
【無料】国債と社会保障費の関係
国債発行(政府債務)で調達した資金は、社会保障に使えないという主張を目にしましたので、実際には使うことが可能であり、実際に使ってきたこと、さらには国債発行が増えた主因が社会保障費の増加であることをお話ししたいと思います。
1. 特例公債というのがある
財政法の規定
日本の財政法(財政法第4条)では、「国の歳入不足を補うために公債(国債)を発行してはならない」と規定されています。
ただし、同条は「公共事業などの投資的経費(資本形成を伴う支出)のために発行する公債(建設公債)は認める」ことも定めています。
特例公債(赤字国債)の存在
実際には、いわゆる「赤字国債」を発行するための特別措置法(特例公債法)を毎年度ごとに成立させることで、事実上は歳入不足を補うための国債も継続的に発行されています。これが「特例公債(あるいは特例国債・赤字国債)」です。
つまり、
原則:赤字補填のための国債発行は禁止
実際は、公共事業向けの「建設国債」はOK + 特別法によって「赤字国債」もOK
2. 国債発行で調達したお金は何に使われるのか
建設国債(建設公債)
上記のとおり、財政法第4条が認める「建設国債」は、道路や橋梁、港湾、学校、庁舎などのインフラ整備や公共施設など、資本形成を伴う支出(建設的な経費)に充当する目的で発行されます。
特例公債(赤字国債)
毎年の特例公債法にもとづく赤字国債は、本来の税収などの歳入だけでは賄えない「一般的な経費全般」のために使われています。すなわち、社会保障費や教育、公共事業費、その他一般行政経費を含め、「足りない分の幅広い支出」に充当される形です。
3. 社会保障のための支出はどこから支払われているのか
社会保障の財源構成
社会保障給付には多様な財源がありますが、大きくは
保険料(年金・医療などの保険料)
税金(主に消費税をはじめとする国税・地方税からの国庫負担や地方負担)
国債(赤字国債を含めた公債)を含む一般会計からの繰入
といった形で混合的に賄われています。「社会保障には国債が一切使われていない」というわけではなく、実際には国の一般会計から社会保障関連の特別会計に繰り入れが行われ、その一般会計の収入は「税金+国債発行」から来ているため、赤字国債による補填分も間接的に社会保障へ使われているといえます。
「税金のみ」という誤解
社会保障費を「税金だけで全額を支払っている」と勘違いされることもありますが、先ほど述べたように「保険料+税+国債を含む一般会計」から支出されているケースが多いです。お金を一つに集めた後に支出するので、「○○の目的には税金のみが投入されている」「△△の目的には国債のみが投入されている」というように完全に分けることは難しいです。
4. 国債と税金がまざって使われることはないのか?
上の説明通り、国債で集めたお金と税入は、事実上一つの“財布“(一般会計など)に入り、そこからさまざまな支出に振り分けられている」 ので、混ぜて使われています。
確かに、国債の目的別に一般会計の中でも「建設国債充当分」や「特例公債充当分」といった内訳は立てられます。しかしながら、国債で調達した資金が特定の支出にラベル付けされて絶対にそこにしか使われない、というよりは、「予算編成上、○○には建設国債を、△△には税収を充当する」と紙の上で仕分けているに近い状態です。いったん国庫に入ったお金に物理的な区別はありません(会計上の区分はあっても、現金そのものが“仕分け箱”に隔離されているわけではない)。
まとめ
原則として、財政法は赤字補填目的の国債発行を禁止しているが、毎年特別措置法を成立させることで赤字国債も実際には発行されている。
建設国債は公共事業など投資的経費に、**特例公債(赤字国債)**は足りない分の一般的な経費(社会保障を含む広い分野)に使われる。
社会保障費は保険料・税金・一般会計繰入(国債発行分を含む)など、多様な財源が混合しており、「税金のみ」ではない。
税金収入と国債収入は会計上は区分されるが、実際には“一つの財布”のように使われている面があり、用途が物理的に分断されているわけではない。
要するに、法律上の建前と実態のギャップがあり、最終的には政府全体の「歳入・歳出の総額」で見れば、国債と税金が実質的には混ざり合って支出されているというのが実情です。
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