ヤダさん襲来、躁ゲーム
朝だけだったヤダさんのお出ましが、回数が増えて、夜もやって来るようになった。
すごーく、どうでもいいことのように、私は思うんだけど、
「このふくにあう、くつしたくださあい。」とか
「とけいをいれるふくろをくださあい。」とか、
「すずしいぼうしくださあい。」とか、
頭に思いついたものを、要求する。
やれやれ、はじまったか。
靴下箱から、靴下を選んでだすと、
「ヤダー。ヤダー。」とくりかえす。
「袋箱から、袋を選んで取り出すと、
「ヤダー。ヤダー。」と繰り返す。
これを、靴下箱の全靴下、袋箱のすべての袋を出してみても
「ヤダー。ヤダー。」
声は次第に大きくなり、
「なんか、ひつとつ、くださあい。」と泣き叫び始める。
私は、一つどころか、何十も出したんだけどな。
これ以上、興奮させないように、私は逃げる、場を外す。
外を歩いたり、自分の部屋で数独をしたり。
数十分して、戻ると、また始まる。
「なにかひとつくださあい」
そこで、少し、厳しい態度をとる。
「今度出すもので、決めてください。
そして結局、もともと、選んでいた靴下に収まる。
この繰り返し、ゲームのようだ。
ヤダヤダ言いながらも、もとに収まる。
端から見たら、これはゲームだな。しかし、朝にも、数回、夜にも、数回となると、ゲームに付き合うこちらも、疲れてくるわ。
あの静かな時期が懐かしい。躁状態でなくて、静かな日々というものが、かつて存在したことすら、はるか遠くのことのように思える。
大声で多弁で、動作が活発で、押し返してくる力が半端なくて、やっぱり、もう私やってられないわ。
だけど、攻撃的でなくて、陽気な躁状態の時もある。楽しそうに、歌を歌っていたり、テレビ見て、「がはははは」と大声で笑っていたり。7月は、去年も躁だった。早く波が引いてくれますように。
しかし、私も、この襲撃に、何十年もよく耐えているなあ。ある意味、私すごい。