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アンドロイドは電気羊の夢を見るか? #4
2021年、欧州は暖房の無い冬を覚悟しなければならない深刻なエネルギー危機に陥った。
その事を述べさせて頂く為に、そもそもエネルギーとは何だ?という所を色々と調べつつ自分なりに勉強して、今もそれは続いているわけだが。
学べば学ぶほど自分の理解力の無さが身に染み、その上自分の知識の浅はかさに愕然としている。
既に知っている方からすれば、”今頃気づいたの?”という話なのだが、昔から現在まで、特に今現在世界で起こっている事は全てエネルギー問題に直結しているのだ、と今更ながら(自嘲)。
戦争も、経済危機も、領土問題も、エネルギー問題と無縁の事象など一つも無いと言っても過言ではない。
(またかよ、何回目の今更よ?)と思われた方、どうかこんな周回遅れの知能で書かれた記事にかける時間を他の有効な事にお使い頂きたい。
恥を何重にも上塗りする事になるので、記事そのものを自重すれば良いのだが、申し訳ないが自嘲はしても、という事で。
無駄な時間を使える余裕のある方、笑いながらお付き合い頂ければと思う。
ぺれぴちさんは既にその聡明さでエネルギーが如何に重要かを、記事で教えてくれていた。
全11記事からなるこのシリーズを私は一気に拝読し(ぺれぴちさんの記事はどれも複数一気に読めてしまうが)、もし当時の主要エネルギーであった石炭の補給がスムーズであったなら、勝利の凱歌はバルチック艦隊の方にあがっていたのでは無いか、という感想を持った。
一つの海戦の勝敗を左右するほどに重要なエネルギーの問題は、今、電力危機として世界中に蔓延している。
表は電力危機だが裏では環境問題というのを背負ってこちらにやってくる。
背中から”How dare you!”とどやしつけられ、”進撃の巨人”のように。
とりあえず2021年冬の欧州では。。。
パーフェクト・ストーム
週刊エコノミストOnlineの2021年11月22日の記事で、欧州エネルギー取引所の高井裕之上席アドバイザーが、欧州が電力危機に見舞われた当時、世界各地で最悪の事態が同時に起きた”負の連鎖”をこう表現している。
「欧州は化石燃料の逆襲を受けている」とも。
8月末アメリカ南部を襲った大型ハリケーン「アイダ」により、メキシコ湾周辺の石油・天然ガス関連施設の大規模な操業停止。
ブラジルは過去最悪レベルの干ばつに見舞われ、総発電量のうち6割超を水力発電が占めている為、火力発電に頼らざるを得なくなり、海外からのLNG調達を増やした。
中国では9月以降、各地で停電が頻発、主力電源である石炭が不足し価格が高騰、スポットのLNG市場で“爆買い”を始めた。
こうした天然ガスやLNGの世界的な争奪戦が始まった事が、欧州に前代未聞の電力危機を引き起こした。
以下は、一連の”パーフェクト・ストーム”を一覧化したものである。
![](https://assets.st-note.com/img/1659536066650-rvl19u4ZZw.png?width=1200)
”燃料及び電力を取り巻く最近の動向について” より
争奪戦が繰り広げられた天然ガス・LNGについて。
天然ガス
石油などと同じ化石燃料の一種。メタン(CH4)を主成分とする可燃性の
気体で空気より軽く、無色無臭。
他の化石燃料に比べ、燃焼した時の二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)の排出量が少なく、環境負荷が低い。
LNG
液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)は、天然ガスを-162℃まで
冷却し液化させたもの。液化すると体積が約600分の1になることで、タン
クローリーや鉄道での輸送やタンクでの大量貯蔵が可能となる。
(日本で供給されているLNGの大半は海外から外航船で輸入されている)
石炭や石油に比べて燃焼時のCO₂(二酸化炭素)や酸性雨や大気汚染の原
因とされるNOx(窒素酸化物)の発生量が少なく、SOx(硫黄酸化物)と
ばいじんが発生しない、環境負荷の低いエネルギー。
上記2つとも環境負荷が低いのであって、ゼロではない。
天然ガスが脱炭素化に貢献する「グリーン」な投資対象だと一定条件下で認定する原案を加盟国に提示し、温室効果ガスの排出量を2050年に「実質ゼロ」とする目標実現に必要なエネルギーと位置付けることをEUが明確化したのは、2022年の1月になってからだ。
パーフェクト・ストーム当時、天然ガス・LNGも炭素に含めるべきだという議論もまだあったが、少しでも早く脱炭素実現をという夢を追った結果、再生可能エネルギーに振り過ぎたという現実を突きつけられた形となった。
安全保障、国家とエネルギー
以下、PREGIDENT Online(ニューズウィーク日本版)2021年10月27日の記事抜粋と私見を記させて頂く。
再生可能エネルギー派と化石燃料派の対決とも言えるヨーロッパのエネルギー問題をめぐる議論は、化石燃料派が風力も太陽光も安定性を欠く(そもそもヨーロッパの大半の地域は日照が少ない)為、依存できないと言えば、再生可能エネルギー派は、化石燃料は価格が変動しやすくロシア産の天然ガスに依存するのはリスクが大きいと言って歩み寄る気配は感じられなかった。
注目すべきはこの記事が2022年2月24日より約4か月前のものである事だ。
EU内でのエネルギー問題の議論の中で、天然ガスを供給する側のかの国は既にリスク因子となっている。
当時はまだEUという巨大市場に対する供給元を一国だけとするのは、競争原理の無い状態で、一つの国が一国だけでもう一つのOPECになってしまう危険性が大きいという意味合いだったのかもしれない。
だがかの人から見れば、自国がリスクとして扱われている事を逆手に取れると計算できたのはないか、と思えてしまう。
現に経済制裁が始まってから約半年が経過したが、煙のような噂は立っても事態は一向に変わっていない。
最近では、かの国を弱体化させる為にわざとやらせたのでは?と、だとしたらバイデンさん結構やるね、といった声まで出てきている。
(陰謀論に過ぎないが、しかし否定できる材料がない)
現在進行中のこの件にも、エネルギー問題が深く関わっている。2022年2月24日以前と以降でエネルギー問題は深化し、変質した、と私は考える。
以降については、稿を改めたい。
2022年2月24日以前、EUにおけるエネルギー問題はどうだったのか、という所に戻りたいと思う。
天然ガスの供給元が一つの国だけというのは、危険であるという所に戻るが、では当時のEUの天然ガス備蓄量はどうだったのか、というと。
![](https://assets.st-note.com/img/1659550404947-DWZO2jHILK.png?width=1200)
”燃料及び電力を取り巻く最近の動向について” より
赤い線がガス貯蔵在庫で、当時はグラフ内で一番下の方の貯蔵率になっている
2021年9月時点で、EU全体のガス貯蔵量は貯蔵容量の約75%である。
(2020年9月末:95%、2019年9月末:97%)
つまり、ガスの貯蔵も近年で最も、かつ著しく少ない状態にあったわけで、
この情報から電力の価格高騰にますます歯止めがかからなくなり、2021年初めには約50社だったイギリスの中小エネルギー供給事業者のうち、同年10月中旬には14社が破綻、約200万軒の顧客に影響を与えた。
エネルギー問題とはエネルギーの安全保障の問題と定義できると考える。
生活を圧迫しない価格で、止まる事なく安定して電力が社会に供給し続けられる、というのが安全保障という言葉の最低限の意味合いであると思う。
その実現の為には、市場原理と技術、政策、地政学のバランスを慎重に保つ必要がある中、EUでは市場原理に委ねようとする右派の思想と、そうはさせまいとする左派の思想のせめぎ合いが続き、エネルギー危機につながった。
EUは”現実”を見たか?
EUではエネルギー市場自由化の一環として、特定企業と固定価格で長期の供給契約を結ぶ方式をやめ、日々のスポット価格をベースにした契約に移行するよう促してきた。
それは一見、市場原理派の勝利に映るが、安定供給と価格のバランスに関する綿密な分析を踏まえた上での判断だったとは言い難い。
日々変動するスポット価格を基準にした結果、ヨーロッパ向け天然ガスの最大の供給国で、生産力には十分な余裕を持ち、故に天然ガスの価格支配力を持つに至ったロシアの優位性が一段と高まり、供給量の調節によっていくらでも市場価格を操作できる状態となった。
それだけではなく、固定価格方式の排除は供給の安定を困難にした。
天然ガスの生産とパイプライン敷設には巨額の投資と長年に及ぶ開発期間が必要だが、それほどの投資をする意欲はなかなか生まれず、従って供給側の数は限られる。
結果、ロシアの市場支配力は高まり、そのロシアは欧州地域への供給拡大に後ろ向きであったことも、2021年冬のEUエネルギー危機の要因になった。
供給減を補うには割高な液化天然ガス(LNG)の輸入を増やすしかない。
しかしLNGは従来から東アジア諸国が買っており、その価格水準はヨーロッパより高いが、買いたければヨーロッパはアジア諸国以上の価格を受け入れるしかない。
価格は市場原理に委ねると言いながら、EUはしばしば政治的な目的を優先し、総電力に占める再生可能エネルギーの割合を増やすよう加盟国に義務付けたり、電力会社が最も採算性の高い燃料(石炭)を使うことを許さなかったりし、なおかつ大半の国が電気料金やガス料金に規制(販売価格の上限等)を設けているから、電力会社はコストを消費者に転嫁できない。
さらに太陽光や風力に頼る場合、発電量は天候に左右される。
しかし電力会社は電力の安定供給と停電回避を求められているので、悪天候時のバックアップ用に在来の(つまり天然ガスや石炭を燃やす)火力発電施設も維持しなければならない。
当然だが、そうした余剰発電能力の維持には費用がかかる。
しかしその費用は、再生可能エネルギー事業者ではなく、電力会社が負担し、最終的には消費者に転嫁される。
しかもエネルギー価格の上昇を受けて、イギリスを含む各国政府は新たに価格上限を設けた。もはや市場の自由を放棄したに等しい。
また、再生可能エネルギーに莫大な投資をしながら、ヨーロッパは電力供給の要となる送配電網への投資をおろそかにしてきた。
電力の安定供給には蓄電システムやバックアップ電源の確保、送配電網の整備など複雑な体制づくりが必要で、とても民間だけでは対応できない。
電力会社に適切な蓄電とバックアップの体制を義務付けるのが無理なら、政府自身がその責任を果たすしかない。
電気自動車のために補助金を大盤振る舞いして電力の使用を増やす一方で、そこで生じる需要増に見合うだけの電力供給体制を用意しないとすれば、大規模停電のお膳立てをしているようなものである。
EUはかつて、域内の天然ガスパイプライン網を構築し、カスピ海沿岸からの新しい天然ガス輸送プロジェクトなどを進め、エネルギー安全保障の強化に成功した。
ヨーロッパにおけるガス供給の安全は高まり多くの地域でロシアの独占は失われたが、現在の欧州委員会はエネルギー政策を気候政策の一部としていて安全保障や手頃な価格のエネルギー供給にはほとんど注意を払っていない。
地中海東部など比較的近い場所で新しい天然ガス資源が発見されていても、EUの指導者たちは環境活動家の圧力に屈し、新たに利用可能な資源の開発に真剣に取り組もうとしない。
また福島第一原発の事故以来、ドイツを含む一部の諸国が原子力発電所の閉鎖や順次廃止に踏み切ったため、安全で安定したクリーンなエネルギー源が失われた。
ヨーロッパ各国はエネルギー地政学への関与をやめてしまったのだろうか。
次回、エネルギー地政学と2022年2月24日以降のEUエネルギー危機(最近の熱波の影響も含めて)について。