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いろいろ介護、愛人(?)介護

10年以上も前のお話です。
住宅地の西向きアパートの2階に、60代後半の女性が住んでいました。
西向きのアパートは、夏の午後になると、西日がガンガン射して、本当に暑くなります。
6畳間の畳が、西日焼けして茶色でした。
女性の名はエーコさん。
一人暮らし。認知症が結構進んでいますが、一人暮らし。
それでも、エーコさんは、何とか、暮らしていました。
認知症が進んで、一人暮らしなのに。

それには、ある男性の存在がありました。
エーコさんよりだいぶ若い男性が、毎日エーコさんのアパートを訪ねていました。
男性はジローさんといいました。
痩せててひょろひょろしてます。
まだ、若いのですが無職です。
シャツはいつも、しわしわで、よれよれしてました。

エーコさんは、感情を顔に出しません。
だから、ジローさんといるのが楽しいのか、嬉しいのかわかりません。
ジローさんは、毎日エーコさんにお金をもらって、コンビニに、二人分のお弁当やパンを買いに行きます。
たまに、コンビニではなくて、ホカベンを買いに行きます。

そして、買ってくるとエーコさんの部屋で一緒に食べます。
買物に行くときは、生活用品等も買ってきていました。
エーコさんは、認知症でお金の管理ができなくなっていたのですが、ジローさんが買い物をしてくれるので、生活が成り立っていました。

エーコさんは年金暮らしです。
エーコさんの年金で、エーコさんとジローさんの暮らしが何とか成り立っていたようです。

たまに、ジローさんはエーコさんにお金をもらって、舟券を買っていました。
あたるか、あたらないのかは、エーコさんにはわかりません。
もしかして、あたっていたとしても、エーコさんにはわかりません。
競艇場には、ジローさんが一人で行っていましたから。

まあ、ジローさんは無職でしたが、ボートレースは楽しんでいたようです。
ジローさんは、もしかしたら、生活保護を受けていたのかもしれないし、全く受けていなかったかもしれないし。
受けていたとしても、ギャンブルにつぎ込んでいたのかもしれないし。

私はその頃、高齢者介護の仕事をしていましたので、エーコさんの存在を知っていました。
一人暮らしで、認知症の方には、見守りが必要でした。
でも、あるケアマネがいいました。

「エーコさんは、若い愛人が付いているから、ダイジョブじゃないの。」
「ええー愛人!!」

ご近所では、エーコさんは、毎日訪ねてくる若い愛人がいるから、安心だろうという噂が持ちきりでした。
でも、私には、ジローさんは愛人には見えなかったんですよね。
なんというか、幸せオーラは全く出ていなかったし。
エーコさんに対するまなざしは、お財布目線でしたし。

まあ、よくわからないのですね。
でも、なんとか、エーコさんは独り暮らしできていたのだから、それなりだったのでしょう。
でも、ダイジョブかどうかはわかりません。

世の中、わからないことばかりです。

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