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ほかろん複雑な気持ちになる

「わかってるよ。わかってるよ。」
「おとまりのれんしゅう。」
「わかってるよ。わかってるよ。」

ほかろんは、わかっているのです。
自分がショートステイに行く理由を。
それは、お母さんがゆっくり休めるようにという理由。
「そろそろお泊りの練習をしようね。」と、知的障害対応のショートステイの申請やら、手続きやら、面談やら、診察などを始めた2月から、ほかろんはわかっていたのです。

母親が年老いてきたことを。
もしかして病気になるかもしれないことを。
自分より先に死ぬのだろうということを。
漠然とした不安を抱えていたのです。

8月末、ほかろんは初めてのショートステイに、果敢に挑戦し、
「たのしかったあ。」と帰ってきたのです。

そして、今月。
二度目のショートステイの予定の前日、ほかろんは言いました。
「おうちにいたい。」
「ショートステイにいきたくない。」
でも、そのあとにこう続けました。
「ことわらないでね。」

ショートステイに行きたくはない。家に居たい。でも、キャンセルはしないでね。ということです。
つまりは、行きたくないけど、行くから、キャンセルはしないでね。
という、ややこしい言い方。

「ショートステイは、ごはんがおいしくない。」
「地震がこわくておきてしまった。」
「よる、ねないひとがいるから、よくねむれない。」

と、今まで、言わなかったショートステイの嫌だったことを、話し始めました。
嫌だったことを言えるようになってよかった。

ああ、ほかろん。
一泊だけど、大変な思いしてお泊りしたんだね。
でも、楽しかったって言って帰ってきてくれたんだね。
ありがとう。

「ショートステイに行かなくてもいいよ。」と言ったら、
「いきます!」ときっぱり。

ヤなこともあるけど、行きますという複雑な気持ち。
ああ、わかるよ。
私なんていつもそんな気持ちだよ。
それにしても、ほかろん。
なんて、複雑な気持ちを感じとれるようになったの。
あなたはすごい。
沢山の体験を重ねることで、心がとても発達してきたんだね。
知的障害であっても、(結構重い、介護区分5)、心はどんどん豊かになるんだね。
たくさん経験して、沢山の人に出会って、沢山のことを感じることで、とても豊かな心になってきたんだね。

イレギュラーなことが続いたり、眠れなかったりすると、ほかろんが躁転してしまうのではないかと思って、ついつい、先回りして、母は過保護になっていました。
でも、ほかろんは強い。
母よりずっと強くてたくましい。
あなたを信じて、私は今日はゆっくりとレスパイトします。

明日元気に帰ってきてね。
いつもありがとう、ほかろん。

「バルフィー!人生に唄えば」 
アヌラグ・バース監督 2012年 インド

耳が聞こえず、話せないバルフィーと、自閉症の少女ジルミルとのロードムービー。ジルミルが可愛い。

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