「プー横丁にイーヨーの家がたつ話」(137WPM)は落語である=英語教材のお話(その7)=
子ども向けですが本格派教材です
本日もYouTube教材からです。
子ども向けではありますが、大人向けでもあります。かなりの本格派の教材を持ってまいりました。
本格派ですから、全くわからなくても、気にしない、気にしない。
こんな感じのものがわかったらなぁという感じで気軽に考えて下さい。
「言語」学習的に副読本で「熊のプーさん」の原書を読まされた高校時代
「学習方法のお話」ところで、言語学習と言語活動学習のお話をしました。そこでもお話ししたように、都立高校時代に、三省堂のクラウンの教科書にはプーさんのレッスンが1課あって、副読本でも「熊のプーさん」の原書を一冊読まされました。高校1年生のときのことです。これは学年9クラス全員の副読本基本課題であって、高3で理系・文系くらいのクラス分けはありましたが、多分、全員が家庭学習もふくめて英語の授業で読まされたと思います。
岩波少年文庫を買って、石井桃子さんの翻訳にうなってしまった
アンチョコのつもりではなかったのですが、岩波少年文庫(これ、「少年少女文庫」でないと今どき不適切ですよね)を買って、石井桃子さんの訳を読みました。翻訳とはこういうものをいうのだと、石井桃子さんの上手なその訳にうなりました。
まさに石井桃子さんの日本語力ですね。
既習であるアルファベットのABCはわかるのに、その説明がさっぱりわからなかった「セサミ・ストリート」
現代の高校生が知っているのかわかりませんが、当時、アメリカ合州国の「セサミ・ストリート」という子ども番組を日本でも放映していて、高校生のとき、たまに見ていました。番組内容は子どもたちにABCなどアルファベットを教える番組なのに、その説明部分となると、たとえばクッキーモンスターが何を言っているのかさっぱりわからない。ABCは、もちろん「言語」学習として知っているのに、そのABCを説明する「言語活動」であるスピーキングがさっぱりわからない。高校時代の私は、リスニングが徹底して弱い、自らの歪んだ英語力に落胆したものです。
自然に学習する「言語活動」習得と、学校などで学ぶ、まさに「言語」学習との違いですね。
当たり前のことですが、前者の「言語活動」習得が、日本の一般的高校生にできるはずもありません。
ここで大切なことは、その言語活動が子ども向けだから外国語学習者にとって易しくなるのではないかと一切期待できないことです。フォリナートークのように、子どもをバカにして手加減するなら話は別ですが、多少はそうしたことがあったとしても、母語話者でない外国人とって母語話者間の言語活動というものは、対大人でも、対子どもでも、同じような水準で同じように難しいのです。
教材として、まずテキストとゆたかな朗読音声を準備しましょう
都立高校時代に副読本としてリライト物ではなく原書を買わされた経験。生まれて初めのペーパーバックを手にしたときの新鮮さ。高校1年生の私にとってはそこに静かな感動がありました。
その原書をきれいなまま読みたかったのですが、そんな希望は叶いません。日本語を書き込んだり、線を引いたり、えっちらおっちらと、英語と格闘したことを覚えています。
数年後に、かけだし英語教師になってからも、ときどき、プーさんを読んでいました。A.A.ミルンの他のペーパーバックも購入しました。
そうして手にしたのが、イギリス人のライオネル・ジェフェリーズの朗読です。朗読の息づかいがまるで違うんですね。で、これはもう「日本昔話」の故常田富士男さんレベルだと思いました。
まだそのカセットテープは持っていますが、それを今回YouTube で探してみましたが、ヒットしたのは、イギリス人俳優のノーマン・シェリー(Norman Shelley)さんのヴァージョンです。知りませんでしたが、この方はBBCラジオでも活躍し、熊のプーさんの代表的朗読者ということだそうです。
朗読を聞いてみると、ライオネル・ジェフェリーズさんとはまた別の味わいのある朗読になっています。プーさん役もまずまずですが、とくに、ピグレットがいい。イーヨーとなると、演出過多ということではありませんが、かなりよれよれの老人のつぶやきのようで、おそらく初中級者にとってはかなりわかりにくい発話になっていると思います。
「プー横丁にイーヨーの家がたつ話」は、137~144WPMのスピードで17分間か16分11秒のお話
さて、前置きが長くなりました。
落語とも言える「プー横丁にイーヨーの家がたつ話」(In Which a House is Built at Pooh Corner for Eeyore) のノーマン・シェリー氏のヴァージョンは以下になります。
以下は、私もCDで持っているピーター・デニス氏のヴァージョン。
テキストはもちろん同じ語数になりますが、朗読時間は16分11秒。こちらのほうが少しだけ早いみたいで144WPM。こちらのほうが聞きやすい学習者もいると思うので、どちらも聞いてみてお好きなほうを選んで下さい。
やはりテキストが必要ですね
テキストのダウンロードには、YouTubeの「文字起こし」機能を使ってもよいのですが、フリーテキストが入手できるサイトがあります。
以下は、アメリカ合州国、もしくは大概の海外においても、どこでも誰でも、無料で制限なしに使えるグーテンベルグの電子ブック。プロジェクト・グーテンベルグのライセンスのもと、この電子ブックもオンライン(www.gutenberg.org)も、コピーと再使用が可能になっています。
The house at Pooh Corner by A. A. Milne | Project Gutenberg
おそらく苦痛の16分~17分になりますがこれでコアな英語基礎力の土台がつくれたらしめたもの
おそらく、プーさんをリスニングで楽しむには、高校生の英語力ではかなり困難だと思います。子ども向けといっても、日本の高校生では、語彙力で少し、もしくは、かなり足りない。でも、子ども向けでも、大人向けでも、語順の征服を果たして、当然にもわれわれは英語の語順に習熟していないからこそ、難しいわけです。
でも、これを長期の目標にしたらよいかと思います。
1回聞いて、こりゃあかんと思ったら、もっと易しい教材に向かいましょう。無駄な時間が多くなりますから。
挑戦したいチャレンジャーは、まず、熊のプーさんの2冊目「プー横丁にたった家」の第1話「プー横丁にイーヨーの家がたつ話」の石井桃子さんの名訳を図書館で借りてきて読んで内容を頭に入れてから、英語テキストをダウンロードして、語彙を調べ、文法もチェックし、ねちねちと「言語」学習をしたのちに、再度、リスニングに挑戦することがよいと思います。「和訳先渡し」学習ですね。
それで、英語を聞きながら、ときどき、くすくすっと笑えるようになれば、あなたの英語力はぐんとアップしていることになります。これはまさに落語だなぁと感じることができれば、あなたの英語力は本物です。
その理由は、子どもの話だからわかったということではありません。
子どもの話も大人の話も関係なしに、母語話者ではないにもかかわらず、英語の語順でインプットできるというコアな英語基礎力の基礎固めの完了を意味するからです。
といっても、母語話者におけるコアな英語基礎力の基礎固めの完了と比べてみたら、私たちのコアな基礎力なんて言ってみても、デコボコもあるし、不安定なものです。母語話者ではないのですから。簡単な目標ではありませんので、落ち込まず、気長に力をつけて行きましょう。
終わりに少しだけ蛇足 ー英語は3つ並べるリズムが好きな言語
「プー横丁にイーヨーの家がたつ話」では、繰り返しの畳みかけるような英語のリズムが楽しめます。
たとえば、プーさんがイーヨーのために家を建ててあげようと提案する場面。
AもBもCもDも、みんな家を持っていると繰り返して、けれどもと、家を持っていないイーヨーの悲しみを逆接の but で強調します。使われている語彙は簡単。でも英語のリズムとスピードについていけるか。挑戦してみてください。
またイーヨーに同情して、イーヨーを助けるべくクリストファーロビンが、防水帽子と防水長靴と防水マントを素早く身につけて出かける場面は、この3つの防水グッズを素早く音読するピーター・デニスさんの表現技術ににんまりとしてしまいます。hat,boots,macintoshの三拍子を楽しんでみてください。
ちなみに、3つのものを列記する場合、日本語では、「AとB、C」となりますが、英語では、"A,B, and C"とするのが一般的です。
そしてイーヨーのために善いおこないをしたつもりのプーとピグレットが犯してしまった自分たちの大失敗に気づいても、正直にイーヨーに告白できない場面がユーモラスです。
熊のプーさんは、イギリスやアメリカの子どもだったら何歳くらいから楽しめるのだろうか。
母語にしろ、第二言語にしろ、外国語にしろ、言語力のコアな基礎力をつくることがなにより肝心です。