見出し画像

[10]所有権/財産権と世界の海洋資源の保護(Englander 2019, Nat. Sustain.)

面白い論文があったので、メモをした(ものをここに転載)。

Englander, G. Property rights and the protection of global marine resources. Nat Sustain 2, 981–987 (2019). https://doi.org/10.1038/s41893-019-0389-9

上記のcitationの通り、論文のタイトルは「所有権/財産権*1と世界の海洋資源の保護」。

地球規模での海洋資源の管理は非常に難しい。許可されていない資源の利用を防ぐことが容易ではないからである。

排他的経済水域(Exclusive Economic Zones;EEZ)は国レベルの所有権/財産権であり、なんとEEZ世界の海洋漁獲量の95%以上を占めているらしい。この論文では、船舶自動識別装置*2(Automatic Identification System;AIS)のデータを使い、EEZの無許可(違法)漁業(活動)に対する影響を検証している。

回帰不連続デザイン(Regression Riscontinuity Design;RDD)という因果推論の手法を用い、EEZの境界線の内側と外側での漁業活動の違いを比較している(境界線の内と外とを個別に集計し、それらの単純比較はできないが、境界線のギリギリ外と内では交絡要因とは独立しているという仮定を置いている)。EEZの内側では、外側と比べ、無許可の異国から来た漁業活動が81%減少していることが分かったという。


ーーーーーーーーーーーーーー

余談だが、本論文のように、経済学者の経済学的分析を行った研究論文がNatureやScience、PNAS系の一般誌に掲載されることが増えてきているように感じる。背景には、経済学者が一般誌に掲載することの利点に気がついた、利点が大きくなった、評価されるようになった、などが私の推測である(※アマチュア素人の推測です)。

ーーーーーーーーーーーーーー

*1 所有権に関する定義、特に経済学的なものは私も正しく説明できない。日本語では中村竜哉(2005)財産権の概念と定義に関する考察(1)に詳しく説明されていそう。
 経済学の五大誌の1つ、American Economic Reviewからは1967年にDemsetz (1967) "Toward a Theory of Property Rights"が出版されていた。マニアは読んでみてほしい。
*2 (1)国際航海に従事する300総トン以上の全ての船舶、(2)国際航海に従事する全ての旅客船、(3)国際航海に従事しない500総トン以上の全ての船舶、はAISを搭載することが義務づけられている(海上保安庁HP)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?