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ノア・スミス「雑居ビル:商業地区をつくるもっと優れたやり方」(2024年10月21日)
そろそろ,“zakkyo” を学ぶ頃合いだね
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今回の記事は,もともと X での連続投稿だった.ところが,これを気に入る人たちがたくさんいたので,ブログ用にまとめ直した方がいいなって考えた.主題は,日本の都市だ――とりわけ,大半の他国にはない日本ならではの小売りスペースの形態について語る.
ぼくは大勢の都市計画専門家たちとつきあいがある.だいたい都市計画の人たちは,複合用途の都市開発が大のお気に入りだ――戸建て住宅や集合住宅とお店やレストランが共存しているあり方を,彼らは好んでいる.でも複合用途の開発と一口に言っても,そのかたちはさまざまだ.そして,日本は,世界各地の高密大都市とひと味違うことをやっている.
今回の記事では,複合用途開発を2つのタイプに区分する.世界中の高密都市でよく見られる「一階のみ店舗型」では,一階のレストラン・店舗の上に集合住宅がつくられる.他方,もっぱら日本で見られる「雑居ビル型」では,すべての階に店舗が入る.
ここでの議論でぼくが論じたいのは,ようするにこういうことだ――日本の都市をああいう消費者の楽園にしている特徴の多くは,少なくとも部分的に,雑居ビルによってもたらされている.ただ,その議論を展開していく前に,何枚か写真を眺めてもらって,日本以外の世界各地で,都市部の小売店舗にいまどういうアプローチがとられているのかを示しておきたい.
一階のみ店舗型の開発:お店の上に集合住宅
世界各地で行われている商業区での複合用途開発は,たいてい,お店とレストランが地上一階にあって,そこから上の階が集合住宅(ときにオフィス)になっている.これを「ショップトップ型」または「オーバーストア型」住宅という.基本的には,高密で高層建築が並ぶ地域の複合用途開発の標準的なやり方が,これだ.
ショップトップ型の住宅は,ニューヨーク市ではものすごくよく見られる.ニューヨーク市リトル・イタリーの一例を見てもらおう――地上一階にいろんなお店の正面口が軒を連ねていて,その上に集合住宅の窓が並んでいるのが見えるね:
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グリニッジ・ヴィレッジのいかにも典型的な地域がこちら.写真を見ると,ここにも同じパターンが見てとれる:
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ショップトップ型の開発は,我が町サンフランシスコでも標準だ:
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でも,これはアメリカにかぎらない.パリのマレ地区を見てみよう:
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これは,モントルゲイユ通りだ:
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どちらの例でも,お店が1階にあって,上層階が集合住宅(ときにオフィス)になっているのがはっきりと見てとれる.
こちらはロンドンの写真だ:
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これはイスタンブール:
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さらには,アジアの巨大都市の多くも,好んでショップトップ型の開発を行っている.これは,香港の賑やかな商業地区「尖沙咀 (チムサーチョイ)」だ:
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西洋から来た多くの旅行者の目には,アジアの巨大都市は似たり寄ったりに見える.どれも,電飾看板がたくさん並んでいるからね [n.1].でも,じっくり見てみると,そういう年の多くで,看板は1階のお店にしかついていないことに気がつく.香港の旺角(モンコック)はこんな感じだ:
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ともあれ,そろそろ概要がつかめたんじゃないかな.世界各地の大都市の大半は,高密な商業地区をつくりだすにあたって,店舗・レストランの上層に集合住宅をおくようにしたんだ.
こういうショップトップ型の区画は,総じて,すごく歩きやすくて,活気があって,心地いい.ただ,混合用途開発のやり方は,それだけにかぎられない.日本は,これに代わるやり方の先駆者だ.
【続きは『ウィーブが日本を救うーー日本大好きエコノミストの経済論』でご覧ください。】