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心のすみの、なんでもないもの
ふっとしたとき、心の奥の深い闇の中を、懐かしいような、心惹かれるなにかが、彗星のように、よぎっていくことがある。素早く、さっと行ってしまうので、追いかけることもできず、姿を見ることもできない。
名前を付けることがむずかしいのだけど、心の奥に、ぽっとあかりがともるような、「なにか」。
いちおう、さもないもの、とか、なんでもないものとかよんでいる。でないと、すぐどこか遠くへ行ってしまいそうだから。
形もない、言葉にもできない、「なにか」なのだけど、それはきっと、とてもだいじなものだから。
その「なにか」に近いものといったら、やわらかい薄手の楊柳の布のてざわりのようなものかもしれないし、風にただよう、ジャスミンの香りのようなもの。海を越えて、波に乗ってやってきた、はるかかなたの異国の音楽。山々の頂から流れる、雪解け水のせせらぎの音。
はっきりとした形もなく、名前もない、「ようなもの」としか言えないのだけれど、それは私の心の奥に潜んだ、本当の自分の世界をなすものなのだろう。
普段の私は、しっかり者。障害のある娘の母親。頼りがいある障害者相談員。社会福祉法人の評議員。元講師。医療法人の倫理委員。どう見ても、硬くて、まじめに仕事をこなす母親。これが外から見える私。
でも、心の奥の、小さな部屋には、名もない気持ち、名もない感覚、名もない夢などの、宝物の山がある。とても、やわらかく、あたたかく、ほのかに明るく輝いている。
それが本当の私。
小さな布で、小さなお布団を作ってみよう。
私の心をゆっくり休ませてあげよう。
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