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今日からはじめる、アナログレコードがある暮らし

近年、レコード人気が再燃しているのをご存知ですか?アナログの音質には温もりがあるといわれますし、物として持っている喜びも与えてくれます。初めて買って聴いてみようと、レコードを探す初心者の方を近頃レコード店でもよく見かけるようになりました。インターネットで音楽がいつでも楽しめる便利な時代に、何故 いまレコードに再び注目が集まるのかきっとあなたも気になるはず。必要なものさえ集めれば、あなたの毎日の生活にも今日からでもレコードを迎え入れられます。それなら、レコードの魅力を最大限に楽しむにはどうすればいいでしょうか?

今回は、レコードでも音楽を聴いてみたいという方に向けて、隅から隅まで楽しめるとっておきのポイントをご紹介してみます。

文:福田俊一(Ecostore Records)


時代遅れか、最先端か。レコードのいま


アナログレコードは一般家庭に広く普及していましたが1980年代初頭に転換期を迎えます。当時の最先端音楽メディア、CDの登場です。82年にCDが初めて発売され、86年にはレコードのシェアを上回りました。以降、既にレコードで発表されていた音楽作品もCDで発売され、レコードの価値も存在も忘れられると思われていました。

しかし、レコードの人気は根強く、時代に抗います。

昔からの愛好家だけでなく今の若い世代をも獲得し、2020年 米国におけるレコードの売り上げがついにCDを上回ったとの報道がありました。

売り上げが逆転したのは実に30年以上ぶりの出来事です。


それと同時に今まで注目を集されなかったレコード作品も音楽ファンに再評価されるようになり、中古盤として人気が高まり値段も高価になったものも数え切れないほどあります。

それでは、レコードの魅力とは一体何なのでしょうか?

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魅力その1:音質が素晴らしい!


ファンがレコードに魅了されるポイントのひとつに音質の良さがあります。CDには人間が聴こえないとされる周波数は収録されていない反面、レコードにはその範囲の周波数が記録されているとのことです。レコードに記録されている音はCDよりも表現力が豊かで、実際の演奏に近いのだとか。それが「レコードの音質は良い」といわれる所以なのです。

レコードの作品にはオリジナル盤というものがあります。オリジナルとは書籍でいう初版のことで、最も古い、価値の高い貴重なものです。古いジャズのレコードを例を挙げると、1950年代、60年代のオリジナルを聴くとまるでスピーカーの裏に演奏者がいるのではないかと錯覚してしまうほど臨場感たっぷりの音を奏でます。一方で最近の再発盤の音質は比較的「大人しい」というか、迫ってくるような音の凄みはオリジナルほどはないように感じられます。オリジナルの音質の方が、それぞれの楽器やヴォーカルの音の輪郭がハッキリしていると表現すると分かりやすいかもしれません。

チリチリというレコード独特のノイズも魅力だという方も多くいらっしゃいますね。

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魅力その2:手間がかかるけど、それも良さのひとつ


レコードの醍醐味のひとつに”手間”があります。検索するだけで簡単に音楽が聴けるインターネットとは対照的に、レコードで聴くには様々な物が必要です。その点は、登録してスマホで聴くだけのストリーミングサービスとは明らかに異なりますね。購入したレコードには指紋が付いていたりカビで汚れていたり、聴く前にある程度のクリーニングが必要なものもあります。聴くときもジャケットから取り出して、終わったらまたしまわなければなりません。A面が終わりB面を再生するには、レコード盤をくるりとひっくり返します。手で持つ際にも盤面にキズが付かないよう丁寧に扱わないとなりません。

しかし、そうは言っても決して手間ばかりではないんです。

スマホでタップひとつで音楽を再生・停止するのとは違い、レコードであればプレーヤーの前で全部聴き終わるまで座っていたりします。物理的にも気持ち的にも音楽と真正面から向き合える良さがあるのです。手間というとネガティブな印象を受けるかもしれませんが、レコードに関しては必ずしもそうではありません。

今の便利な私たちの生活ではすっかり忘れてしまっていた音楽を愛でるプロセスが、レコードにはまだあるのです。


■知っておきたいレコードを扱う注意点5つ

・盤を持つ時はラベルとフチを手で触って持つ
・湿気が多い暗い所に長期間置かない。カビが生える原因になる
・保管する際に平置きして積み重ねると重みで反ってしまう
・窓際など直射日光が当たる場所も危険。ジャケットが日焼けしたり盤が熱で歪むこともある
・盤面をクロスなどで拭く際は軽く水で濡らして丸く円を描くように


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魅力その3:音楽を所有する嬉しさがある


レコードの魅力として、音楽をカタチがある物として所有することもあります。アルバム作品であるLPであれば約30cm、シングル盤である7インチであれば約18cmの大きさです。大きなアートワーク(ジャケットデザインのこと)はやはり見た目にも華やかで、プレーヤーを持っていなくても部屋の壁に飾っている方もいるほどです。また、ジャケット裏面には解説(ライナーノートという)が載っていたり、解説書・歌詞カードが付属しているものもあります。当時のレコーディングの背景を窺い知れる貴重な解説をじっくりと読みながら、40分間の素晴らしい音楽の世界にたっぷり酔いしれるのは何にも代えがたい至福の時だといえるでしょう。

そんな魅力たっぷりのレコード、一枚手に入ると嬉しくて次々と集めたくなるのもごく自然なことだと思いませんか?

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ところで、レコードを聴くには何が必要?


それでは、レコードを楽しむにはどんなものが必要になるのでしょうか。まず最初に、プレーヤーがなくては何も始まりませんね。レコードプレーヤーは大まかに分けて2種類あります。

ひとつは通常のもの、もうひとつはターンテーブルと呼ばれるものです。通常のレコード・プレーヤーは純粋な視聴用に設計されたものなので、DJがするようなスクラッチには対応していません。スクラッチしてしまうと故障に繋がる危険があるのでやめましょう。

そのスクラッチに対応しているのがもうひとつ、ターンテーブルです。こちらは基本的にDJプレイを目的に作られてるのが特色です。


■レコードを聴くには何が必要?
・プレーヤー(ターンテーブル)
・レコード針とカートリッジ
・フォノイコライザー
・アンプ
・スピーカーもしくはヘッドホン


プレーヤーやターンテーブルの値段はピンキリですが、新品だと安くて1万円台、高性能なものだと10万円台、数十万円台のものまであります。比較的安価な、電源を入れるだけで直ぐに聴けるプレーヤーもあるので初心者の方にはお勧めです。もちろん、中古のプレーヤーを購入する方も多くいます。

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レコードって、実際いくらなの?


機材が一式揃ったところで、次に手に入れたいのは主役であるレコードです。レコードを聴き始めたい方が最も気になるのがそのお値段ではないでしょうか。レコードの値段は安いものから非常に高価なものまで幅広くあります。新品であれば1,000円台から3,000円、4,000円辺りまでが最近の主な価格帯です(稀に10,000円近くするものもあり)。中古盤の価格はもっと幅が広く、100円のものから数十万円のものまであります。ただ、年代が古ければ古いほど高いという訳でもありません。

レコードというものは、アーティストや音楽ジャンル、レコードの製造国、そして製造された時代によっても値段は異なります。分かりやすいようにここでひとつ例を挙げてみましょう。

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John Coltrane / Soultrane (Prestige, PRLP 7142)


上の写真はジャズのサックス奏者、ジョン・コルトレーンの『ソウル・トレーン』というアルバムのオリジナル盤です。1958年に米国で録音され発売されました。現存する数も当然昔より減っており、今ではオリジナルは大変貴重な存在になっています。


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John Coltrane / Soultrane (Original Jazz Classics, OJC-021)


こちらは同じ作品の1980年代にリリースされた再発盤(リイシュー)。再発であるが故に中古市場では数も多くあります。そうは言っても、パッと見て違いは分かりにくいですよね?しかし、この2つにはレコードの価値として圧倒的な差があり、オリジナルと再発盤では中古市場で20倍以上の価格差があります。言い換えれば、この再発盤を20枚買った金額がオリジナル1枚分になるということです。

この作品を通しても、価値が高いものはこれほどまでに高価だということがお分かりいただけたのではないでしょうか。


■高額なレコードの特徴とは?

中古レコード市場で値段が上がるものには特徴があります。それは「人気が高く、価値も高い」ということです。希少性の高さが高額に繋がることもあります。

例えば、世の中でたった1人しか「欲しい」と思わないレコードの値段が上がることはまずあり得ません。しかし、100人が欲しがるレコードは言わば競り合うような形で市場でどんどん値段が上がってゆく傾向になります。

また、その逆も起こり得ます。以前は人気が高く高額だったものでも、時代の移り変わりで人気が薄れてくればそれに合わせるように値段も落ちてゆきます。新品のレコードにはあまりない、中古レコード特有の値動きだといえます。つまり、高額なレコードは「人気が非常に高い」ということなのです。



さあ、店でレコードを探してみよう


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中古レコード店というとどんなイメージがありますか?レコードが大好きなマニアックな人たちが集う賑やかな場所、それとも敷居の高い入りにくい場所でしょうか。頑固な店主がいたり、フレンドリーな店員がいたり店によって様々ですが、レコード店は意外にもビギナーを歓迎するオープンな所です。中古レコード店は魔法のような時間を提供してくれます。宝箱に潜り込んだようにワクワクする時間です。大好きな作品をレコードでも見つけたら、思わず手に取ってじっくりと眺めてしまうことでしょう。

さあ、ちょっぴり勇気を出して、ここで一緒にレコード店に入ってみましょう。


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お店に足を踏み入れると視界に飛び込んでくる壁一面の高額盤。店が誇る目玉商品です。思わず「わあ・・・」と声が出たあなたに、店員がいらっしゃいませと声をかけます。

さて、今日はお目当ての一枚が店頭で待っているでしょうか。

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店ではレコードがまずジャンルごとに棚が分かれていたり、その中でさらにアーティストが名前順(アルファベット順)で分かれていたりすることが多いです。

「ジャズのコーナーはどこだろう?」「マイルス・デイヴィスのレコードは名前順でMの棚にあるのかな?」

お気に入りのアーティストの棚を探している最中にも、見たこともないアルバムや誰もが知っている名盤が目の前に広がっています。


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ありました。あなたが探していた一枚です。値札にある商品詳細を見ると「USオリジナル」と書いてあり価値が高いものだそうです。50年以上も前のものとしては保存状態もなかなか良さそう。レコード店には客が利用できる試聴用のプレーヤーがあったりします。もし盤面に気になるキズがあるなら、店員に断りを入れてプレーヤーで試聴させてもらうこともできますよ。

お会計を終えて「ありがとうございました」という店員の元気な声が響きました。良いものも見つかりましたし、今日はこのまま家に帰ることにしましょうか。



あなたもレコード生活 始めてみませんか?


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レコードを聴いてみたいなら、機材を準備して好きなアルバムを探して入手するだけで思っているよりも簡単に楽しめます。強いて言えば、レコードに関する知識をネットでも調べて身に付けてみるとよいでしょう。レコード店の店舗であれ通販であれ、ネットオークションであれ、ドアをノックさえすれば新しい音楽の世界は瞬く間に無限に広がります。好きな人はどのレコードをいつ何処で手に入れたか覚えていることが多々あります。不思議ですが、そうやってレコードには人の思いが宿ってゆくのです。

記念すべき最初のレコードを見つけた時のその胸のトキメキは、これから何十年後もずっと記憶に残るほど大切なものになりますよ。レコードで音楽を聴いて、あなたの素敵な毎日に今までになかった彩りを添えてあげてください。



筆者紹介:
福田俊一(ふくだ・しゅんいち)
FTF株式会社 IT事業部/販売部兼務。買取部門のコラムやnoteのほか、販売部門の特集コラムを執筆。大学卒業後にレコード収集に興味を持ち、約15年かけてジャズレーベル、ブルーノートの(ほぼ)すべてのLPをオリジナルで揃えた。



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