2021年4月よりスタートした、省エネ基準適合住宅(新築)への建築士から建築主への説明義務が施行されたことは周知のことでしょうし、もう既に実践されている事でしょう。

国土交通省では珍しく専用パンフレットだけでなく動画説明など、DX時代に相応しい広報としては時流の取組だと思います。まだスタートしたばかりなので、成果は見えませんが確認申請時に必要な事項なので、まず間違い無いでしょう。

ただ、本来は2000年度から全ての新築住宅は省エネ基準に適合化させるという主旨で取り組んでいたものを、設計者含め施工者が未熟な知識と判断された事で説明義務化に留まった事です。そして、直近に河野大臣を筆頭とするタスクフォースが開催され、2025年の脱炭素化へ向けて、急遽、電光石火のごとく、やっぱり義務化へ向けて再スタートを切りました。(この内容は緊急コラムでも発信していますね)

さて、今後はこれらがロードマップ化されて公開されるわけですが、必ず段階を経て進むことですので、シリーズ化して連載して行きたいと思います。

まずは、大枠からですが「光熱費が見える化」としてラベリング形式で公開される事になっています。最初の取り掛かりは、令和4年度1月より「分譲マンション」です。続いて同年4月より「分譲戸建住宅」となっているようです。これらは「建売住宅販売」という様態ですね。そして、同年の10月には賃貸住宅がスタートします。

私は常日頃から、人によって解釈が異なるので抽象的ではなく極力同じ目線に立って具体的に説明して「なぜ」という背景を必ず納得させるように説明が必要と説いています。

では、これらの取組を消費者である一般生活者目線で解釈される要約としては、「新築にせよ、中古にせよ、賃貸にせよ、これからの「住宅」というのは、購入する又は賃貸であっても、必ず住まい方による光熱費が見えるようになるんだすね」という事です。「もう1つの解釈としては、全ての住宅に省エネルギー性能が見えるようになって、「夏も冬も光熱費が余りかからないで涼しい夏の環境であったり、温かい冬の生活ができるんだね」という事になります。しかも、背景としては共通するでしょうか「国(政府)の取組で、世界中で足並みを揃えて地球温暖化対策となる脱炭素化(CO2削減)に向けた取り組みなんだ」と。もう少し気転が周る人は、「だから自動車もガソリン車から電気自動車とかに変わるんでしょ」と。

では、我々事業者の取組はどうなるかというと、言わずと知れた、こういう情報が流れるという事は、今から省エネ化に向けて取り組んでいては遅いという事です。既に建てられている分譲系住宅においては、規模が大きい事業者にとっては「トップランナー制度」があるので、最低限の省エネ基準に沿った建物になっているはずですが、以外の事業者にとっては生活者にとっては敬遠される住宅になりますね。既にこれらの基準を満たしていない住宅がバナナのたたき売り状態で販売されているのは、そういう理由からです。そして、注文住宅系は2023年という目標値は出ていますが、あるべき姿が目の前にある以上は、今から設計/施工する住宅が、当たり前のように適合化されていて、尚且つ、十分に省エネ性能を上回るだけでなく断熱性能を示すことで、より優先権を得ることになるでしょう。

つまり、ビジネスで言えば「先行者利益」ということです。

もちろん、義務化云々に関係無く昔から断熱住宅としての実績を積んでいる事業者にとっては有利な条件になると思いますが、一旦義務化になってしまえば全員横並びになってしまい、今までの強みや差別化が薄れることになります。

では、どうやって差別化となる強みを維持、向上できる「鍵」(キーワード)は、「気密施工」と「パッシブ設計」です。

気密施工については事業者の任意設計/施工となっていますが、これこそが暑さ寒さの根幹的な断熱性能を発揮できる指標であって、気密を行わないで断熱性能が発揮できない。つまり、省エネ住宅はあくまでも一次エネルギー削減を目的とした指標であって、断熱性能はおまけ的な存在になるものです。しかしながら、断熱性能を目的するHEAT20の取組では、断熱性能が向上する事によって、省エネ化にも十分適合できる数値をもたらす事ができます。

このことが事業者側が余り理解できていない事と、消費者は殆ど知らないという事です。つまり、省エネ適合化住宅の設計/施工を行っても、光熱費は削減できるかも知れませんが、夏は暑さが軽減されなかったり、冬場においては十分に温かいとは言えず寒いと感じることもあるのです。つまり、省エネルギー性能と断熱性能は指標が異なるものであるということ、また、断熱性能のキーワードとなる気密施工は事業者側の任意の取組みであって義務化には関係ないこと、さらに専門的に言えば消費者の悩みランキングで必ず上位に入って来る「結露」(湿度)対策に関しては何ら講じられるものではないということ。

一次所得者の大半が「土地」を持っておらず、土地と一緒に新築を計画して同時に購入するのである。従来は土地や不動産業者、建物は住宅会社と二分されていたが、現代は土地購入から建物施工、メンテナンスまで含めて一社で一気通貫で購入できる。当然ながら打ち合わせが一社で完結できるものであり、消費者からすれば多くの労力が軽減できる。

「土地」を優先するか「建物」を優先するかで意見が分かれる事は尽きないものだが、このコロナの影響によって、この隔たりは愕然と崩れてしまった。もちろん、子供達の長い通学路になる学区の問題は普遍の法則で優先順位は高いものの、通信環境のインフラさえ整備できて入れば仕事の通勤環境等はこれからの住宅取得にとっては、優先順位からは薄くなって行く傾向があり、むしろ郊外を優先する可能性が高くなって行くことである。

郊外地域であれば道路を除いて両横隣り後ろの三方が建物等で囲まれていない限り、自立循環型住宅の設計が(パッシブ設計)容易になり、土地の大きさによっては、庭の確保も十分取得できるようになり家庭菜園なども夢ではありません。ぜひ、CASBEE評価認証まで取得して頂いた方が、これらの持続可能な住環境が実現すると思います。

コロナ禍の環境で学んだ事として、DX時代であるということ、通信関連のインフラさえ整備出来れば、テレワークやオンラインを通じて「家」で仕事ができる事になり、仕事も含め家族との生活を充実させたライフワークが実現します。本来の住宅という在り方は、愛する家族との充実した生活環境であり、豊かな暮らし方であり、心地良い過ごし方であるはずです。大人だけでなく子どもの成長環境も、自然環境下の方が、豊かな環境であることは承知の上のはずなので、益々、このような需要は望まれるものだと思います。これらの環境は地域活性化にも繋がることで、都市部である首都圏への一極集中型が解消されるので、国や各自治体としても思わぬ副産物の現象かも知れないことであろう。

一方で、郊外ではない都心部に近い土地を選択する場合もあるでしょうが、こういう環境下においても十分な省エネ効果があり断熱性能が発揮できる機能としては、「全館空調」を用いることができます。都心部に近い環境下では、騒音の問題や近隣へのプライバシーにも配慮が必要だということ、また、緑と土が極端に少なくコンクリートジャングルの地表や壁面では、放射冷却の効果を得ることができず、夏場などでは窓(開口部)を開けて通風するなどの行為は、逆に湿気を取り込む高湿度環境になっています。そうなると、全館空調の装備が必要となり、またその効果を十分に発揮できるように自然素材を内装仕上げ材に使用することによって、快適な環境を得ることができます。もちろん、郊外型も都市型も含め、共通性能の機能としては、必ず「気密施工」を行うことが条件となります。

次号より、これらの項目を嚙み砕きながら情報発信したいと思いますが、省エネ適合への取組みは私見ですがもっと加速することで早く実現することになると思いますよ。。。。。

それから、国の政策は脱炭素化ですが、国土交通省は既存住宅市場、つまり、リフォームであり、リノベーションが主体であるということ。ニューノーマル時代へ突入して行くという事は、リフォーム需要において大きなチャンスが訪れる、訪れているという事です。この商機であり好機は決して見逃さないように取り組んで行きましょう。

時代はデジタル時代であり、ニューノーマル化への取組が必需だということ、経済復興の形は従来通りでは無いということ、取り戻すという事ではなく、社会全体が新たにバージョンUPされることが前提です。つまり「変化」であり「進化」させなければならない事です。

20210615