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エコロギーが「コオロギ養殖農家ネットワーク」でつくる新たな食の未来とは?

皆さん、こんにちは!野馬です。

この度、NHK WORLD JAPAN『FRONTRUNNERS』という番組にて、弊社のカンボジアでの取り組みを、取材いただきました!
アーカイブ動画はこちらからご視聴いただけます▼

番組をご覧くださった方や、普段からエコロギーを応援して下さっている方はご存知かもしれませんが、弊社のコオロギ生産は、一箇所に集中した工場生産ではなく、カンボジア・タケオ州に散在する多くの現地農家さんに生産を委託する分散型で生産をしております。
現在では、70軒を超えるコオロギ養殖農家さんと共に、安定したコオロギ生産を行っています。

今回の記事では、これまでどのように「コオロギ農家ネットワーク」拡大していったのか、私たちが大事にしている分散型生産モデルを通じて、今後何を目指していくのかを、創業からの歴史を巡りながらお話ししていきます。

農家さんからのコメントも楽しみながら、最後までお読みください!


なぜカンボジアで?
現地コオロギ養殖農家さんと代表葦苅の出会い

早稲田大学でコオロギの機能性や養殖についての研究を経て、代表葦苅が初めてカンボジアを訪れたのは2018年。何の縁もゆかりもない異国カンボジアで、わずかな人脈を頼りに、2019年からは農村開発を専門とする国際NGOとコオロギ農家育成プロジェクトを開始しました。
その当時初めて訪れた農家さんが、今でもエコロギーの事業にたくさんご協力いただいている、シノンさんという女性農家さんで、エコロギーのコオロギ農家第一号です。彼女達から、また新たにコオロギ養殖を行っている農家さんをご紹介いただいたり、新たにコオロギ養殖をはじめてみませんか?とお声掛けをさせていただき、有難いことに今は70軒を超える農家さんと連携しながら、コオロギの安定生産を行うことができています。

ーはじめて、日本人がここ(タケオの農村)を訪ねてきた時、どのように思いましたか?
シノンさん:
コオロギ養殖に限らず、海外からNGO等が来ることは特段珍しいことではなかったので、不審には思いませんでした。頻繁に家を訪れて、コオロギの様子を見に来てくれたり、コミュニケーションをたくさん取ろうとしたりしてくれていたので、彼を信頼することができ、事業に協力することを決めました。
当時私もコオロギ養殖を始めたばかりだったので、たった2つのボックスで生産をしておりました。そこから、エコロギーと一緒に生産を行うようになり、順調に生産を拡大し、今では20ボックスのコオロギを生産しています!以前は、主人が出稼ぎのためによく家を出ていましたが、現在は家族みんなで暮らせるようになりました。

シノンさん(左)とご主人

「コオロギ農家ネットワーク」を用いて分散型で生産をする意味

冒頭でも少し書きましたが、弊社は一箇所に集中した大規模工場生産ではなく、カンボジア・タケオ州に散在する多くの現地農家さんに生産を委託する分散型で生産をしております。「工場で一極集中で生産する方が低コストで生産できるのではないか?」「なぜわざわざ現地農家に委託を?」というお声をいただいたこともありますが、私たちがなぜ分散型生産モデルにこだわるのか。

環境負荷を低く抑えられる

一極集中型の大規模工場で生産するには、新たに工場を建設することになります。場合によっては、土地を切り開いて工場を建てる必要があります。「他の家畜に比べて、環境負荷が低い!」というメリットがあるコオロギを育てるために、森林を伐採し、そこに暮らす現地の方々の生活を壊してまで生産するのは、矛盾が生じます。
そこで、新興国の地方に散在するコオロギ養殖農家の方々に委託をし、彼らの軒先等の空きスペースを活用して生産をしています。

コオロギの飼育の様子

災害等からのリスクを回避できる

カンボジアは熱帯地域に属しており、干ばつや洪水、暴風雨の自然災害が発生しやすい気候にあります。またまだまだ発展途上であるため、そういった災害への対策は不十分で、建物の耐久性も高くありません。万が一、工場が災害の被害を受ければ、生産は中止せざるを得なくなります。
分散型であればどうでしょうか。たとえA農家さんで被害があっても、B農家さんは被害なしという可能性が十分にあります。また、これは自然災害に限った話ではなく、例えば何かコオロギの発育に問題があったり、病気が発生してしまった場合も同じことが言えます。工場生産であれば全滅してしまうところが、分散型であることで、A農家さんのコオロギがダメでも、B・C・D農家さんのものを仕入れられます。このように分散型生産によって、コオロギを安定的に生産することが可能となります。

新興国の低所得農家の新しい収入源になり得る

私たちが現在生産を委託をしているのは、カンボジア南部・タケオ州の零細農家です。効率的で栄養価の高いコオロギの生産方法を伝え、その方法に沿って彼らがコオロギを生産してくれています。
カンボジアの農家さんの約8割は稲作に従事しており、収穫機会は年1〜2回と少なく、自然災害のリスクにも晒されています。そこで、可能性を秘めているのがコオロギです。
生産効率の良いコオロギは、自宅の軒先で手軽に育てられ、さらに卵から収穫まで45日しかかかりません。また、生産されたコオロギは私たちが全量を現金で買いとるため、年8回の追加の現金収入機会が生まれます。このように、農家さんにとってコオロギ生産は、本業の農業を続けながら得られる、安定した収入源になっています。

ーエコロギーとコオロギ生産を始めて、変わったことはありますか?
ポンさん:
コオロギ養殖を始めた当初は手探りでやっていて、育てていたコオロギが全滅してしまったこともありました。しかし、エコロギーの皆さんが来てくれるようになって、何か異変が起きた時に相談ができて、解決策を提案してくれるのはとても心強いです。

マカラさん:
私は20年前からコオロギを育てていますが、売れるかもわからないコオロギを育てることに時々不安を覚えることもありました。エコロギーと出会って、コオロギには高い栄養価があることを教えてもらい、自分が育てているコオロギには大きな価値があることを知りました。頑張って育てたコオロギが、美味しくて健康的な食品になって、世に出ていることにとてもやりがいを感じます!

またコオロギ養殖事業以外にも、この「ネットワーク」を活用した新しい取り組みとして、弊社の契約農家さんを中心に農村の方々に向けたワークショップを開催しました。

金融リテラシーワークショップでの集合写真

昨今は高層ビルや大きなモールなども増え、発展が進むカンボジアですが、まだまだ都市部と農村部には大きなギャップがあり、情報格差や新たな価値観の受け入れ度合いの差は様々な分野で課題となっています。このような課題対しても、弊社の「コオロギ農家ネットワーク」を活かし、まずはこのコミュニティ内での情報発信取り組んでいきたいなと思っています。
ワークショップの詳細については、こちらのnoteをご覧ください▼

代表葦苅が考える、分散型生産モデルでつくる食の未来

ー「分散型生産モデル」で作りたい食の未来って?
代表 葦苅:
資源の直線的な消費・廃棄から脱却し、新たな食の繋がりを構築することや、コオロギという生命資源を循環的に活用することで社会課題を解決したいという気持ちから、当時エコロギーを立ち上げました。
現在の主要タンパク質源であるホエイプロテインは酪農由来のため、寒冷地での生産がほとんどで、東南アジアの国々は輸入に頼っています。その中で、カンボジア発でアジアの健康課題を解決するプロテイ・食料資源としてコオロギの生産を進めていきたいと思っています。

ー「分散型」で現地の農家さんと生産をする中でのやりがいは?
代表 葦苅:
農家さんと一緒に試行錯誤をしながら飼育を行い「今回よく成長したね」と共感できたときは、とても嬉しいです。私たちの研究成果をもとに培ったノウハウを教えて、農家さんがそれを実践する。時には農家さんも工夫をしながら生産をして、結果を共有してくれます。そんなコオロギ養殖によって、より多くの収入を得て、自己実現をしている姿を見ることにとてもやりがいを感じます。これからも、農家さんとは同じ生産者として研究者として、高め合える関係性でありながら、また新たな連携農家も増やしていき、分散的にいつでも、どこでも、誰でも、食料を生産できるようなネットワークを構築していきます。
そして、今世界が直面する食料問題、環境問題を、持続的に食を通じて解決していきます。

コオロギの飼育ボックス前で取材に対応する葦苅
普段の農家訪問時の様子

最後に

今回のNHK WORLD JAPANさんの取材では、エコロギーのパートナー農家さんを訪れ、コオロギ養殖の様子や現地の生活の風景を撮影いただきました。また取材ではエコロギーと農家さんの出会いから現在に至るまで、また今後について双方に取材いただきました。NHKさんから取材をいただいたことで、エコロギーとしても原点に立ち返る良い機会になりました。また、はじめて知る農家さんの想いにも心温まり、ここタケオから、サステナブルな食の未来の実現に向けてより一層尽力していきたいと思いました!

ぜひ、エコロギーが「コオロギ農家ネットワーク」で生産をする意味を感じながら、番組の方もご覧ください!

※上記HPより、アーカイブ動画もご視聴いただけます

次回は、生産から消費まで、様々なアクターと連携しながら実現するエコロギーの「循環型食糧生産」について、お話しします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました🌱

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