不思議の国の数学者 チェ・ミンシク
韓国映画に興味を持ち始めたのは、「シュリ」を見たときからだ。
1999年、韓国で製作された「シュリ」は、それまでの韓国映画のイメージを覆し、世界中で大ヒットした。
「シュリ」には、ハン・ソッキュ、チェ・ミンシク、ソン・ガンホといった、俳優たちが共演し、彼らはその後ずっと韓国のエンタメをけん引してきた。
このように、ものすごい俳優たちが、若いころに共演した映画を見る時、何とも言えないほどの衝撃を感じることがある。
映画好きであることが、本当に幸せに感じる瞬間である。
その後2003年の「オールド・ボーイ」に主演した、チェ・ミンシクは、うまく歳を重ねて、存在感を増し、2022年「不思議の国の数学者」に主演した。
なんとも、素敵に年を取ってくれたものだとうれしくなる。
韓国の首位1パーセントの進学校に通うジウは、数学が苦手だ。なぜなら、彼は、学力で入学したのではなく、貧しい家庭の学生を救済する制度によって入学したから、勉強についていけない。
この制度は、ものすごく残酷だ。たいていの学生は、退学せざるを得ない。
この高校の夜間警備員のハクソンは、実は脱北した天才数学者だった。自分の才能が兵器製造のために使われると知って、息子と脱北したが、息子は死亡してしまう。
ハクソンが数独をしているところに、ジウが訪れ、数学を教えてもらうことになる。
ハクソンが数独をしているところが、すごく好きだ。
鉛筆で数独をしている。
そうそう、数独は鉛筆でするのが、気持ちいいのだ。
進学校での数学は、問題解決までの経過は無視され、効率よくよい点を取ることを教えている。
しかしハクソンは、経過こそが大事だとジウに教える。
圧巻は、円周率を楽譜にして、ピアノ演奏するところ。
北朝鮮側は、ハクソンは脱北したのではなく、南に拉致されたといい、ハクソンを取り戻そうとういう動きを示す。
ハクソンは、警備員を辞め姿を消す。
数年後、大学生になったジウは、ハクソンの数学研究所を訪ね、二人で、数学の問題を解くという至福の時間を過ごす。
なんだか、先生と生徒、おじさんと若者という、聞いたことのあるようなテーマである。息子を亡くした数学者と、父親のいないジウ。
「ニューシネマパラダイス」「丘の上の本屋さん」などなど。
他人であっても、父親のように、若者を育てることができる。
そのような大人が、もっとたくさんいたらいいなと思う。