Z世代の感性と管理職の壁
驚いたZ世代の生活習慣
仕事の合間の雑談で週刊少年ジャンプの話になった。私たちが学生の頃は、ONE PIECE、遊戯王、NARUTO、ブリーチ、こち亀、ボボボーボ・ボーボボ、銀魂など、いまだに話題に上る名作花盛りの時代である。
ところが、若手社員は私たちが言う漫画のタイトルを聞いても頭に?が浮かんでいる様子。聞いてみると、なんとプライベートでは一切活字に触れないらしい。情報収集はひたすら動画コンテンツで、本はおろか、漫画でさえ読まないそうだ。
これにはその場にいた先輩社員一同が驚愕した。
「え、普段活字読まなくてビジネス文書とか読めるの?」
「それは仕事なので普通に読みます」
確かに現代は動画コンテンツ花盛りの時代ではあるが、漫画さえも生活から排除されてしまっているとは恐れ入った。こういう子たちは私がここで書いてる長文の文章なんてまず読むことはないだろう。
多額のお金をかけた作品はネットフリックスをはじめとしたグローバルプラットフォームが提供し、マニアックな嗜好についてはYouTubeが埋める。確かに面白おかしいものを見たいという需要は動画サイトだけでほぼ満たされてしまう。
仕事上で固い文章を読まなくてはいけない時
仕事のレベルが上がってきて、既存ルールを変えて新しいことをしなくてはいけない時、堅苦しい文章を読み込むタスクはどうしてもついて回る。管理職を目指す中堅社員以上になり、違いを生み出さなくてはいけない年次になるとこのような局面がやってくる。
ある程度大きな組織であれば、ルールを変更するための手順が内規などの形で明文化されており、これに従って偉い人のOKをもらわないといけない。既存の文書と矛盾を生じさせないようにどこをどう変えればよいのか、法的な思考が求められる。
自分で起業して人を雇う立場であれば、お硬い文章を上手く操れる人間がブレーンとして雇うというルートがある。しかし、サラリーマンをやっていて、文書対応を代わりにやってくれる人間が出てくることはまずないだろう。
そういったタスクを自分でやらなくてはいけない場合、普段から活字に触れていない状態で対応できる人間はどれだけいるだろうか。
組織内ルールの話なので、いくらネットを検索しても、YouTubeを漁っても答えは出てこない。上司や先輩がやっている姿を見て盗みつつ習得していくしかない。
必要性に迫られて必死に勉強し、習得できたとしよう。その次に現れてくる局面ではさらに教養が求められる。
構想力を問われる場面
職場で上の人から「今までにない発想で企画せよ」というセリフを聞く場面が増えた。なぜだろうか?
ふんわりと「VUCAの時代だから」なんていってもなかなか腹落ちしない。もうちょっとこの辺を掘り下げてみよう。
例えば、業界トップのA社(レベル50)と2番手のB社(レベル40)があったとする。
ここで2番手の会社がレベルを10上げるプロジェクトを進めていると、その間にA社は裏でレベルを60に上げる施策を準備している。この状態で同時にリリースすると、A社はレベル60、B社はレベル50になり、差が縮まらない。
A社のリリーススピードがB社より早ければ、一時的にA社レベル60、B社レベル40の場面が出て、さらに差をつけられてしまう。
B社が順位を逆転しようと思ったら、A社の次の一手を予想しつつ、それを上回る企画を進めなくてはいけない。
さらに、近年では全く異なる業界からいきなりレベル70の怪物が参入してくることも珍しくなくなった。レベル40のB社がいきなりレベル70になるなんて、尋常な方法では達成できない。でもやらなくてはいけない。市場は待ってくれないのだ。
そのことを分かっている役員たち経営層は、直属の部下たちの評価項目に「今までにない発想の取り組みで成果を出すこと」を加える。評価項目だけに反応して指示を出す人もいれば、背景を理解して指示を出す人もいる。
こうして、偉い人たちはレベル40を70にジャンプアップさせるような次の一手を求めるのである。
大半の社員は顕在化している10の差に気を取られ、「なんでいきなりレベル70を目指さないといけないんだ?急激な変化は痛みを伴うし、そんなハードに働きたくないよ」と不満を持つ。
背景が腹落ちしていない人だと、この反対を乗り越えられない。そして、背景を自身の体内に落とし込むには、必要性に迫られて得た情報だけでは間違いなく足りない。
動画コンテンツは隙間を埋め尽くす性質を持っている。一方、文字情報は自分のペースで読み進められるので、自らの頭で考えるスペースがある。古い考え方かもしれないが、動画コンテンツの摂取だけで大きなことを成し遂げるのは無理ではないかと私はみている。