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お母さんの休日終わりました。

待ちに待ったお母さんの四泊五日の休日が、めでたく幕を閉じました。
五月三日に水泳カウンセリングの先生の家に向かった長女。
緊張のせいか、「行ってきます」とも言わないで、黙って先生と行ってしまいました。
その瞬間、私の頭の中から長女のことはすべて吹っ飛んで、五月七日まで、一人の暮らしを思いっきり味わいました。
といってもたいしたことではありません。
でもね、私にとっては特別な暮らしです。

朝起きたい時間に起きる。
夜中に起こされない。
何かしているときに、話しかけてくる人がいない。
作業を中断することなく行うことができる。
Eテレを見なくていい。
録画した科捜研の女の再放送を見なくてもいい。
見たいテレビ番組は録画しないで、リアルタイムで見る。
お風呂が面倒なら、シャワーでいい。
読みたい本を読みたいだけ読む。
床でごろごろする。
食べたいときに食べたいものを食べる。
長女の躁転のスイッチに気を使わなくていい。
長女の着る服選びのこだわりに付き合わなくていい。
寝たい時間に寝る。
なあんにもしゃべらなくていい。
耳障りな音をシャットアウトする。
静かな暮らし。

なんて贅沢な五日間。
私はもともと、無口。
何日でも黙っていられる。
人から話しかけられるのも苦手。
急に話しかけられると、「きゃっ」てびっくりしてしまう。
ひとごみ苦手。
おしゃべりに付き合うのも苦手。
感覚過敏だから、騒音苦手。まぶしいのも苦手。紫外線苦手。外食苦手。

カーテン閉めた暗い部屋で、ひとり静かに過ごせるなんて天国。
ぐちゃぐちゃにとっ散らかった自分を、本来の自分に立て直す。
大きな柔らかい繭の中に籠り、落ち着いた時間を過ごす。
心地よさを思う存分味わう。
やっと、自分に戻ることができたと思ったら、もうお迎えの日。

えいやっと体を起こして、雨の中、お迎えに向かいます。
前日までは真夏のような晴天だったのに、豪雨です。

元気に帰ってきた長女。
私は、「長女の母親」にスイッチします。

やっぱりうるさい。耳が痛い。
大きな声。
大雨だと、折り畳み傘は使わないこだわりの長女。
大きな傘を
「かうーかうー」と叫びながら駅へ向かう。
コンビニでビニール傘を買ってやっと安心する長女。
折り畳み傘持たせたのにな。

電車の中で
「ぱっとさいでりあで、たらこスパゲティたべました。」
と嬉しそうに話す。
毎回、サイゼリアではたらこスパゲティしか食べないよね。
パッとサイデリアは、昔のテレビの外壁のCMです。

京王線の調布駅で特急から各駅に乗り換えるときは、大きな声で
「ありがとうってつたえたくてえ」と歌いだします。
「ありがとうってつたえたくてええといったらでんしゃがきます。」
とホームで皆さんにお知らせするかの如く、何回も歌ってくれます。
同じ電車を待つ警察大学校の学生さんたちが、長女を見守っています。

調布駅の電車接近メロディーは、いきものがかりの「ありがとう」です。
水木しげる先生が暮らした調布にちなんで、NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」のテーマソングが流れるのです。
長女の頭の中では水木先生は向井理さんです。

やっと、私も長女のペースに慣れてきました。

たぶんだけど、もし私が長女という存在に出会わなかったら、静かな暮らしを満喫していたかもしれません。

でも、長女と暮らすことで、私の静かな生活はぶっとんで、まんまと長女のペースに引き込まれ、現実世界に直面し、アップアップして生きることになってしまいました。

長女は、ある意味で、私を広い世界に連れ出してくれた恩人です。
長女のおかげで、180度しか見えていなかった世界が、360度のパノラマ世界になり、私一人では、知り合うこともできなかったであろう、素晴らしい人々に出会うことができました。
たくさんの人たちと出会うことで、他人と話すときの話し方や、距離の取り方を覚えてきました。

今はばりばり、障害者の母です。





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