。
 歌全体は、はっきりした発音でカーリー・サイモンは歌っています。
 歌の冒頭で「あなたはヨットに乗り込むようにパーティーに入って来た」(You walked into the party like you were walking onto a yacht)。「戦略的に考えて帽子で片目を隠し。スカーフはアプリコット」(Your hat strategically dipped below one eye Your scarf it was apricot)と相手を紹介します。
 「気取ってガヴォットを踊る自分の姿を見に片目を向けていた」(You had one eye in the mirror, as you watched yourself gavotte)は、酔いしれていた、自分の姿に見惚れていたということ。嫌な奴ですね。
 「女の子という女の子たちが自分のパートナーになりたいと夢見ていると」(And all the girls dreamed that they'd be your partner)。
 「でもあなたは自己陶酔が強いだけの男」(and You're so vain)。「たぶんこの歌は自分の歌だと思ってるんでしょう」(You probably think this song is about you)。「きっとこの歌は自分の歌だと思ってるんでしょう」(I'll bet you think this song is about you)「そうなんでしょう、そうでしょう」(Don't you? Don't you?)と畳みかけます。バックヴォーカルをミック・ジャガーが担当しています。
 2番3番はざっとの説明にします。
 give away は、「譲る」「捨てる」ということ。"But you gave away the things you loved And one of them was me" というオチが効いています。
 「コーヒーの中の雲」("clouds in my coffee")というフレーズは、アメリカ人でも意味不明のフレーズと言われていて、このフレーズをカーリー・サイモンは飛行機の中で思いついたようです。「コーヒーの中の雲」は、見通せない人生と愛に関して混乱する局面というシンボルのようです。
 3番のサラトガは、競馬場のある高級リゾート地のサラトガのこと。カナダのノヴァスコシアにも触れています。eclipseとは、「日食」のこと。歌われる男は 世界をジェット機で飛び回っている beautiful people の一人なのでしょう。ちなみにリアジェットとは、小型ジェット機のブランド名なのでLearjetと大文字を使うべきところ、小文字で処理されている場合は普通名詞化しているということなのでしょう。さらに「地下世界のスパイ」(underworld spy)、「親友の奥さん」(the wife of a close friend)というイメージが用いられています。

カーリー・サイモンの "You're So Vain"のスピードは 92WPM

 全体の語数は338語。3分31秒で、221秒。冒頭で言ったように、"You're So Vain" は、92WPMで第二段階の歌になります。もちろん第一段階の歌より早い分初級者には難しくなります。
 「結構です」「大丈夫」と、文脈によってどう理解したら良いのかという語彙は日本語でもあります。今回は英語の vain を材料に紹介してみました。
 "You're So Vain"は、意味の区切れ(センス・グループ)がわかりやすいのでとても歌いやすいと思います。以下、カラオケヴァージョンでどうぞ。

つまらないと思った人は別の教材を探しましょう

 たとえヒット曲であっても、つまらないと思えば、あなた向きではありません。そんな教材は捨てて、自分にあった教材を選びましょう。




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