恐怖症。
人には個性があって「○○恐怖症」と言えば、分かりやすいかもしれない。
自分も破裂・爆発・発砲音恐怖症で、学生時代はとにかくパニックを起こしまくっていた。今でも風船やビニール袋が膨らんでいるのを見ると反射的に耳を塞いでしまうし、「喚き散らせばその場の雰囲気を壊すし、周りには迷惑しかかけない」ことを学んだのでその場で喚き散らすことはなくなったが、呼吸の仕方が分からなくなって声も出なくなってしまう。それに聴覚過敏を抱えていることもあって、突発的な音にはとにかく弱い。
そんな前置きはさておき。
自分の地元は「山!道路!海!」と言う極端な地形をしており、今住んでいる居住地でもすぐそこに山がある、自然豊かな土地である。
街中を歩けば季節ごとに花が植え替えられていたり、民家の庭先などにも花が植えられていることも多いので、買い物ついでに散歩していると季節の移ろいがよく分かる。
(時々国道沿いなどにびわの木が点在するので時期になると「おかーん!びわぁあああああああ!!」と要求したりするが、そこはご愛敬。わが地元はびわの産地で、1パックぐらいなら普通に一日で食べ切る)
そんな土地柄で生まれ育った上に、実家の化粧品店では店に頂き物の花を生けることも当たり前だったので、花と植物は日常生活で当たり前のようにあるものと思っていた。
ところが。
専門学校に進学してから困ったことが起きた。
市街地には意外と花見の名所とかが多く、街路樹とかでも桜は当たり前のように植えられている。それに伴ってイベントも多く行われていることが多い。
自分は写真撮影が趣味で、でも基本的にぼっち行動なので、たまにはクラスメイトを誘いたいこともある(ただし、カップルは除く)
自分の学科は少数精鋭で、2年次にカリキュラムが似ていた別の学科から編入した生徒はいたが、それでも8人しかおらず、入学当初に至っては7人しかいなかった(とある事情で数が合わないのはスルーで)
多分、入学前合宿の時だったか。合宿先の敷地内を回ってクイズに答えるレクレーションの時だったか、記憶は定かでない。
「ごめん、花とかマジで見るのもダメ」
「・・・はい?」
唯一自分以外で同じ学科の女子に言われ、まーじーで変な声が出た。
いや、動物が苦手なら「噛まれたりしたん?」とか、尖った物とか指先が苦手なら「あー、先端恐怖症?」、水とか高いところが苦手だったら「あーらま。マジで?」などと、知った後でも自然に会話が続けることは可能だ。
「蜂にでも刺されました?」
「あー、貰った花束から出てきた蜂に刺されてから花が苦手になった!」
「・・・はいぃいいいいいいいいいっ!!?」
いや、刺されたのがきっかけで蜂が苦手になるのはまだ納得出来るが・・・苦手になったのは花の方!!?嘘でしょ!!?
つか、うちの県、普通に生垣とかでも花とか植えられてるんですが!!?
いや、花粉症とか、匂いが苦手と言う理由で特定の花はちょっと・・・ならまだ分かるけど!!まさかの花全般苦手って!!
「卒業式どうすんですか!!?」
「悪いけど貰ってくれたらすごく助かる!」
それからと言うものの、誰かに贈り物をする時は「ごめん、花は大丈夫?」と聞くようになったのは言うまでもない。
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